バックアップ回線は企業の生命線【第1回】
第二の回線で作る「止まらないネットワーク」
ITへの依存度が高まる中、ネットワークの継続性は欠かせなくなった。万が一に備え「止まらないネットワーク」を構築することは、企業の喫緊の課題といえる。バックアップ回線による耐障害対策について紹介しよう。
最近では、「BCP」(Business Continuity Plan:事業継続計画)の観点から、企業存続のために、いかに事業資産を守るべきかということも注目を集めている。BCPとは、自然災害・火災・テロなど不測の事態に対し、事業資産の損失を最小限に食い止め、迅速に業務を復旧、再開する計画のことだ。自然災害の多い日本では、こうしたBCPに対する関心は高い。そこで、万が一に備えて「止まらないネットワーク」を構築することは、今や企業規模を問わず喫緊の課題といっても過言ではないだろう。
では、どのようにしてこのようなネットワークを構築していけばよいのか。内閣府の事業継続ガイドラインによれば、業務を支える情報システムの回線・電源を冗長化の第一のポイントとして挙げている。停止しないネットワークを構築する一般的な手法は、バックアップ回線を用意し、万が一ネットワークに障害が起きても、正常に通信できるように準備しておくことだ。これは、あらかじめ2本の橋を川にかけておけば、たとえ1本が災害で流されてしまったとしても、もう1本の橋で対岸に渡ることができるのと同じ理屈だといえる。
実際にミッションクリティカルなシステムを持つ企業では、いわば「ころばぬ先のつえ」の保険として、こうしたバックアップ回線を準備しているところが多い。とはいえ、バックアップ回線を用意している企業でも、帯域の問題を考慮に入れる必要があるかもしれない。ある企業では、障害が起きていざ回線が切り替わったとき、広帯域を必要とするアプリケーションが極端に遅くなって、業務に支障が出てしまったケースもあるという。最近ではブロードバンドの進展によって、安価で高速な回線をバックアップ用途にも利用できるようになった。従来の低速なバックアップ回線を見直す時期に来ているのではないだろうか。
一方、中小・中堅企業の場合はどうか。まだまだバックアップ対策を講じていない企業が大多数を占めているのが実情だろう。というのも、具体的にどのように回線を冗長化すれば有効であるか、企業規模に合った最適構成やサービスがよく分からないことに加え、導入コストが大きな問題になることも多いからだ。バックアップ回線というと、普段あまり使わない「眠ったネットワーク」というイメージが強く、とかく無駄な固定コストと思われがちだ。導入がどうしても後手に回ってしまうこともうなずける。だが、こうしたバックアップ回線のコストを抑えつつ、その回線を積極的に活用できる方法もある。
本特集では、回線を冗長化する際に、どのようなサービスを有効に使うべきかを紹介していく。もし現在、まだメイン回線しか導入していないのならば、BCPや信頼性の観点から、この機会にぜひ一度バックアップ回線を見直していただきたい。災害やトラブルに強い、止まらないネットワークの導入は企業にとって大きな財産となるはずだ。
アクセス回線とWANサービス自体の冗長化
既に多くの企業がメイン回線として広域イーサネット、IP-VPN、インターネットVPNなどを導入し、拠点間の通信を行っていることを前提にすると、バックアップ回線の冗長化には幾つかの選択肢があることが分かる。実際のところ、通信事業者が提供する閉域網のWANサービスの場合は、現時点で頻繁に障害が起こる可能性はそれほどないだろう。しかし、そのWANサービス網と拠点を結ぶ足回りのアクセス回線については、障害が起こる可能性はある。そこで最低限の接続性を確保するために、この部分を冗長化しておくことが先決になる。
