SSDだけではない、“第2のデータセンター”を実現する技術とは:2014年「データストレージ技術」番付(後編)
企業規模を問わず、クラウド技術・サービスを利用したストレージ環境に注目が集まっている。その背景にはファイルストレージよりも進むバックアップデータの急増への対応がある。
前編「次世代SSDがついに登場、標準規格と3Dフラッシュで進化」に続き、米TechTargetが予測した、2014年に多くの企業のIT環境にインパクトを与えるデータストレージ技術を紹介する。前編では「次世代SSD」「プライマリストレージのデータ重複排除」「ハイパーコンバージドストレージ」を紹介したが、今回はバックアップやアーカイブなどデータ保護分野でも活用可能な技術に注目する。
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4. バックアップアプライアンス
オールインワンのバックアップアプライアンスへの関心が近年高まっている。この製品カテゴリーは、データ保護市場の重要な部分を占める見込みだ。
バックアップアプライアンスは、ハードウェアやソフトウェア、メディアサーバに加え、バックアップ対象に簡単に導入できるシステムで構成されている。2つの重要なメリットを提供する。1つは、独立したバックアップアプリを使う必要がある製品と比べて、初期導入がはるかに簡単なこと。もう1つは、バックアップソフトウェアとハードウェアの両方について、1社のベンダーから継続的にサポートを受けられることだ。
米Symantecは、同社の「Backup Exec」や「NetBackup」をベースにしたアプライアンスで顕著な成功を収めている。カナダのAsigra、米StorServer、米Unitrendsなどのベンダーも、あらかじめ統合されたターンキーバックアップソリューションを提供している。
「規模が拡大し、必要なバックアップ能力やデータ保護能力が増大している組織にとって、アプライアンスを使うことは理にかなっている」と、調査会社の米StorageIOの創業者であるグレッグ・シュルツ氏は語る。そうでない組織にとっても、基本的にハードウェア、ソフトウェア、ネットワーキングの要素を組み立てて独自のバックアップサーバやアプライアンスを構築する作業を行う代わりに、アプライアンスを利用すれば、「同じリソース(人、時間、予算)でより多くのことを行う機会が得られる」(同氏)
米Forrester Researchのシニアアナリスト、レイチェル・ダインズ氏は、バックアップアプライアンスが、とどまるところを知らないキャパシティーの拡大に対処するために不可欠な役割を果たしていると見ている。「われわれの調査データによれば、現在、バックアップ、2次、3次ストレージはストレージ全体の中で、データ量の増加ペースが最も速い部類に入る。ファイルストレージよりもさらに速い」とダインズ氏。「バックアップとアーカイブのストレージは、ファイルストレージよりも速いペースでデータ量が増えている。データの爆発的な増加と、極めて迅速なリカバリの必要性を背景に、企業は、迅速かつ簡単に展開でき、シンプルに管理できるストレージソリューションを求めている」
バックアップアプライアンスは2014年も市場の成長が続き、仮想化への対応も進む見通しだ。その大きな理由は3つある。
リモートオフィス/ブランチオフィスが急成長市場
「規模の大小を問わず、政府機関から金融サービス、製造、小売りまで、多様な業種の企業や組織」がバックアップアプライアンスを使っていると、ダインズ氏は語る。しかし、成長市場はリモートオフィス/ブランチオフィスというのが同氏の見方だ。
Software-Defined Data Center(SDDC)がバックアップアプライアンスにインパクトを与える
2014年におけるバックアップアプライアンスの成長トレンドの継続を妨げる可能性のある1つの要因は、「ソフトウェアオンリーのソリューションの規模と信頼性の向上だ」とダインズ氏は指摘する。「近いうちに市場に登場する大型製品は、“Software-Defined Data Center”のコンセプトに沿ったものだろう。2013年には、仮想アプライアンスとして提供されるディスクライブラリが発表された。米Hewlett-Packard(HP)のStoreOnce製品や米Quantumの製品だ。2014年にはハードウェアベンダーから、より多くの仮想アプライアンスが投入される可能性がある」
VMの統合にも対応
StorageIOのシュルツ氏も同じ見方を示し、こう語る。「仮想マシンの統合やアプリケーションサポートの拡充が、ロードマップに盛り込まれるだろう。この拡充は、サポートするアプリケーションを新しく増やしたり、現行の機能を拡張することで実現される。例えば機能拡張には仮想マシンをバックアップやスナップショット、保護されている場所から高速にリストアできるようにすることなどが含まれる」
