デスクトップ仮想化製品紹介【第3回】
柔軟な操作性を備えたCitrix XenDesktop、仕組みとライセンス
Citrix XenDesktopは、マルチメディア系の処理を可能にした通信プロトコルやプリンタドライバ機能などを搭載し、最新のテクノロジーを駆使した仮想デスクトップの利用が可能である。
連載「デスクトップ仮想化製品紹介」の第3回をお送りする。第2回「シンプルなインタフェースと優れた表示品質を提供するVMware View」では、ヴイエムウェアが提供する「VMware View」を紹介した。第3回となる今回は、シトリックス・システムズ・ジャパン(以下、シトリックス)が提供する、「Citrix XenDesktop」(以下、XenDesktop)を紹介する。
シトリックスの「使える」仮想デスクトップとは?
シトリックスは従来、「Citrix XenApp(旧称:Citrix MetaFrame)」(以下、XenApp)を展開しており、アプリケーションをサーバに集約する「アプリケーション仮想化」市場において、非常に大きいシェアを持っている。そして、その実績と経験を生かし、デスクトップをサーバに集約する「デスクトップ仮想化」の展開を進めている。では、どのように生かしているのか見てみよう。下の表は、シトリックスのアプリケーション仮想化とデスクトップ仮想化のソリューションを比較したものだ。
| デスクトップ仮想化 | アプリケーション仮想化 | |
|---|---|---|
| 対応製品 | XenDesktop | XenApp |
| ユーザーの利用対象 | デスクトップ | 主にアプリケーション |
| ユーザーの自由なアプリ導入 | ○ | × |
| ユーザーのマシン占有 | ○ | × |
| 高速なリモートコントロール | ○ | ○ |
| 通常使用するプリンタからの印刷 | ○ | ○ |
| データ、ファイルの持ち出し | × | × |
| OS標準の管理コンソールでの管理 | ○ | ○ |
| 社外からのSSL VPN接続 | ○ | ○ |
| サーバ基盤 | XenServer、VMware、Hyper-V | Windowsサーバ |
このように、ユーザーの自由なアプリケーション導入や、リモートコントロール先のマシン占有といった、デスクトップ仮想化のメリットを最大限に享受しつつ、これまで培った柔軟な操作性、簡便な運用、セキュリティ対応を維持している。ユーザーの利用感に関係する機能が多いのは、これまでユーザーによる利用を第一に考えてきたシトリックスならではのアプローチといえるだろう。
構成が簡単
仮想デスクトップの具体的な構成を組むのは難しいイメージがあるかもしれない。そこで、XenDesktopにおける最小構成を下図の通りまとめてみた。これは、3台のデスクトップを仮想化した例だ。「PC」「仮想化サーバ」が物理マシン、「Desktop Delivery Controller」「仮想PC」が仮想マシンである。Desktop Delivery Controllerはブローカーであり、ユーザーの接続を仮想デスクトップに導く役割を担う。
仮想デスクトップは意外に簡素な構成で実現可能であることがお分かりいただけただろう。
デリバリーサービスコンソールによる管理
管理は独自のプログラムではなく、Windows標準のMMC(Microsoft Management Console)スナップインで稼働する「デリバリーサービスコンソール」にて行う。もちろん、完全に日本語化されている。
XenDesktopだからできること
HDXプロトコル
デスクトップ仮想化を考えるとき、まず気になるのは「リモートコントロールでも、PCと同じ操作性を得られるか?」だろう。これについては、非常に現実的な解がある。シトリックスが提唱する、専用の通信プロトコル「HDX」の存在である。従来シトリックスでは、「ICA」という通信プロトコルを提供しており、XenAppと共に、10年以上のバージョンアップを重ねてきた。これに加え、さらにグラフィックス、マルチメディア系の処理をブラッシュアップした通信プロトコルがHDXだ。これまでのオフィス、メールといったアプリケーションの利用に加え、Flash、動画はもちろん、「HDX 3D」を利用すれば、3Dグラフィックスを多用するアプリケーションまで、スムーズな利用が可能となっている。
ユニバーサルプリンティング
仮想化されたとはいえ、デスクトップから印刷を行いたいという要望は必ずあるだろう。しかし、デスクトップごとにプリンタを管理することは、管理者への負担が大きく、できる限り避けたいはずだ。そこでXenDesktopでは、仮想デスクトップに高性能な汎用プリンタドライバ「Citrixユニバーサルプリンタドライバ(UPD)」を標準で搭載し、接続元のデバイスで利用できるプリンタが仮想デスクトップ内でも利用できるようになっている。これにより、ユーザーや管理者は、デスクトップ仮想化時にプリンタの管理を意識する必要がなくなる。もちろん、ユーザー、グループ、コンピュータごとに、印刷を禁止することも可能だ。
プロビジョニングサービス