最初に頭に浮かぶのが、アクセス専用のバックアップ回線を常時接続しておく方法だ。これにより耐障害性を確実に向上できる。ただし注意すべき点は、たとえ広帯域なブロードバンド回線を用いても、異なる種別や通信事業者を選択しなければ、あまり意味がないということ。もしメイン/バックアップ回線の双方が同一事業者だと、メンテナンスのスケジュールが重なり、いずれの回線も利用できない事態が考えられる。さらに通信事業者内で大規模な障害が生じた場合には、どちらの回線も影響を受けてしまうことになるだろう。そこでアクセス回線の二重化プランとして、従来の回線に加えて他社のADSL回線やISDN回線を併用し、障害発生時にバックアップ回線に切り替える廉価なサービスも登場している(図1)。
また、こうした足回りのアクセス回線の冗長化だけでなく、通信事業者が提供するWANサービスが万が一稼働しなくなっても、通信を維持できるように万全の準備を整えている企業も増えてきた。特にインターネットVPNで拠点間通信を行うケースでは、広域イーサネットやIP-VPNと比べると信頼性が低くなってしまうため、WANサービスの冗長化は必須だろう。こちらもアクセス回線の導入と同様、異なる通信事業者のネットワークを利用する「キャリア・ダイバシティ」によって二重化する方法がある(図2)。VPNによる複合的ネットワークを構築する企業の中で、バックアップ用途にキャリア・ダイバシティを取り入れる企業は3割以上にも上るという。
バックアップ回線を眠らせない積極的な活用法も
キャリア・ダイバシティは、二重化ソリューションとしては最も確実性が高いといわれている。物理的に異なるサービス網を組み合わせるため、前述のような心配は不要だ。とはいえ、契約・導入・保守の際に、各拠点で2つの通信事業者の窓口を使い分ける必要が生じる。また、通信事業者が異なるため、トラブルが発生すると原因追究や復旧に時間がかかる。さらに、回線切り替え機構が複雑になる、一元的な管理ができず担当者の負荷が大きくなるというデメリットもある。また、それぞれの回線が個別契約となるため、二重の費用が掛かり、どうしてもコストが割高になる傾向は否めない。
そこで、1社でキャリア・ダイバシティと同等の環境を提供する通信事業者も登場している。同じ通信事業者でもサービスの種類が異なれば、網として共有している部分はほとんどない。物理的に異なる、相互に影響を与えない自社のバックボーンネットワークを組み合わせることで、あたかも異なる通信事業者のようにリスクを分散し、高信頼性を提供できるというわけだ。もちろん、運用を一元化でき、コスト面でも有利に働く。これによって、例えばメイン回線として広帯域の広域イーサネットを利用し、バックアップ回線用にはブロードバンド回線を組み合わせたIP-VPN、という構成にすることが可能だ(図3)。加えて、前述のようにアクセス回線の二重化も併用すれば、エンド・ツー・エンドでネットワークの信頼性を高められるだろう。
しかし、単に回線を二重化するだけでは「普段は利用しないバックアップ回線にコストを掛けたくない」という根本的なユーザーの要望には応えられない。最近では、回線二重化の考え方をさらに一歩進めて「バックアップ回線を積極的に活用しよう」というサービスも提供されている。そして第三の手法は、用途によって複数の回線を使い分け、障害時にはその1つをバックアップ回線として利用するというものだ。例えば、これによって基幹系(広域イーサネット)/情報系(インターネットVPN)、双方の回線を同時に運用し、ネットワークの信頼性を高めながら帯域を有効利用することが可能だ。もし障害で情報系のインターネットVPNがダウンしたとしても、メイン回線として瞬時に基幹系の広域イーサネットに切り替えられるので、最小限のダウンタイムで通信を維持できるというわけだ(図4)。
このように最近では、バックアップ回線だけを見てもさまざまな企業ニーズに照準を合わせた有用なサービスを、大手の通信事業者がメニューにそろえ始めている。次回は、NTTコミュニケーションズ、NTT東西、KDDI、ソフトバンクテレコムなど、各社で提供されているバックアップ回線サービスの代表的なメニューについて具体的に見ていこう。
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