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5. OpenStackストレージ
オープンソースのOpenStackストレージは注目を集め続け、採用が進んでいる。多くの商用ベンダーが後押しし、多くの対応ディストリビューションが提供されるようになっており、実力を調べる参考になるケーススタディも数多く登場しているからだ。
OpenStackは、コンピュートリソースとネットワーキングリソースのプールの管理を目的としたオープンソースのクラウドOSであり、その一部としてオブジェクトストレージとブロックストレージをサポートしている。米Rackspace Hostingは最初にOpenStack技術を開発し、米NASA(航空宇宙局)と共同で、このオープンソースソフトウェアのメンテナンスを行うコミュニティーを創設した。
「OpenStack Object Storage」プロジェクト(コードネーム「Swift」)に貢献しているベンダーは、HP、米IBM、Rackspace、米Red Hat、米SwiftStackなど。HPやIBM、Red Hatは、米Intel、米Mirantis、米SolidFire、米SUSEといったベンダーとともに「OpenStack Block Storage」プロジェクト(コードネーム「Cinder」)にも取り組んでいる。
OpenStack Block Storageは、永続的なブロックストレージをプロビジョニングおよび管理し、オンデマンドサービスとして供給するためのソフトウェアを提供する。OpenStack Object Storageは、P(ペタ)バイトクラスの静的データをコモディティサーバに容易に保存できるようにし、サーバクラスタ全体にわたってデータレプリケーションが確実に行われるようにする。バックアップやアーカイブ、コンテンツのリポジトリにうってつけだ。
サポートが提供されないオープンソースソフトウェアの利用をためらうIT部門は、商用製品を選べばよい。商用製品は英Canonical、米Cloudscaling、HP、米Piston Cloud Computing、Rackspace、Red Hat、スペインのStackOps、SUSE、SwiftStackから提供されている。
「OpenStack Swiftは、すぐに展開できるシステムではない。ダウンロードしてインストールすれば動き出す、というわけにはいかない」と、米IDCのストレージシステム担当リサーチディレクター、アシッシ・ナドカーニ氏は説明する。「このシステムはまだ非常に新しく、かなりのカスタマイズやプログラミング、微調整が必要だ。これらを自前で行うためのリソースを持っている組織もあるが、それ以外の組織は、商用製品を採用することになる」
OpenStack Block Storageでは、物理HDDやSSDはCinderサーバノード内に配置したり、これらのノードに直接接続したりできる他、サードパーティーベンダーが統合した外部ストレージシステムに含まれる物理HDDやSSDを使うこともできる。オープンソースの「Ceph RBD」やRed Hatの「GlusterFS」の他、さまざまなベンダーの一部のシステムに対応したプラグインが提供されている。これらのベンダーの内訳は、Coraid、EMC、HP、中国Huawei、IBM、米Mellanox、米Microsoft(Windows Server 2012)、米NetApp、米Nexenta、米Scality、SolidFire、米Zadara。
ナドカーニ氏は「OpenStack Block Storageは、特定のハードウェアに依存しない次世代のストレージ仮想化ソリューションと考えられる」と語る。その機能は、ストレージリソースをプールし、サードパーティーアレイの統合を可能にする抽象化レイヤーを提供することだと、同氏は説明する。
「OpenStackの根本原則は、コモディティベースのストレージを使って、フルサービスプラットフォームを構築することだ」とナドカーニ氏。「OpenStackを導入して商用プラットフォームとともに使い始めた場合、何が得られるかと言えば、あまり多くは望めないだろう」
米カリフォルニア大学のサンディエゴスーパーコンピュータセンター(SDSC)では、同センターのOpenStackコンピュートリソースのために永続的なブロックストレージを提供する技術という観点から、CinderとCephの調査を行っている。SDSCの技術プロジェクトおよびサービス担当マネジャーを務めるマシュー・カルバーグ氏は、オープンソースの選択肢は、データベースなどのアプリケーションの支援において、SDSCの現在のブロックストレージよりも高い柔軟性と拡張性をもたらす可能性があると語る。