仮想化されたデスクトップを別々に管理するのは非常に面倒という意見もあるかもしれない。その場合は、内蔵されている「Citrix Provisioning Services」(以下、Provisioning Services)が有効だ。これは、Windowsデスクトップの仮想化イメージを、最低限の数(例えば1つ)だけ管理すれば、ほかの仮想デスクトップはそれを基に展開、運用できる機能だ。もちろん、Windowsのコンピュータ名や内部IDであるSIDは、Provisioning Servicesにより重複しないよう自動制御される。その上で、ユーザーごとのデスクトップ設定や作成したデータをファイルサーバに保存すれば、デスクトップ管理を共通化しつつユーザーごとに異なるデスクトップが利用可能となる。仮想デスクトップを管理するという管理負担を大幅に軽減できるだろう。
XenApp
Citrix XenDesktop Enterprise Edition以上であれば、以前から提供されているXenAppの機能も利用できる。例えば、ユーザーごとに異なる仮想デスクトップを持っていたとしても、共通で利用するアプリケーションはあるはずだ。それらは各仮想デスクトップに置くこともできるが、XenAppサーバに置いておけば、アプリケーションを集約し管理を一元化することもできる。プロビジョニングサービスとはまた異なる方法にて、管理負担を軽減できる。
Citrix EdgeSight for Virtual Desktop
Citrix XenDesktop Platinum Edition以上であれば、仮想デスクトップのパフォーマンス監視、しきい値設定による警告といった、運用で役に立つツール「Citrix EdgeSight for Virtual Desktop」が付属している。デスクトップ仮想化システムにおいて、構築、利用の容易さに加え、運用までをカバーできる。
幅広いデバイス対応
仮想デスクトップへの接続元となるデバイスには、Windows XP/Vista/7、Linuxを搭載したPCはもちろん、MacintoshやiPad、そしてiPhone、各種Android端末、BlackBerryといったスマートフォンまで利用できる(バージョンによる制約はある)。ユーザーの環境や都合に合わせ、柔軟な仮想デスクトップ利用が可能である。
Citrix XenClient
仮想デスクトップの利用は、ネットワーク接続されたデバイスからリモートコントロールするという操作が基本である。しかし、もしデバイスがネットワークに接続できないオフライン環境に置かれていたらどうするだろうか。シトリックスによる解は、「Citrix XenClient」(以下、XenClient)である。XenClientを利用すれば、期限付きで仮想デスクトップの内容をPCにダウンロードし、オフラインで仮想デスクトップが利用可能となる。現在、リリース間近であり、非常に期待できる製品といえる。
また、すべてのエディションに、仮想デスクトップなど仮想マシンを搭載する仮想化サーバとして、「Citrix XenServer」(以下、XenServer)が付属している。XenServerでは、高速なハイパーバイザーのほか、仮想マシンのクイックマイグレーション(XenMotion)、High Availabilityという、基本的な耐障害対応機能も内蔵している。さらに、最新のXenServer 5.6では、仮想マシンの負荷に応じ、稼働する仮想化サーバを自動的に移動する動的負荷分散機能も搭載され、基本機能、拡張機能共に、十分な性能を提供している。
なお、XenDesktopでは、仮想化サーバにXenServerが付属しているものの、実はVMware、Hyper-Vも利用可能である。これにより、XenDesktopの機能や運用のしやすさを、さまざまなインフラを持つ幅広い企業にて活用できるといえるだろう。
XenDesktopのエディション
現在、XenDesktopはバージョン4.0であり、次のエディションが提供されている。
| エディション | 詳細 |
|---|---|
| Express Edition | 無償。仮想デスクトップを10台まで利用できる |
| VDI Edition | Express Editionに加え、XenServer、Provisioning Servicesが利用できる |
| Enterprise Edition | VDI Editionに加え、XenAppが利用できる |
| Platinum Edition | Enterprise Editionに加え、仮想デスクトップのパフォーマンス監視ツール「Citrix EdgeSight」が利用できる |
まとめ
XenDesktopでは、シトリックスがこれまで培ってきた、ユーザー操作から管理面までの幅広い対応を生かしつつ、最新のテクノロジーを駆使した仮想デスクトップの利用が可能である。事例も大変多く、基幹システム、基幹ネットワークに続き、社内にて戦略的にデスクトップ利用を考える際の現実的な解となっているのではないだろうか。
前田和彦(まえだ かずひこ)
日商エレクトロニクスのシトリックス製品担当SE
各社へのデスクトップ仮想化、アプリケーション仮想化において、シトリックス製品の提案、構築支援を行い、多くの実績と経験を持つ。加えて、2010年は自社内数百台のデスクトップ仮想化において、検討段階から中心的に関与し導入成功の一翼を担った。
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