デスクトップ仮想化導入のガイドライン【第4回】
5つの仮想化方式を一覧表で比較 ~デスクトップ仮想化導入で準備すべきこととは
デスクトップ仮想化プロジェクトを実行する上で準備・理解しておくべきポイントをまとめる。特に重要なポイントであるデスクトップ仮想化方式については一覧表(ダウンロード可能)で整理する。
連載「デスクトップ仮想化導入のガイドライン」では、これまでに、デスクトップ仮想化の価値構造、プロジェクトのトータルコストを最小化するポイント、各業界における典型的な適用シーンを説明した。ここからはプロジェクトを実行していくに当たり、準備・理解しておかなければならいポイントを整理していく。本稿は技術論ではなく、プロジェクトを進めていく上で念頭に置いておきたい考え方、フレームワークについての解説だ。
これまでの連載
- 第1回:企業の成長を維持、加速させるデスクトップ仮想化の真価
- 第2回:デスクトップ仮想化のトータルコストを削減する効果的な手段
- 第3回:業界別に見る デスクトップ仮想化による課題解決
- 第4回:5つの仮想化方式を一覧表で比較 ~デスクトップ仮想化導入で準備すべきこととは
連載インデックス:デスクトップ仮想化導入のガイドライン
最優先する目的を1つに絞る
デスクトップ仮想化は、導入して終わりというソリューションではない。導入と同時にビジネスのやり方、働き方のルールなど、業務上のオペレーション、労務管理なども合わせて見直さなければならい。デスクトップ仮想化によって得られる効果は多様だが、さまざまな効果を一度に得るために検討・対象範囲を大きくし過ぎてしまうと非常に多くの考慮・調整・決定が必要になる。その結果、最優先課題の解決に時間がかかってしまうこともある。従って、まずは、最優先する目的を1つに絞ってプロジェクトを進めてほしい。どんなプロジェクトにも共通して当てはまることではあるが、多様な効果が見込めるデスクトップ仮想化だからこそ徹底したい。
業務ごとにデスクトップ/アプリケーションの要件を整理する
デスクトップ/アプリケーションはユーザーの手元で動作し、ビジネスを動かす起点となる。従って、業務においてユーザーがデスクトップ/アプリケーションをどのように利用するのか(各ユーザーが、どんなデスクトップ/アプリケーションを、どんなエンドポイントデバイスを使って、どこからアクセスするのか、必要となる操作性、権限や自由度はどの程度なのかなどの)シナリオや要件を整理することが重要である。そして、そのシナリオや要件を固めることは、最適な仮想化方式を選定することにもつながる。仮想化方式は、種類によってコストや運用管理性が異なる。仮想化方式の選定については後段で整理をする。
設計・運用方法を見直す
デスクトップ仮想化の設計・運用は、従来のクライアントPC導入とは全く異なる。仮想デスクトップ環境の安定稼働のためには、アーキテクチャを設計するメソトロジー(方法論)や運用のポイントがあるのだ。本稿で詳細まで触れることはできないが、システムがデータセンター側へ集約・統制されるという変化に伴い、システム上のパフォーマンス、運用管理体系、エンドポイントデバイスの運用などに与えるインパクトも変わる。また、ネットワークを介してデスクトップ/アプリケーションが配信される仕組みであることから、ネットワークへの配慮も必要になる。
アーキテクチャの設計・運用においては専門知識が必要となるため、各ベンダーのノウハウを利用するのが効率的だ。最近では、設計の方法論やポイントに関する情報やプロジェクト支援ツールなどがベンダーから提供されているので、それらも併せて活用してほしい。
大規模インフラストラクチャの知識が必要となる
デスクトップ仮想化で仮想化されるOSやアプリケーションは膨大な数に上る。そして、デスクトップという単語のイメージとは異なり、非常に大きなハードウェアリソース(サーバ、ストレージ、ネットワーク)を運用管理していくことになる。つまり、大規模インフラストラクチャに必要な技術知識やノウハウが必要となる。この点も準備したい。
デスクトップ仮想化方式の選定
さて、ここからはデスクトップ仮想化の導入をデザインする上で重要なポイントの1つである仮想化方式の選定について整理する。デスクトップに求められる要件はユーザーごと、業務ごとに異なる。そのため、要件に対して適切な仮想化方式をユーザーや業務ごとに適用することが必要だ。また、前段でも述べたが、同時に各方式に必要なコストや管理上の特徴も把握して選定を進める必要がある。
各デスクトップ仮想化方式の特徴、ユーザー適用例を整理する。実際のプロジェクトの要件を基に、どの方式がどんなユーザーに最適かを見極める参考としていただきたい。なお、誌面の都合上、一覧表はダウンロード形式で提供する。
デスクトップ仮想化方式の一覧表をダウンロード(無料)
デスクトップ仮想化方式の一覧表をPDFファイルで提供しています。「業務や要件で分類、デスクトップ仮想化方式の一覧表(2013年版)」からダウンロードしてください。
これまで仮想デスクトップの仕組みは、リモート操作による画面転送方式を前提とした説明にとどめてきたが、デスクトップ仮想化はオフラインの要件を満たす方式も包含する。そこでまず、画面転送(オンライン)方式とオフライン方式について触れておく。
セキュリティ要件が求められるユーザーや業務においては、画面転送(オンライン)方式を選択することになる。管理側から見れば、完全にリソースが集約できるので効率的な運用が可能だ。
