どこでもアクセス&データ保護を実現する2枚の切り札:仮想デスクトップかクラウドか
デスクトップ管理ソフトウェアとクラウドバックアップツールを使えば、デバイスが故障しても従業員が会社のデータにアクセスできることを保証できる。ただ、目的が同じでも両者の採用する方法は異なる。
従業員は、いつでも会社のデータにアクセスできることを望んでいる。IT部門は、クラウドまたはオンプレミスのさまざまなソフトウェアを使用して、データへの常時アクセスとデバイスのデータバックアップという2つのニーズに対応することが可能だ。その方法は1つではない。
まず、デスクトップ管理ソフトウェアを使用する方法がある。また、要件が多くない場合は、クラウドベースのバックアップツールを利用することが可能だ。私物端末の業務利用(BYOD)を採用している企業は、クラウドベースのバックアップツールの恩恵を受けることができるだろう。
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DesktopNowでデータへのアクセスを提供する
米テキサス州ラウンドロック市では、仮想デスクトップのニーズに対応するために、米VMwareの「VMware vCenter Server 5.5」を実行しているサーバで「VMware Horizon View 5.3」を運用している。また、450台の物理デスクトップPCと400台の仮想デスクトップを管理するために米AppSenseの「AppSense DesktopNow Plus」を導入している。
DesktopNow Plusを導入した結果、同市の職員は、使用するクライアントPC(以下、PC)や作業を行う場所を簡単に変更できるようになった。しかも、各自のファイルは、全てすぐ使える状態でアクセスできる。同市の最高情報責任者(CIO)を務めるブルックス・ベネット氏は「どこかにファイルを取りに行く必要がないのは生産性の面で大きなメリットだ。重複するファイルを複数の場所に保存する必要もない」と語る。
DesktopNow Plusではファイルが組織のデータセンターに保管される。そのため、バックアップのサポート機能が用意されている。つまり、物理PCが故障しても、新しいPCにDesktopNow Plusをインストールすれば、簡単にデータにアクセスユーザープロファイルを仮想化することが可能だ。「サポート技術担当者が1日掛かりで行っていたデータの復旧作業は、数分とまでは行かなくても、数時間足らずで完了できるようになる」(ベネット氏)
DesktopNow Plusは最近のアップデートでインタフェースが強化され、新しいウィザードとテンプレートが導入されている。この新しいウィザードとテンプレート、AppSenseのサポートのおかげで同市は米Microsoftの「Office 2013」への移行をスムーズに行うことができ、Officeドキュメントに問題なくアクセスできるようになった。
「私たちの組織でサポートしている各種アプリに対応したウィザードとテンプレートは非常に重宝している。少し異なるアプリが出てきても問題ない。AppSenseに直接連絡して、そのアプリ用のテンプレートを作成するように依頼すればよい」とベネット氏は語る。
DesktopNow Plusの機能限定版である「DesktopNow」には「AppSense Environment Manager」「AppSense Application Manager」「AppSense Performance Manager」が含まれている。一方、DesktopNow Plusには、これらのコンポーネントに加えて、データへのアクセスを確保する「DataNow」が同梱されている。これらの製品を利用するには、永続ライセンスの購入が必要になる。同様のデスクトップ管理ツールには、米Liquidware Labsの「Liquidware Labs ProfileUnity」や米RES Softwareの「RES Workspace Manager」などがある。
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大学所有のデバイスデータを保存するCrashPlan
企業データへのアクセスに対応したデスクトップ管理スイートレベルの機能が必要ない場合は、安価なクラウドベースのバックアップツールが有力な選択肢となる。
米University of Notre Dame(ノートルダム大学)は、デバイスからデータへのアクセスに関してラウンドロック市とは異なる問題を抱えていた。大学が所有するノートPC/デスクトップPCや職員が所有するモバイルデバイスの流入に、既存のバックアップシステムでは対処できなくなりつつあったのだ。
同大学は、この問題に対処するためのツールを米非営利団体のInternet 2が運営するパートナーネットワーク「Internet2 NET+」で探した。そこで見つけたのが、米Code42 Softwareのクラウドベースのバックアップ製品「CrashPlan」だ。この製品は実行環境として、デスクトップPCとモバイルデバイスの両方をサポートしている。
同校は既存のコアストレージインフラを活用することを望んでいたが、米Appleの「Macintosh」など、職員の私有デバイスでそれを活用するのは難しそうなことは理解していた。同校で情報テクノロジー部門の統括責任者と最高情報デジタル責任者を務めるロナルド・クレーマー氏は「CrashPlanはバックグラウンドで実行するため、実行していることを気にせず、データをすぐバックアップできる」と語る。
クレーマー氏によると、同校は1年前にCrashPlanのライセンスを500シート購入して成果を上げているという。2014年秋に新年度が始まったら、新しい共有コストモデルを導入する予定だ。学生や職員個人、また学部や学科でライセンスを購入するかどうかを決めることができる。
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同校の関係者の大半は、研究活動や研究課題に米Microsoftの「Windows」や「Linux」、またはAppleの「Mac OS」を搭載したPCを使用している。モバイルデバイスでは、あまりCrashPlanは利用されていない。だが、CrashPlanをインストールすると、必要なときにドキュメントを取得することが可能だとクレーマー氏は言う。
CrashPlanは同校のID/アクセス管理システムとデータ連係している。そのため、CrashPlanがバックアップする情報へユーザーがアクセスする際にも、同校の既存システムと同じ資格情報を使用する。この仕組みは特にデバイスが故障した場合に重宝するだろう。「当校では、デバイスの故障により問題が発生しても、優れたサービスを提供して、『CrashPlanをインストールすれば研究のデータは戻ってくるから心配ない』と伝えることができる」(クレーマー氏)
CrashPlanと同様の製品には、米Druvaの「Druva inSync」、米EMCの「EMC MozyEnterprise」、米CommVaultの「CommVault Edge」などがある。
米国では450校の大学がデバイスデータのバックアップにCrashPlanを採用する。Code42によると、ノートルダム大学以外に、米Massachusetts Institute of Technology(マサチューセッツ工科大学)でもCrashPlanを導入済みだという。
CrashPlanには個人用のバージョン(Free/Indivisual/Familyの3つのエディション)とビジネス用のバージョンがある。ビジネス用ライセンスは、米国では1ユーザー60ドルからで1年間有効だ。また、ボリュームディスカウントも適用される。
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