SDSCは2011年から、テープによるデータアーカイブに代えて導入したプライベートクラウドストレージサービスのためにOpenStack Swiftを利用している。当時、オブジェクトストレージの選択肢は乏しかった。SDSCがOpenStackを選んだのは、コストを抑制し、ベンダーロックインを回避し、ハードルの低い大きな開発コミュニティーを活用するためだった。カルバーグ氏は、われわれのチームは今回も同じ決定を下すことになるだろうと語る。
「OpenStackは、SDSCの研究者と大学コミュニティーにとって素晴らしいリソースであることが明らかになっている」(カルバーグ氏)
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6. クラウド統合型ストレージ
クラウド統合型ストレージ(CIS:Cloud-Integrated Storage)については、ただのマーケティング用語と思われるかもしれない。しかし、そのように考えると、エンタープライズ環境におけるクラウドストレージを表す言葉を見過ごしてしまうことになる。実際には、「クラウド統合型ストレージ(CIS)」はクラウド用語の1つになっており、クラウドストレージを説明するのに使われる。ハイブリッドモードで、あるいはティアリングを利用して、もしくはオンプレミスキャパシティーをできるだけシームレスに拡張するための他の方法で使われるクラウドストレージだ。
CISを支える主要技術は普及が進んでいる。ゲートウェイはクラウドコントローラーに進化し、データセンターを超えてストレージのキャパシティーを拡張する上で要の役割を果たしている。ハイブリッドアプライアンスは、多くのデータセンターで標準ツールとして定着している。Software-Defined Storage(SDS)アプライアンスとオブジェクトストレージへの関心も高まっている。
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「ハイブリッドストレージは利用が拡大している」と、米Storage Strategies Nowのシニアアナリスト、ジェームズ・バグリー氏は語る。「例えば、企業が自前のインフラを持っていて、アーカイビングやディザスタリカバリ(DR)のためにポリシーを用いてクラウドを使っている場合、ハイブリッドストレージを利用していることになる。ITを全面的にクラウドに依存している企業でなければ、クラウドティアをフロントラインストレージとして使っている企業は多くない。全面的にクラウドに依存している企業の場合、全てのアプリケーションがクラウドで稼働している」
米TwinStrataのニコス・ベキアリデスCEOは、CISはハイブリッドストレージと同義であり、これらのストレージではクラウドストレージとローカルストレージが、ローカルキャッシュを用いることで組み合わせて利用されると説明する。CISは、一部がローカル、一部がクラウドにあるストレージティアの組み合わせも指すという。
「クラウドは、資本コストが全く掛からない第2のデータセンターだ」とベキアリデス氏。「オフサイトでデータ保護とデータリカバリを実現するための経済的な方法になる」
最も一般的なユースケースは、キャパシティーの拡張か、クラウドベースのディザスタリカバリだと、ベキアリデス氏は語る。
「われわれの取引先の企業では、作成されるデータが毎年40〜50%ずつ増えている」と同氏は付け加える。「それだけのデータを全てローカルストレージに置くのは難しい。コントローラーに保存すれば、ローカルコピーを入手でき、そのデータはクラウド内のスナップショットで保護される」
Storage Strategies Nowのバグリー氏は、CISのパフォーマンス向上のためのアプライアンスは必ずしも必要ないが、Amazon S3やWindows Azureのようなクラウドに対応するアプリケーションはたくさん必要だと指摘する。また、顧客のデータを自社のクラウドにバックアップする「ShadowProtect Cloud Services」を小規模企業向けに提供する米StorageCraftのようなベンダーもある。
「バックアップやアーカイビング用のアプリケーションを持っていなければ、アプライアンスが便利だ」(バグリー氏)
※:本記事の執筆者は以下の通り。
Rich Castagna, Todd Erickson, Ed Hannan, Sonia Lelii, Dave Raffo, Carol Sliwa and Sarah Wilson
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