新人IT担当者のためのネットワーク機器入門【第2回】
まず、「イーサネット」から理解しよう
ネットワークと関連機器に関する「今さら聞けない」基礎知識をこっそりおさらいしようというこの連載。今回はレイヤー1とレイヤー2の主要技術であるイーサネットについて解説します。
連載1回目の「ネットワークの基本『OSI参照モデル』とは何か?」では「OSI参照モデル」について説明しました。これはさまざまなネットワーク機器が持つ機能を知る上で基本中の基本となるものです。今回からは、各レイヤーにおける代表的なプロトコルを紹介しつつ、それぞれのレイヤーで動作するネットワーク機器の基本動作、最近の動向、学習方法などについて、下位レイヤーから順に説明していきます。
連載:新人IT担当者のためのネットワーク機器入門
今回、対象とするレイヤーは、レイヤー1(物理層)とレイヤー2(データリンク層)です。レイヤー1はケーブルやコネクタの形状、信号変換方式など、物理的な要件を全て定義しているレイヤーです。そして、レイヤー2は物理層の信頼性を確保するレイヤーです。レイヤー1はあくまで物理的な要件を定義しているだけで、信頼性までは担保していません。その欠点を補完しているのがレイヤー2です。
2つのレイヤーは密接に関わりあって存在するものです。本連載でも両方合わせて説明します。
イーサネットの3つの役割
レイヤー1とレイヤー2で、外せない規格が「イーサネット(IEEE 802.3)」です。一般的には有線ネットワークであれば、ほぼ間違いなくイーサネットを使用していると考えてよいでしょう。
イーサネットは、レイヤー3(ネットワーク層)から受け取ったデータ(パケット)に「プリアンブル」「ヘッダ」「FCS(Frame Check Sequence)」という3つのフィールドを付加して、フレームにします。それぞれのフィールドには、以下のような役割があります。
プリアンブル
プリアンブルは「これからフレームを送りますよ」という合図の役割をする8バイト(64ビット)のビット配列です。「10101010…(中略)…10101011」と必ず同じビット配列になっています。この特別なビット配列を見て、相手は「これからフレームが届くんだな」と判断します。
ヘッダ
ヘッダはフレームの送信元と宛先、パケットの種類を定義します。「宛先MACアドレス」「送信元MACアドレス」「タイプ」の3つで構成されています。宛先/送信元MACアドレスについては後述します。タイプはパケットの種類を表しています。代表的なプロトコルのタイプコードは以下の表の通りです。
FCS
最後にFCSです。FCSはビットエラーチェックのために使用するフィールドです。このフィールドがレイヤー1における信頼性確保の役割を担います。ヘッダとデータに対して一定の計算(チェックサム計算)を行い、FCSとしてフレームに付加して、相手に送ります。相手も受け取ったフレームに対して同じ計算を行います。計算結果と受信したFCSの値が同じ場合、ビットエラーがなかったと判断します。異なる場合、どこかでビットエラーがあったと判断します。
イーサネットのポイントはMACアドレス
イーサネットにおいて最も重要なフィールドが、ヘッダ内にある「宛先MACアドレス」と「送信元MACアドレス」です。MACアドレスは、イーサネットに接続された各機器(ノード)の識別IDです。MACアドレスは48ビットで構成されており、「00-0c-29-43-5e-be」や「04:0c:ce:da:3a:6c」のように、8ビットずつハイフンやコロンで区切って、16進数で表記します。
MACアドレスは上位24ビットと下位24ビットで異なる意味を持ちます。
上位24ビットは、電気・電子関係の技術者団体である米国電気電子学会(IEEE)が機器のベンダーごとに割り当てたベンダーコードです。これは「OUI(Organizationally Unique Identifier)」と呼ばれています。この部分を見ると、ノードのベンダーが分かります。ちなみに、OUIは「http://www.ieee.org/netstorage/standards/oui.txt」で公開されていますので、トラブルシュートのときなどに参考にしてみるのもよいでしょう。また下位24ビットは、ベンダー内で機器ごとに一意に割り当てているコードです。
ネットワークインタフェースカード(NIC)に割り当てるMACアドレスは、IEEEによって一意に管理されている上位24ビットと、各ベンダーによって一意に管理されている下位24ビットの2つの組み合わせによって定義します。そのため、各NICのMACアドレスは世界で1つのものになります。
