Column
ユーザーの意識を高めなければセキュリティ対策は無駄になる
どのような対策を講じようとも、対策にどれだけの労力を注ごうとも、エンドユーザーがもたらす重荷を技術的に取り除く方法は何もない。この問題への対処法として唯一有効なのは、「エンドユーザーのセキュリティ意識を高めるための訓練、教育」だ。
フィッシング攻撃が増加し、そうした攻撃の巧妙化が進むなか、「こうした状況にどのように対処すべきか」をめぐる議論も相応して高まっている。Webベースのアプリケーションを構築/ホストしている企業や金融機関が全責任を負うべきだ、と主張する向きは多い。こうした企業が、最高の措置を全社的に講じているなどと言うつもりはないが、わたしが思うに、この件に関しては、パズルの重要な要素が1つ欠けている。それは、エンドユーザーの存在だ。
どのような対策を講じようとも、対策にどれだけの労力を注ごうとも、エンドユーザーからの重荷を技術的に取り除く方法は何もない。これは、あらゆるセキュリティアーキテクチャにおいて常に急所となるポイントだ。例えば、誰かに自宅の鍵を渡し、セキュリティコードを教えたとしたら、家に帰ったときに、その人が自分の家の居間でビールを飲みながら座っていたからといって、驚くのはおかしい。同じく、故意であれ、過失であれ、自分のオンラインアカウントの本人確認情報を周囲に明かしたユーザーは、そのアカウントが改ざんされたとしても驚くべきではない。ユーザーをユーザー自身から守るために、われわれには何ができるのだろうか?
この問題への対処法として、明らかに、大半の組織が実行していないのは、「エンドユーザーのセキュリティ意識を高めるための訓練、教育」だ。こうした取り組みに煩わされたくないと思っている人が多いことは、わたしも知っている。そうした人々は、これは勝ち目のない戦いだと考えているのだ。だが、エンドユーザーがリスクに対する理解を深めれば深めるほど、フィッシング詐欺など、「計略」(ソーシャルエンジニアリング)に基づいた各種攻撃の被害者となる可能性は低まる。そして、自社のユーザーが「被害者」となる可能性が低ければ低いほど、ITマネジャーがそうした攻撃への対処に時間や予算を奪われる可能性も低くなるだろう。会社でアプリケーションを利用するすべてのユーザーに、少なくとも最新のアンチウイルスソフトウェアを実行してもらい、電子メールに含まれているハイパーテキストリンクをクリックしてサイトにアクセスするのをやめてもらえれば、コンシューマーベースに対する攻撃の成功件数を大幅に削減できるだろう。
わたしの提案は、ユーザーのセキュリティ意識を高めるための訓練をセキュリティプランに含め、「自分のアカウントは自分で保護する」という責任感をユーザーに身に付けてもらうためのプロセスや手続きを定める、というものだ。例えば、エンドユーザー契約の「法律用語」を理解しやすい「チェックリスト」に書き直し、顧客が自分自身のアカウントをきちんと保守するためには何をすべきで、何をすべきでないかをリストで示す、といったシンプルな方法でかまわない。そして、アカウントを提供する前に、ユーザーには、この改訂版のエンドユーザー契約に必ず目を通してもらうようにする必要がある。
さらには、半年か1年ごとに、ユーザーにこうした要件を改めて承諾してもらい、最新の攻撃を反映できる対策があれば何であれ取り入れ、エンドユーザーのセキュリティ意識の維持に役立てられるようにすることも重要だ。そのほかに、わたしはユーザーが要件を理解しているかどうかを確認するための「テスト」の実施を提唱している。また、ユーザーがこうした要件を遵守しそびれた場合に、企業のあらゆる責任を免責するためのエンドユーザー契約も重要だ。そこまでするのは、少し極端かもしれない。だが、「ユーザーを保護する」必要性が今後も高まり続けるようであれば、そうした措置は必須となるだろう。
自社のアプリケーションを保護するということは、単にコードからあらゆる脆弱性を取り除き、転送中にも静止中にもデータを暗号化するというだけの話ではない。もし、自社のユーザーが方程式における自らの役割の重要性を理解していないようであれば、どのような対策を講じようとも、システムが攻撃されてしまうのを阻止することはできないだろう。今日、アプリケーションの開発、導入、利用、保守にかかわるすべての人たちにとって、「セキュリティ」という言葉が持つ広範な意味を理解することが必要だ。セキュアなアプリケーションの提供という点では、エンドユーザーのセキュリティ意識を高めるための訓練も含め、すべての側面に積極的に取り組もうとしている組織こそが、ずば抜けた成功を収めることになるだろう。
本稿筆者のケン・サルコウ氏は、6年前からアプリケーショントラフィック管理のF5 Networksに勤務し、さまざまな役割をこなしている。同氏は、ミネソタ大学経営学部でIT学士号を取得しているほか、ネットワーキングから法医学調査まで、多様な分野で資格認定を受けている。企業の情報システム管理の分野では、約20年に及ぶ豊富な経験と実績を持つ。刑事/民事訴訟の分野で活動するコンピュータ法医学研究所Binary Forensicsのオーナー兼経営者でもある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー