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【事例】LIXILグループが子会社105社の会計システムを統合、決断の決め手は統合マスター機能を活用

トステム、INAXなどが統合して生まれたLIXILグループは子会社の会計システムを統合することで経営スピードの向上を図った。大プロジェクト決断の背景を探る。

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 トステムやINAXなどが統合して生まれたLIXILグループが2012年7月に子会社105社の会計システムを統合した。従業員4万8000人、売上高1兆2900億円の巨大グループが構築した統合会計システムの姿をお伝えする。

 持ち株会社LIXILグループは傘下に123社の連結子会社を持つ。扱う製品ブランドは衛生陶器などのINAXや、サッシなどのTOSTEM、システムキッチンのサンウェーブなど多数。もともとは2001年に旧トステムと旧INAXが合併。その後に「M&Aを繰り返し、企業が統合してきた」(LIXILの経理財務部 システムグループ グループリーダー 西原寛人氏)。

LIXILの経理財務部 システムグループ グループリーダー 西原寛人氏。2012年10月31日に日本オラクルのイベントで講演した
LIXILの経理財務部 システムグループ グループリーダー 西原寛人氏。2012年10月31日に日本オラクルのイベントで講演した

 今回の統合会計システム構築の狙いは合併によるシナジー効果の最大化だ。2001年にトステムとINAXが統合した当時はそれぞれの企業文化や経営手法を尊重した緩やかな統合だった。しかし、その後もM&Aを行うことで子会社数は増加。国内工場の海外移転やアジア市場開拓の必要性などから、企業グループが一体となったシナジー効果のさらなる発揮が求められた。「統合によって各社の歴史や文化、言葉、システムなどを1つに合わせていく」(西原氏)ことが目的だ。

 西原氏はM&A効果を早期に得ることに加えて、グループ経営とグローバル展開のスピードアップも統合会計システム構築の目的だったと説明した。「シェアードサービスとグローバル展開を視野に入れたシンプル化、見える化を実現するグループ統一会計システムを構築する」(西原氏)

基幹システム切り離しで統合を容易に

 統合会計システム構築プロジェクトは2010年上期に構想策定、企画策定から始まった。システム構成上のポイントは、105社の子会社が持つ販売や生産、購買、人事などの各基幹システムと、それぞれの会計システムを分離し、会計システムだけを統合したことだ。基幹システムは各社の競争力の源泉となっていて違いも大きい。統合するメリットはなかなか見いだせない。対して会計システムは各社とも共通の項目や作業が多く、統合が比較的容易。基幹システムは各社でバラバラのまま残し、その会計上の違いを統合会計システムで吸収するコンセプトを策定した。これによって経理業務プロセスが標準化され、シェアードサービスが可能になる。また全社的な経営判断を行うための共通データの生成にも役立つ。

 統合会計システムの基盤には日本オラクルのERPパッケージOracle E-Business Suite R12」(Oracle EBS)を選んだ(参考記事:E-Business Suiteを使ったIFRS対応の実際とは)。選定理由の1つは各子会社のデータを収集し、共通フォーマットに変換するOracle EBSの統合マスター機能「Oracle Financials Accounting Hub」(FAH)が使えることだった。

 FAHでは、子会社の基幹システムから収集した売り上げや仕入れ、在庫、給与などの実データを共通フォーマットに変換し、入金管理や支払い管理などのOracle EBSの機能に引き継ぐ。Oracle EBSではその後、仕訳を生成し、単体決算、連結決算と処理を進める。今後、新たなM&Aを行って子会社が増えても、統合マスター変換の設定を行えば、すぐに統合会計システムにつなぐことができる。これによって買収から事業統合までの時間を短縮できる。

 ただ、統合マスター機能の実装は簡単ではなかった。「統合マスターの意味内容とその設定によってシステムがどのように制御されるのかを各社の共通認識とするのに時間がかかった。2011年暮れから2012年春まで何回もチェックしてフィードバックした」(西原氏)

統合会計システムの構成
統合会計システムの構成(クリックで拡大)

 Oracle EBSを採用した理由では、日本オラクルが今回の統合会計システム構築プロジェクトの構想段階から参画し、LIXILグループの業務に精通していたことも挙げられる。西原氏は「信頼関係を構築できていた」と振り返った。

人材のローテーションが可能に

 統合会計システムは2012年度上期に経費精算と財務/支払い管理機能が稼働。下期には管理家計と連結会計の機能がカットオーバーした。西原氏は「最初はトラブルもあったが、7−9月期の決算処理を行ってスムーズになってきた。今後は統合会計システムの有効活用が課題。日本オラクルにはアドバイスや支援をお願いしたい」と話した。

 統合会計システム構築の効果は、上記のように各子会社の基幹システムの状況に関係なく、会計システムを統合できるようになったことだ。加えてこれまでは各子会社の会計システムや経理処理がバラバラで、その業務を行う経理部門の人材は子会社の業務しかできなかった。だが、統合会計システムを構築したことで経理処理が子会社間で共通になった。そのため経理部員の人材ローテーションなどが可能になったという。また従来、各子会社が独自に作成していた経営に関するリポートも統合会計システムを使うことでそのフォーマットが共通になり、情報も豊富になった。西原氏は「データベースミドルウェア、アプリケーションの全領域におけるトータルでのサポートを期待している」と日本オラクルへの期待を述べた。

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