中小企業が知っておきたい運用管理/資産管理ツールの選定ポイント【第4回】
サーバ仮想化の活用から次の一歩を踏み出す統合運用管理への道
本連載は、中小企業における運用管理/資産管理ツールの選定ポイントを解説。第1回はその全体像、第2回はサーバ、第3回は動向について述べた。最終回の第4回は、「統合運用管理/資産管理ツール」を取り上げる。
統合運用管理/資産管理ツールが持つ2つの意味合い
本連載では、運用管理/資産管理ツールを「役割」と「対象」という2つの軸を用いて以下のように整理している。
統合運用管理/資産管理ツールが担う「役割」はその名の通り「統合する」ことだ。
例えば、「業務システムにアクセスしても反応がない」という障害に直面した際、サーバ監視ツールやネットワーク監視ツールから情報を収集し、原因がサーバ側とネットワーク側のどちらにあるかを判断するはずだ。こうした作業は統合運用管理/資産管理ツールの管理画面から行うことが多い。次に同様の障害が発生したときの通知方法を設定することもできるだろう。PC/サーバ/ネットワークなど複数の「対象」にまたがる監視や設定作業をスムーズに連係させるための機能を提供しているのだ。これが「統合する」という「役割」の中身である。このことを踏まえて、統合運用管理/資産管理ツールの守備範囲を図示すると上図の[3]に位置付けられる。
しかし、一般的に統合運用管理/資産管理ツールといった際には、もう1つの意味合いがある。それは上図に示した全ての守備範囲を網羅した「スイート製品」を指す場合だ。PC管理、サーバ管理、ネットワーク管理など多種多様な構成要素(モジュール)を備え、それらを一括して管理する仕組みを備えている。複数の製品から構成されていることも多く、個別の機能だけを導入することも可能だ。
このように統合運用管理/資産管理ツールには、[3]に特化したものと、全ての「対象」「役割」を網羅した「スイート製品」の2つがあることを押えておこう。以降では後者を「統合運用管理/資産管理スイート」と呼んで区別する。
仮想化されたサーバ環境の管理を担う統合運用管理/資産管理スイート
年商50億円未満の中小企業にとって、「サーバやネットワークなどを横断的に監視して障害発生に備える」ことが必要となるケースは、それほど多くないかもしれない。ここで、年商50億円未満の中小企業における運用管理/資産管理ツールの導入シェアをもう一度見てみよう。
高いシェアを示している富士通の「Systemwalker」や日本マイクロソフトの「Microsoft System Center」(以下、System Center)は、いずれも統合運用管理/資産管理スイートに該当する製品だ。それほど複雑なITインフラを持たないはずの中小企業において、統合運用管理/資産管理スイートが導入される理由とは何だろうか?
その1つの回答を示すものが以下のグラフである。年商50億円未満の中小企業に対して、サーバ仮想化技術の活用状況を尋ねた結果だ。
この設問は複数選択が可能となっており、「テスト環境では既にサーバ仮想化技術を活用中だが、本番環境では検討中である」という場合は「活用中」と「検討中」の両方に該当する。「仮想化技術を活用する予定はない」と回答した企業が4割弱であることを踏まえると、逆に何らかの形でサーバ仮想化技術を活用中/検討中である企業が約半数に上ることが分かる。テスト環境にとどまるケースから基幹系システムを仮想化するケースまで、活用の度合いはさまざまだが、中小企業においてもサーバ仮想化技術の活用が普及しつつある状況が確認できる。
さらに以下のグラフは年商50億円未満の中小企業に対し、「サーバ仮想化環境を管理する方法」をサーバ単位で尋ねたものである(重要度が高いサーバ用途を最大3つまで尋ね、さらにそれらがサーバ仮想化技術を適用している場合の管理方法を回答してもらい、それをサーバ単位で集計したもの)。
「サーバに同梱されている無償の管理ツールを利用している」との回答が半数近くを占めている。これは第2回(関連記事:ジョブ管理ツールとハードウェア同梱ツールでできる賢いサーバ管理術)で取り上げたテーマとも深く関係する結果だ。第2回で述べた「サーバハードウェア同梱ツールをうまく活用する」というアプローチがサーバ仮想化においても有効であることが確認できる。だが、「ハイパーバイザーと同じベンダーの管理ツールを購入して導入している」や「サーバと同じベンダーの管理ツールを購入して導入している」といった回答も少なからず挙げられており、両者の合計割合は約44%とサーバ同梱ツールの割合(約49%)と比べてもそれほど大きな差がない。実はこの部分が統合運用管理/資産管理スイートとも関連するところだ。
例えば、System Centerを導入している場合は「ハイパーバイザーと同じベンダーの管理ツールを購入して導入している」に該当する。サーバOS「Windows Server」に同梱されているハイパーバイザーの「Hyper-V」は昨今シェアを伸ばしつつあり、同一ベンダー製のSystem Centerを選択するケースが当然ながら存在する。
