業界にビッグウェーブを引き起こすか
仮想デスクトップのグラフィックス性能を向上させるNVIDIAの仮想GPU
NVIDIA VGXは、仮想デスクトップのグラフィックスパフォーマンス問題を解決する技術だ。ユーザーはPC並みの環境を得ることができ、IT部門はCPU負荷やVDIの初期費用を軽減できるメリットがある。
企業のIT部門の多くが社内のデスクトップのごく一部しか仮想化していないのは、エンドユーザーがPCから得られるのと同等のグラフィックスパフォーマンスを仮想デスクトップインフラ(VDI)が提供できないことが理由だ。
業界関係者によると、「NVIDIA VGX」プラットフォームは仮想デスクトップ業界にとって大きな前進となるものだという。これまで仮想化の対象外とされていたデスクトップとアプリケーションを仮想化することにより、低コストのシンクライアントデバイスやゼロクライアントデバイスを実現できるからだ。
米Gartnerで仮想デスクトップとアプリケーションを担当するアナリスト、ガナー・バーガー氏は「これはVDIを新たな水準に引き上げるものだ」と話す。
「デスクトップ仮想化業界にとって最大の障害の1つは、グラフィックス主体型のアプリケーションを仮想化できなかったことだ」と指摘するのは、ITコンサルティング会社の米New Age Technologiesで仮想化アドバイザーを務めるシャノン・スノーデン氏だ。
「社内の全てのデスクトップをリプレースするのではなく、一部のデスクトップだけを全く異なる方法で管理し配備するというのは、企業にとって受け入れ難いものだ」とスノーデン氏は語る。
VDIのグラフィックスパフォーマンス問題を解決
米NVIDIAのジェネラルマネジャー、ジェフ・ブラウン氏は「VDIの場合、グラフィックスは通常、サーバのCPUでレンダリングされた上でエンドユーザーに配信される。しかしグラフィックスのレンダリングは、CPUが扱える逐次型コンピューティング問題ではなく並列型問題なので、グラフィックスパフォーマンスは標準以下にとどまっていた」と話す。
「仮想化されたGPUをサーバに追加することによって、グラフィックスデータはCPUを迂回して仮想GPUに直接送られ、エンドユーザーに出力される」とブラウン氏は説明する。つまり、CADなどのグラフィックス主体型アプリケーションは、VDIを利用してリモートワーカーに配信することで高いパフォーマンスを確保できるということだ。
これによりVDI導入企業は、リソースを大量に消費するアプリケーションが動作するエンジニアリングデスクトップなど、これまで仮想化に適さなかったようなデスクトップでも仮想化できるようになる。
「NVIDIAなどの企業は、仮想化できるアプリケーションの割合を高めようとしているのだ」とスノーデン氏は話す。「そのうち、仮想デスクトップ元年が訪れるかもしれない」
バーガー氏によると、より多くのタイプのデスクトップを仮想化できるということは、VDIのコストが下がることを意味するという。
「これまで私が設計を手掛けたVDI環境では、いつも初期コストの問題は無視され、運用コストだけが注目されていた。だがエンジニアリンデスクトップを仮想化できれば、初期コストも削減できる可能性がある」と同氏は語る。
仮想化されたGPUは多数のエンドユーザーで共有できるため、サーバのコストをさらに下げることもできる。
GPUの共有はこれまでも可能だったが、拡張性という面で制約があった。例えば、米Citrix Systemsの「XenApp HDX 3D」の場合、ハイエンドのグラフィックスカード1枚でサポートできるのは12ユーザーまでとなっている。
NVIDIAのパートナーであるCitrix Systemsは「NVIDIA VGXでは、マルチGPUグラフィックスカードを最大100人の仮想デスクトップユーザーが共有できるため、1台のサーバ当たりのユーザー密度を改善できる」とブログで述べている。
さらに、CPUへの負荷が軽減されるため、IT部門は1コア当たりのエンドユーザーを増やすことができる。
「つまり、ユーザーはPC並みの環境を得ることができる一方で、IT部門の視点から見た場合、CPUサイクルを取り戻すことができる」とNVIDIAのブラウン氏は語る。
Gartnerのバーガー氏は「業界にビッグウェーブを引き起こす」もう1つの可能性として、標準のリモートデスクトッププロトコルとは異なるチャネルであるH.264を利用したVGXストリームビデオを挙げる。
「この新しいVDXカードにより、VDIでもCADが利用できるようになるだけでなく、プロトコルの移行が起きるかもしれない。これはクロスプラットフォームなので、プロトコルのリプレースも将来の可能性として考えられる」とバーガー氏は話す。
仮想デスクトップインフラ(VDI)技術に関する記事
NVIDIAの仮想GPUの詳細
NVIDIA VGXは3つの技術がベースとなっている。
VGXボード
VGXハイパーバイザーと仮想GPUで構成され、多数のユーザーをサポートできる。最初のNVIDA VGXボードは4個のGPUと16Gバイトのメモリという構成で、サーバ内の業界標準PCI Expressインタフェースに装着する。
NVIDIA VGX GPU Hypervisor
Citrix XenServerなどのハイパーバイザーと連係するソフトウェアレイヤー。
NVIDIA User Selectable Machines
エンドユーザーのニーズに基づいて、ネットワーク内の個別ユーザーにグラフィックス機能を配信するように設定できる管理機能。標準のネイティブPCエクスペリエンスに加え、NVIDIA QuadroあるいはNVIDIA NVS GPUによる強力なプロフェッショナル3Dデザイン/エンジニアリング用グラフィックス機能を提供できる。
NVIDIAの仮想GPUにはメモリ管理ユニットが搭載されており、Virtual Machine Managerはこれを仮想デバイスとして扱う。メモリ管理ユニットにより、仮想マシンごとに専用のチャネルにVGXを分割することが可能となる。
異種混在ハイパーバイザー環境でVGXプラットフォームを使用することも可能だ。ブラウン氏によると、VGXプラットフォームはハイパーバイザーの初期ビルドの一部として含まれ、新機能や修正すべきバグがあれば、ハイパーバイザーパッチという形で提供されるという。
現時点で、VGXを正式にサポートしているのはXenServerだけだ(関連記事:ここまで分かった! XenServer 6.0の新機能)。VGXをサポートするCitrix XenDesktop HDX 3D Proは、「XenDesktop 5.6 Feature Pack 1」の一部として2012年6月にリリースした。
XenDesktop 5.6に関するコンテンツ
NVIDIAではVGXのOEM先企業を増やすために認定プログラムを策定中だ。年末までにVGXプラットフォームをベースとした製品が登場すると同社は予想する。
NVIDIAはVGXの価格はその価値に比べて安くなるとしているが、具体的な価格やライセンス条件は明らかにされていない。
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