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2018年度診療報酬改定における医療現場の「働き方変革」、医師の勤務体制が柔軟に
2018年度診療報酬改定では、医師の勤務体制を改善する取り組みが強化されます。「対面」を算定要件にしていた一部の診療報酬も要件が緩和され、IT活用の範囲が広がります。
前回「医療現場の『働き方変革』を加速する2018年度診療報酬改定 鍵は『医療クラーク』か」に引き続き、今回も「医療分野における働き方改革とIT活用」について解説します。
2018年改定での「働き方改革」
安倍晋三内閣の重要施策として注目を集めている「働き方改革」。2018年4月の診療報酬改定においても「働き方改革」が1つのテーマとして盛り込まれました。
2017年12月11日に公表された診療報酬改定の基本方針は、以下の視点を示しています。
医療従事者の厳しい勤務環境が指摘されている中、医療の安全の確保や地域医療の確保にも留意しつつ、医療従事者の負担の軽減を図り、あわせて、おのおのの専門性を発揮でき、柔軟な働き方ができるよう、環境の整備、働き方改革を推進することが必要である。
医療は長らく「きつい、汚い、危険」といわれる3K職場の代表とされてきました。「働き方改革」と対で議論される「生産性」という考え方も、医療現場にはこれまであまりなじまなかったように感じます。「生産性を向上させながら医療の質を維持することは難しい」と考えられていたのかもしれません。しかしながら、わが国では少子高齢化の影響で、医療現場の人手不足が深刻な問題になっており、真剣に働き方改革に取り組む必要が出てきたといえます。
医師事務作業補助体制加算の引き上げ
厚生労働省は2018年度の診療報酬改定で、病院勤務医の負担軽減策として医師事務作業補助者(いわゆる医療クラーク)の有効性を認め、「医師事務作業補助体制加算」を大幅に引き上げる見込みです。
医師の勤務体制改善に関する取り組みとしては、「病院勤務医の負担の軽減および処遇の改善に資する計画」の内容を厳格にする点が挙げられます。「交代勤務制・複数主治医制」や「育児・介護休業法による措置を活用した短時間正規雇用医師の活用」を計画に含む必要があると明示するなど、基準をより具体的にします。
病院勤務医の負担軽減だけでなく、病院に勤務する医療従事者全体に範囲を広げ、勤務環境の改善に取り組むことも求めるようになります。具体的には「総合入院体制加算」の算定要件において「院内保育所の設置」などを計画するよう定めます。
ITを活用した、勤務場所に関する規定の緩和
わが国において不足している「画像診断および病理診断を行う医師」といった専門医(放射線科医、病理医)についても、一定の要件下で、IT活用による柔軟な働き方を認めます。具体的には「画像診断」「画像診断管理加算」「病理診断料」「病理診断管理加算」について、保険医療機関で週24時間以上勤務する医師が、ITを活用して医療機関以外の場所(自宅など)で読影した場合も、院内での読影に準じて算定できることになります。
ITを活用した、関係機関連携の推進
病院と診療所、医療機関と介護施設など、関係機関間や医療従事者間の効率的な情報共有と連携を促進する観点から、地域包括診療料についての要件を緩和し、連携会議や情報共有(カンファレンス)へのIT活用を認めます。
「退院時共同指導料」や「在宅患者緊急時等カンファレンス料」などは、これまで「対面」によるカンファレンスの開催を算定要件にしてきました。しかし多忙を極める医療従事者が一堂に会するのは難しいことが多く、算定のハードルとなっていました。2018年度改定においては、一定の条件下で、ITを用いたカンファレンスを組み合わせることができるよう要件を緩和します。
以上はITを活用することで、勤務場所や距離のハードルをクリアしようとする試みです。IT活用で医療現場の生産性を向上させることができるのではないかと、政府が評価したものだと解釈できるでしょう。
患者数の増減に合わせて人員配置ができない現状
ITが生産性向上に寄与した例は他にもあるでしょう。例えば診療所は季節によって需要(患者数)の増減が発生します。冬と春はインフルエンザや花粉症といった季節性の病気で患者が急増し、春の大型連休(ゴールデンウイーク)を過ぎると患者数が落ち着くといった季節変動によるものです。この変動に合わせて人員配置ができればよいのですが、医療現場は慢性的な人手不足です。いざというときのために十分な人員を確保しておきたいという思いから、患者の多い時期に合わせた人員配置となりがちなので、どうしても非効率的になってしまうのです。
今後はPMS(Practice Management System:病院向け経営支援システム)などが普及することで、過去のトレンドから日々の患者数を予測できるようになるでしょう。そのデータを活用してシフトを組み、効率的な人員配置を実践する診療所が出てくるものと予想します。
次回は、IT活用の一例「受付業務の自動化」について解説します。
このコラムについて
医療機関のIT化は他の業界に比べて5~10年は遅れているといわれます。また、医療現場でIT製品を導入する際、スタッフから不安の声が上がるなど、多かれ少なかれ障害が発生します。なぜ、医療現場にITが浸透しないのか。その理由を探るとともに、解決策を考えていきます。
著者紹介
大西大輔(おおにし・だいすけ)MICTコンサルティング
一橋大学大学院MBAコース修了。医療コンサルティング大手に入社。2002年に医療IT機器の常設展示場「MEDiPlaza」を立ち上げ、企画運営、スタッフ指導、拠点管理などを担当。2016年10月に医療ICT専門コンサルタントとして独立し、MICTコンサルティングを設立。医療機関向けシステムの開発アドバイス、導入アドバイス、医療IT人材の育成などを行う。過去2000件を超える医療機関へのシステム導入の実績から、公的団体を中心に講演を多数実施している。現在、医療事務・クラーク専門学校の非常勤講師も務めている。
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