Systemwalkerは「サーバと同じベンダーの管理ツールを購入して導入している」に該当する。富士通製PCサーバである「PRIMERGYシリーズ」は「ServerView」というサーバ同梱管理ツールを備えており、Systemwalkerとの連係も可能となっている。
このように、統合運用管理/資産管理スイートでシェアの高い製品はいずれもサーバ仮想化環境における活用でもユーザー企業に受け入れられやすい状況となっていることが確認できる。
統合運用管理/資産管理スイートを導入する際のハードルは下がりつつある
中小企業においても普及が進みつつあるサーバ仮想化技術を活用した環境では、サーバハードウェア同梱ツールだけでなく、統合運用管理/資産管理スイートが導入されるケースが少なくない。しかし、統合運用管理/資産管理スイートという名称のニュアンスから「ウチの会社には重厚長大過ぎるのでは?」「価格が高すぎて、導入できないのでは?」と思われる人も多いだろう。昨今では、中小企業が統合運用管理/資産管理スイートが持つメリットを享受しやすくなっている。導入シェアが比較的高いSystemwalkerとSystem Centerを例に取って見てみよう。
Systemwalkerはインシデント管理(IT管理/運用において発生した問題の受付、検索、解決、通知といった一連の流れを統制する)を担う「Systemwalker IT Service Management」やPCの資産管理やセキュリティ対策を担う「Systemwalker Desktop Patrol」など、広範な「対象」と「役割」をカバーする数多くの製品の集合体となっている。当然ながら、中小企業がそれだけ多くの製品を導入することは困難だ。だが、個々の製品は個別に導入することも可能であり、その中には中小企業を意識したものもある。サーバ30台以内の規模を対象とし、サーバ/ネットワーク/ストレージの稼働監視/障害監視を行える「Systemwalker Centric Manager Lite Edition」(※1)もその1つだ。
※1:http://systemwalker.fujitsu.com/jp/centricmgr/function/
Systemwalker Centric Manager Lite Editionは、監視の対象となる個々のサーバにモジュールを導入する必要のない「エージェントレス」方式を採用しているため、IT管理/運用を担う人員が限られる中小企業でも導入しやすい。その一方で、統合運用管理/資産管理ツールとしての基本機能はきちんと備わっているので、冒頭に述べたような複数機器にまたがる障害が発生した際も対処が可能だ。サーバ仮想化環境にも対応しており、仮想サーバの稼働状況はもちろん、ハイパーバイザーの障害についても検知することができる。このように統合運用管理/資産管理スイートであっても、中小企業向けに個別の製品が提供されているケースもある。
一方、System Centerはある意味それとは逆のアプローチを取っている。同製品もサーバをはじめとするITインフラの監視を主な役割とする「System Center Operations Manager」やサーバ仮想化環境を管理する「System Center Virtual Machine Manager」などといった複数の製品の集合体である点はSystemwalkerと同様だ。だが、「System Center 2012」以降はそれまで個別提供されていたこれらの製品を全て1つに集約し、ライセンス体系もシンプルになった。「自社に必要な製品はどれなのか?」「機能を取捨選択しているうちにライセンス費用がかさんでしまわないか?」といった点で悩む必要がなく、統合運用管理/資産管理スイート全体の導入ハードルを下げるアプローチを取っている(※2)。
「スイートの一部を中小企業向けに最適化する」「スイート全体のハードルを下げる」といったようにアプローチは異なるが、いずれにしても統合運用管理/資産管理スイートも中小企業が視野に入れるべき選択肢に加わってきたといえるだろう。
以上、全4回にわたって中小企業が知っておくべき運用管理/資産管理ツールの選定ポイントについて解説してきた。運用管理/資産管理ツールは自社に合ったものを選ばないと「手間を減らすために導入したのに、余計に手間が増えてしまった」という結果になりかねない。そうならないためにも常に全体を俯瞰する視点を持つことが大切だ。
本連載の冒頭で毎回掲げていた「役割と対象で分類した運用管理/資産管理ツールの守備範囲」はそうした視点を保つためにも役立つはずだ。昨今では中小企業にとっても扱いやすい運用管理/資産管理ツールが次々と登場してきている。それらを賢く活用するための指南書として、本連載が今後も多くのユーザー企業の方々のお役に立つことができれば幸いである。
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中小企業が知っておきたい運用管理/資産管理ツールの選定ポイント
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