MACアドレスは、Windows OSを使用している場合、コマンドプロンプトで「ipconfig /all」と入力すると確認できます。「物理アドレス」がMACアドレスを表しています。図3のMACアドレスは「00-0C-29-F6-C1-78」です。ベンダーコードを見ると、VMwareのNICであることが分かります。
Mac OSを使用している場合、ターミナルで「ifconfig」と入力するとMACアドレスを確認できます。「ether」がMACアドレスを表しています。図4のMACアドレスは「04:0c:ce:da:3a:6c」です。ベンダーコードを見ると、AppleのNICであるということが分かります。
全てのMACアドレスがNICに関連付けられているかといえば、必ずしもそうとは限りません。通信の種類によっては、特別なMACアドレスを使用します。ネットワークにおいて、通信の種類は「ユニキャスト」「ブロードキャスト」「マルチキャスト」の3つしかありません。そして、それぞれで使用するMACアドレスが微妙に異なります。ざっくり説明しましょう。
ユニキャスト
ユニキャストは1:1の通信です。これはとても分かりやすいでしょう。宛先MACアドレスも送信元MACアドレスもノードのMACアドレスになります。Webやメールなど、インターネットの通信のほとんどは、このユニキャストで構成されています。
ブロードキャスト
ブロードキャストは1:nの通信です。ここでいう「n」は、同じネットワークにあるノード全てを表しています。あるノードがブロードキャストを送信したら、そのネットワークにある全てのノードが受信します。このブロードキャストが届く範囲のことを「ブロードキャストドメイン」といいます。ブロードキャストの送信元MACアドレスはノードのMACアドレスです。宛先MACアドレスは48ビットが全て「1」、16進数にすると「FF-FF-FF-FF-FF-FF」という特別なものを使用します。
マルチキャスト
マルチキャストは1:nの通信です。ここでいう「n」は、特定のグループ(マルチキャストグループ)に入っているノードです。あるノードがマルチキャストを送信したら、そのグループに入っているノードだけが受信します。
マルチキャストの送信元MACアドレスは、そのままノードのMACアドレスです。宛先MACアドレスは、上位8ビット目の「I/G(Individual/Group)ビット」を「1」にした特別なものを使用します。I/Gビットは、通信先のノードが1台か複数かを示すビットで、ユニキャストであれば「0」、マルチキャストであれば「1」になります。ちなみに、ブロードキャストのMACアドレス(FF-FF-FF-FF-FF-FF)もI/Gビットが1であり、マルチキャストの一部として扱われます。
マルチキャストでは、IPv4アドレスとMACアドレスをどう対応させるかを見ていきましょう。マルチキャストで使うMACアドレスは、上位25ビットが「0000 0001 0000 0000 0101 1110 0」です。これを16進数にすると「01-00-5E」の後に「0」が1個付きます。なお、01-00-5EはインターネットのグローバルIPアドレスを管理する「ICANN」という組織が所有しているベンダーコードです。一方、MACアドレスの下位23ビットは、マルチキャスト用IPアドレス(224.0.0.0 ~ 239.255.255.255)の下位23ビットをコピーして使用します。
マルチキャストは主に動画配信や証券取引系のアプリケーションなどで使用されています。ブロードキャストはそのネットワークにある全ノードが強制的に受信してしまうのに対し、マルチキャストはアプリケーションを起動したノードだけが受信できるので、トラフィック的に効率が良くなります。
レイヤー1とレイヤー2では、このイーサネットだけおさえておけば問題ありません。次回は、レイヤー2で動作する機器「L2スイッチ」がどのようにしてフレームを転送しているのかを説明します。
執筆者紹介
みやたひろし
大学と大学院で地球環境科学の分野を研究した後、某システムインテグレーターにシステムエンジニアとして入社。その後、ネットワーク機器ベンダーのコンサルタントに転身。設計から構築、検証に至るまで、ネットワークに関連する業務全般を行い、今日もどこかで自己研さんを積んでいる。CCIE(Cisco Certified Internetwork Expert)。F5 Certified Technology Specialists。著書に『インフラ/ネットワークエンジニアのためのネットワーク技術&設計入門』『サーバ負荷分散入門』(いずれもSBクリエイティブ)
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