仮想デスクップでCAD、3Dレンダリング 「vGPU」が欠かせない理由とは:実現のために幾つかの手法を紹介
仮想デスクトップでCADソフトや3Dレンダリングソフトを使用する場合、社内の仮想環境にはvGPUが必要になる。適切なvGPUを選択するには?
VDI(仮想デスクトップインフラ)の導入計画には多くの作業が伴うのは周知の事実だが、計画段階で見落としがちなのがvGPU(仮想グラフィックスプロセッシングユニット)だ。
vGPUは仮想デスクトップ上にグラフィックスをレンダリングする機能だ。仮想デスクトップは物理PC上ではなくサーバ上で動作するため、グラフィックス処理の大半はサーバ側で行われる。ユーザーが仮想デスクトップにアクセスするのに使用する端末は物理GPUを搭載しているが、このGPUは仮想デスクトップ環境を表示するためだけに使われる。実際にグラフィックス処理を実行するのはサーバのvGPUなのである。
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vGPUに関して知っておくべき最も重要なことは、幾つかの選択肢が存在するということだ。このため、ユーザーの仮想デスクトップのニーズおよびハイパーバイザーの機能に基づいてvGPUを選択しなくてはならない。例えば、全ての従業員がワープロや会計処理といった基本的な業務で仮想デスクトップを使用するのであれば、GPUの選択にさほど悩む必要はないだろう。グラフィックス機能を多用するアプリケーションが仮想デスクトップ上で動作しないからだ。一方、仮想デスクトップユーザーがCADや動画編集、3Dレンダリングなどを行う場合、vGPUの選択が非常に重要になってくる。
一般的には、vGPUには幾つかの選択肢がある。最も標準的な選択肢はハイパーバイザーでGPUをエミュレートするという手法だが、パフォーマンスは最も低い。この種のエミュレーションは、仮想デスクトップの動画処理に使える物理GPUをホストサーバが搭載していない場合に採用する。
ホストサーバが動画処理用の物理GPUを搭載していない場合には、サーバの物理CPUが全てのグラフィックス処理を実行する。この手法の利点は、実装が非常に容易だということだ。欠点は、グラフィックス命令がサーバの物理CPUに大きな負荷を掛けることである。この余計な負荷のせいでCPUがボトルネックになる可能性もある。たとえCPUがボトルネックにならないとしても、グラフィックスパフォーマンスの低下が生じる恐れがある。エミュレートしたGPUは、物理CPUほど効率的にグラフィックスをレンダリングできないからだ。
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もう1つの選択肢は、GPUパススルーという方法だ。GPUパススルーは、グラフィックス機能を多用するワークロードを実行する仮想マシン(VM)に最大のパフォーマンスを提供する。この方法で実現できるパフォーマンスのレベルは、専用のGPUを搭載した物理PC上で動作する場合に得られるパフォーマンスに匹敵する。
GPUパススルー方式は、GPUのリダイレクションを実行できるハイパーバイザーを必要とする。例えば「NVIDIA GRID」は、「Citrix XenDesktop」および「VMware Horizon View」をサポートする。GPUパススルーではハイパーバイザーがプロキシとして機能し、グラフィックス命令を仮想デスクトップから物理GPUに中継する。仮想デスクトップとGPUを接続するのはハイパーバイザーだが、物理GPUを利用するには適切なビデオドライバがゲストOSレベルで仮想デスクトップにインストールされていなければならない。
GPUパススルーは最も高いパフォーマンスを仮想デスクトップに提供するが、大きな欠点もある。物理CPUが仮想デスクトップに直接マッピングされるため、GPUパススルー機能を利用できる仮想デスクトップの数には限りがあるのだ。例えば、4個のGPUを搭載したホストサーバであれば、GPUパススルーを使えるのは4個の仮想デスクトップだけである。さらに、GPUパススルーは高可用性にも影響を及ぼす可能性がある。仮想デスクトップのフェイルオーバー先のサーバが十分な物理GPUを搭載していない可能性があるからだ。
より実際的な選択肢としては、GPU共有という方法がある。ホストサーバが複数のVMの間で物理CPUを共有するのと同じように、GPUも複数の仮想デスクトップで共有できる。GPU共有方式は通常、ソフトウェアでエミュレートしたGPUを使用するよりもはるかに優れたグラフィックスパフォーマンスを提供するが、専用のGPUで得られるパフォーマンスには及ばない。
GPU共有方式は、ハイパーバイザーがプロキシとして機能し、グラフィックス情報をGPUに渡すという点でGPUパススルー方式に似ている。異なるのは、複数の仮想デスクトップが1個のGPUを共有し、タイムスライスのメカニズムによって個々の仮想デスクトップに適切な量のGPUリソースが与えられるという点だ。使用率プロファイルの作成が可能な製品を提供しているベンダーもある。こうした製品を利用すれば、グラフィックスを多用するワークロードを実行するユーザーには、GPU時間の配分比率が増やされる。
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