セキュリティの懸念から、会社支給へと転換
【事例】DeNAがBYODをやめた理由
私物端末の業務利用(BYOD)を解禁していたDeNAが、本社オフィス移転を機にBYODを原則中止。会社支給へとかじを切った。その理由は何か。現状のセキュリティ対策は。同社担当者に聞いた。
私物のiPhoneやAndroid端末などを業務利用させる「BYOD(Bring Your Own Devices)」。国内企業の一部でもBYOD採用の動きが広がりつつある中、BYOD解禁から一転、原則中止してスマートフォンの会社支給へとかじを切ったのが、ソーシャルゲーム国内大手のディー・エヌ・エー(以下、DeNA)である。
DeNAは、なぜBYODの原則中止に踏み切ったのか。会社支給のスマートフォンには、どういったセキュリティ対策を施しているのか。スマートフォン導入を担当した、同社システム統括本部本部長の茂岩祐樹氏と、経営企画本部の玉木伯岳氏に話を聞いた。
スマートフォン導入の概要:スマートフォン内線化で固定電話を大幅減
2012年4月に本社オフィスを複合施設「渋谷ヒカリエ」へと移転したDeNA。スマートフォンの会社支給を始めたのは、その1カ月前の2012年3月だ。KDDIと法人契約し、2012年4月時点で、iPhoneとAndroid端末を合計約500台導入した。
今回、DeNAが導入したのは基本的にスマートフォンのみで、タブレット端末は対象外である。これは、スマートフォンを導入した目的の1つが、スマートフォンを内線電話として利用し、従業員がどこにいても連絡可能にすることだったことが背景にある。スマートフォンの導入と同時に、KDDIの固定・携帯融合(FMC:Fixed Mobile Convergence)サービスを契約。スマートフォンの内線化を実現した。
スマートフォン内線化により、従来は1人1台用意していた固定電話の数を4分の1に削減。オフィス移転時に導入すべき固定電話の購入コストを大幅に抑えることができたという。
セキュリティ対策:MDMはiOS/Android両対応が絶対条件
スマートフォンの会社支給と同時に、セキュリティ対策も施した。モバイルデバイス管理(MDM)には、KDDIのMDMサービス「KDDI Smart Mobile Safety Manager(SMSM)」を選択した。
MDM選定時に最優先したのは、「対応端末の幅広さ」(茂岩氏)だったという。最低限、iPhoneとAndroid端末を統合管理できるMDMの選定が絶対条件だった。「端末によって異なるMDMを利用すると、制御できる項目にも違いがあり、セキュリティポリシーの統一が困難になる」(同氏)という判断からだ。Android端末の対応端末数も重視し、SMSMを選択した。
MDMの選定に当たっては、KDDI提供サービスやサードパーティーベンダー製品など5製品・サービスの中から比較検討。「スクリーンロックが可能であること」「パスワードを一定回数間違えたときにデータをワイプできること」といった事前に必要だと定めた機能が利用できることを最低条件として、他の企業の導入事例も参考にしながら、必要な機能を備える製品・サービスを選定していったと、茂岩氏は明かす。
Androidスマートフォンのマルウェア対策については、トレンドマイクロの「ウイルスバスター モバイル for auスマートパス」を採用。「対策可能なウイルスのカバー率や信頼性を評価した」(茂岩氏)ことに加え、DeNAは複数種類のスマートフォンアプリケーションを月額料金で定額利用できる「auスマートパス」を契約しており、追加コストが抑えられることから選択に至ったという。
BYOD解禁の経緯:「Mobage」の開発テスト用などで利用
DeNAにとって、スマートデバイスの業務利用は今回が初めてではない。実は同社は、BYODをいち早く解禁した企業だ。2006年のソーシャルゲームプラットフォーム「Mobage」の提供直後から、営業部門や開発部門など一部の従業員が、バグチェックなどの開発テストで私物のフィーチャーフォン(従来型携帯電話)などを業務利用していた。2011年3月に発生した東日本大震災を受け、直後に全従業員を対象にBYODを解禁。「社内メールをいつでもどこでも確認できるようにすることが目的だった」(玉木氏)
だが同社は、本社オフィス移転と同時にこの方針を転換。同社初台オフィスにあるEC事業部やアルバイトなど、スマートフォンを支給しない一部の従業員を除き、BYODから会社支給へと移行した。
BYODの課題:退職時の端末データの扱いがネックに
DeNAが会社支給の推進に傾いた最大の要因は、セキュリティにあった。「従業員の私物端末内にデータが残ることが、BYODの懸念として残っていた」と、茂岩氏は語る。「BYODでは端末の所有権が個人にあるため、退職時などに私物端末内のデータ消去を徹底するのは難しい」(同氏)。さらに、MDMで全従業員の私物端末を管理するのも「現実的ではなかった」(同氏)と振り返る。
BYODを採用する企業がメリットとして期待するのが、導入時の端末コストの削減だ。従業員が端末費用を完全に負担すれば、確かに端末の導入コストは低く抑えられる。だがスマートフォン支給に伴って固定電話数を大幅に減らしたDeNAの場合、電話端末全体のコストを考慮すると、「会社支給にした方が、BYODよりも結果的に若干安上がりだった」(玉木氏)という。
前述の通り、DeNAは、一部従業員に対してはBYODを継続している。BYOD端末のセキュリティ確保は、会社支給とは異なり、米Googleが提供するSaaS(Software as a Service)形式の情報系アプリケーション「Google Apps」が備える簡易的なMDM機能を利用。DeNAはメールやスケジュール管理にGoogle Appsを利用しており、追加コストが不要な点を重視した。
今後の展開:セキュリティ対策は「ユーザビリティ」を重視
現在、スマートフォンから利用可能な業務システムはメールとスケジュール管理のみであり、その他の業務システムは利用できない。「ワークフローシステムをスマートフォンから利用したいという声もある。社内システム構築の優先順位を踏まえた上で、必要であれば検討を進める」(茂岩氏)考えだ。
業務利用を進めると、当然ながら必要なセキュリティ対策は変化する。茂岩氏は、今後のスマートフォンセキュリティを考える上で、「ユーザビリティとセキュリティの両立を最重要視していく」と強調する。MDMの選定時にiPhoneとAndroid端末の双方に対応しているかどうかを重視したのは、こうした考え方も背景にあるという。配布する端末を限定すると、既に個人で所有しているスマートフォンと同じ機種になってしまう可能性が高い。「『なぜ同じ端末を2台も持たなければならないのか』という、従業員からの反発は避けられなかっただろう」(茂岩氏)
ITmedia Virtual EXPO 2012のご案内
ITmedia Virtual EXPO 2012(開催期間:2012年9月11日~28日)のモバイルゾーンでは、DeNA総務部部長である原田光輝氏のインタビュー動画を公開。「『Mobage』のDeNAが明かす、iPhone/Android導入の舞台裏」と題して、DeNAにおけるスマートフォン導入の経緯や利用実態を明らかにします。
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