一方で、セキュリティ要件が高くなく自由度が必要であったり、オフライン利用が必須となるようなユーザーや業務はオフライン方式を適用することになる。管理側から見ると、管理対象が制御できない部分があることや、エンドポイント自体のセキュリティ対策を検討しなければなないため、一般的には管理コストを削減することは難しい。このようにセキュリティ要件によってオンライン/オフラインに分類できる。
3つの画面転送(オンライン)方式
また、画面転送(オンライン)方式には、「サーバ共有」「VDI(仮想PC)」「リモートPC」の3つがある。
・サーバ共有
サーバ共有方式は、サーバOSやアプリケーションを複数のユーザーで共有する方式だ。それによって、ハードウドェア/ソフトウェアライセンス、運用コストを低く抑えられる。
この方式は、デスクトップをシンクライアント端末に転送する運用にもよく利用されるが、最大の特徴はアプリケーション単位での配信が可能であることだ。従って、モバイルデバイスのような操作画面が小さなデバイスの場合は、サーバ共有方式でアプリケーションだけを配信することによって操作性が向上する。また、PCをエンドポイントデバイスとして利用し、この方式で集約されたアプリケーションをPCに配信するという運用形態も多く、PCとの併用で導入されることも多い。
管理サイドから見ると、他の方式に比べてトータルコスト(ハードウェア、ソフトウェア、運用コスト)を抑えて導入することが可能だ(参考:デスクトップ仮想化のトータルコストを削減する効果的な手段)。また、サーバOSをユーザーが共有するので、基本的にユーザーにはユーザー権限しか与えられず、統制でも力を発揮する。制約としては、サーバ上の1つのデスクトップ/アプリケーションをユーザーが共用するので、アプリケーションがマルチユーザー対応をしている必要があることだ。しかしながら、昨今のビジネスアプリケーションの大半はこの方式で動作可能だと思われる。
・VDI(仮想PC)
VDI(仮想PC)方式は、ユーザー1人ひとりにアプリケーションを含むデスクトップ(OS環境)を準備する方式である。ユーザー自身がアプリケーションをインストールするなど、ユーザーに自由度やリソースが必要な場合に採用される。デザイナーやエンジニアなどのPC利用に適用するケースが多い。
一方、コストについては、必要なハードウェア/ソフトウェアが増え、運用の複雑性も増すことになるため、サーバ共有方式と比べるとトータルコストは高くなる。この方式を実現する仕組みは3パターンあるが、より効率的な管理を行うために共有のOSマスターイメージと個々のユーザーの変更部分を組み合わせて、各デスクトップ環境を構成・運用するケースが増えている(リンククローン、ネットワークブート方式と呼ばれる)。
・リモートPC
リモートPC方式は、従来のブレードPC方式やオフィスPCにリモートでアクセスする方式である。仮想化技術を駆使しているわけではないが、画面転送方式でリモートユーザーにデスクトップを提供できることから、1つの仮想化方式として位置付けられる。この方式は確実に固定でCPUメモリ、I/Oなどのリソースを確保する必要があるような開発者、エンジニアなどに適している。管理対象は従来のPCの運用と大きく変わらない。
2つのオフライン方式
そして、オフライン方式には「オフライン仮想アプリケーション(アプリケーションストリーミング)」「オフライン仮想デスクトップ」の2つがある。
・オフライン仮想アプリケーション(アプリケーションストリーミング)
オフライン仮想アプリケーション(アプリケーションストリーミング)方式は、あらかじめパッケージングされたアプリケーションファイルをファイルサーバからダウンロードし、エンドポイントデバイス上で(アプリケーションを)実行するという仕組みだ。アプリケーションの実体がエンドポイントデバイス上にあるためオフライン利用が可能であるものの、前述したように統制や情報漏えいの防止といったセキュリティの観点で弱さがある。また、エンドポイントデバイスのプラットフォーム上で動作するので、画面転送方式のように、あらゆるデバイスで利用可能な方式ではない点に注意いただきたい。
・オフライン仮想デスクトップ
オフライン仮想デスクトップ方式は、エンドポイントデバイスに仮想デスクトップOSをダウンロードし、オフラインでも仮想デスクトップが利用できる仕組みだ。ネットワークの届かない地域や場所でデスクトップが必要なユーザーや業務に適用される。
オフライン仮想アプリケーションと同様に、統制や情報漏えいの防止という点ではセキュリティに不安がある。
オフライン仮想デスクトップ方式を実現する方法は2パターンある。1つは、クライアントハイパーバイザー上で仮想デスクトップが動作するType-1、もう1つはエンドポイントのOS上で仮想デスクトップが動作するType-2だ。クライアントハイパーバイザーは、汎用的なエンドポイントデバイス上で動作するOSとは異なるため、セキュリティリスクを抑えることができる。両者とも、オンラインのタイミングでバックアップを取得するなどの機能が備わっている。
今回は、デスクトップ仮想化プロジェクトを実行するために準備・理解しておかなければならいポイントを解説した。システムを導入して終わりではないこと、前提として習得しなければならない知識、ユーザーや業務要件に合った最適なデスクトップ仮想化方式の選定など、これらは必ず念頭においていただきたい。次回はより技術的な観点に踏み込んで準備すべきポイントを解説する。
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デスクトップ仮想化導入のガイドライン
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