中小小売業のためのPOSデータ活用【第2回】
POSデータによる店舗分析で「自分の店がどんな店か」を知る
分析専用ソフトを導入する前に、小売業者として最低限押さえておきたい分析手法がある。今回は店舗分析の基本と応用として、「ABC分析」「ACE分析」「相関分析」を解説する。
POSデータの「3つの基本分析」を理解する
本連載の第1回「店舗の利益構造から考えるPOSデータ活用法」では、5つの利益構造というPOSデータ活用の視点を紹介した。本稿からはまさにPOSデータ活用を意味する、POSデータの「分析」について解説していく。分析の深さによっては専用のソフトウェアを必要とする場合もあるが、本連載ではデータ分析の基本を紹介し、分析専用のソフトウェアを導入する前にユーザー自身で最低限の分析ができるようになることを目指したい。
POSシステムには設定された条件でデータをCSV形式でエクスポートする機能があるので、そのデータをMicrosoft Office Excel(以下、Excel)に取り込めば基本的な分析ができる。まずは以下、POSデータの3つの基本分析を知ってほしい。
POSデータの3つの基本分析
1.店舗分析(全体分析、サマリー分析)
売り上げなどの推移と傾向を合計値からつかむ
2.商品分析(個別分析、トランザクション分析)
扱っている商品がどのように売れているか、どのような傾向があるかを知る
3.顧客分析
どのような顧客で店舗が成り立っているのかを知る
※そのほかに、環境分析、競合分析などがある
本稿では店舗分析の手法を、次回で商品分析と顧客分析の手法を、それぞれの基本と応用を挙げなげら解説していく。なお、分析の視点として、1店舗の視点と複数店舗をまとめた企業(あるいは本社から)の視点があるが、前者ができればその集計である後者もできるため、まずは1店舗の視点で解説していこう。
店舗分析──「自分の店がどんな店か」を知る
初めに必ず行いたいのが店舗分析だ。これは、全体分析やサマリー分析という言い方をすることもある。基本的には小売業に携わる多くの方々が既に実行している。企業によって差があるとすれば、「どれだけ網羅的で、広範囲にできているか」ということだ。
この店舗分析の結果として目指すのは、「自分の店がどのような店かを語ることができること」である。自分の店の現状を語ることができれば、5つの利益構造の最大化、そして店舗経営の最適化につなげることができるからだ。
筆者は小売業の業務改善やマーケティングを支援することが度々あるが、そのような場で「あなたのお店はどんなお店ですか?」と尋ねると、実は半数ほどの店舗がすぐには回答できない。日常的にPOSデータを分析している店舗であれば、「当店はアルバイト含む従業員数が約50人で、フロアは1階と2階があり、1階では主に食料品を、2階では生活用品を販売しています。売り上げの8割は食料品で、特に当店では青果や魚などの生鮮品が主力です。16時から19時が最も売り上げが集中する時間帯で、曜日としては土曜・日曜と、水曜または木曜日が重要です。年間で見ると、○月と○月が……、競合店は……」などといった回答が出てくるだろう。
このように自分の店舗を店長のみならず、管理職からアルバイトに至るまで理解しているとしたら、何とも頼もしい限りだ。この「自分の店がどのような店かを語ることができる」、それをデータの裏付けをもって言い切れるということは、店舗分析が身に付いていることを意味する。それでは店舗分析の基本から進めていこう。
店舗分析の基本(1)
店舗分析で活用するPOSデータ項目の最も基本的な例として、例えば、店舗の月間および日ごとの「売上金額」「売上数量」「店舗顧客数」「利益額」などが挙げられる。いずれもPOSシステムから期間指定でCSV形式のデータをエクスポートできる。これら主要な項目を以下のような長いレンジで見ていく。
1.長期視点
週→月→3カ月(季節)→1年→3年の期間
一方、週の曜日または日という短いレンジでも並行して見ていく。
2.短期視点
(曜日別)→日→時間帯
2が直近の「翌日の売り上げをどうするか」というごく短期の視点だが、それを積み上げて1の長期視点につなげるという、長短合わせた視点が欠かせない。もし店舗分析をこれから始めるのなら、身近で最短の単位である時間帯や週単位から始めるといいだろう。すると、売上高や利益は「時間帯や曜日、平日、休日でどのように変動しているのか」「それは店舗顧客数に比例するのか」といった、基本的な見方が確立できる。
また、これを直近だけでなく、過去と比較して見ることが重要だ。例えば、現在が週の頭であれば、前週と前々週の売り上げや顧客数の推移などと合わせて比較をして見る。時間帯などでも同様だ。定期的にこの分析をしていくことで、「自分の店はこういう店だ」と語れる基本が身に付いていく。
店舗分析の基本(2):ABC分析
店舗分析の中でもよく使われる分析手法として、「ABC分析」がある。分析データ自体は細かいデータを扱うが、分析の視点としては店舗全体から落とし込んでいくので、ここでは店舗分析に位置付けて解説を進める。
ABC分析は、商品を売上金額などを基準に多い順に並べ、ランクをA、B、Cに分けて分類し、品ぞろえなどの参考にする手法だ。
A……売上金額の上位0~70%
B……次の70~90%
C……残りの10%
などに分けるのが一般的だが、アイテム数と売り上げ集中度などによって、ランクの分かれ目である70%のところを80%や60%に、同様に90%のところを95%や85%にすることもある。
図2の例では分かりやすくするために商品数を10個として売上金額順で見ているが、実際は店舗全体の商品や分野別に算出するため、もう少し複雑になる。この分析がデッドストックとチャンスロスの把握につながるのだ。ABC分析の結果を基に、売れない商品は店頭在庫を必要最小限に抑える、あるいは扱わないとし、売れる商品をさらに強化していくことになる。
もし現実にグレープフルーツの在庫を多く抱え、かつ売り場面積も大きい場合は、グレープフルーツをデッドストックの候補商品として、在庫数を少なく抑える、売り場面積を小さくするなどの検討と調整が必要になる。逆にいちごが欠品していたりする日や時間帯があれば、店舗内の既存商品でのチャンスロスになる。
なお、チャンスロスには、「競合店の売れ筋商品かつ、自店舗で取り扱ってない商品」という意味と、「自店舗での欠品」という2つの意味がある。後者は、先述のいちごの例で感覚を磨くことができる。さらに自店舗で取り扱っていないが競合店で売れている商品を見つけることで、チャンスロスの把握を完全にできるのだ。
ABC分析に対して、「単品を売上高順に見れば同じことが分かる」という意見もあるだろう。ところが店舗というのはゼロサムゲームと同じで、品ぞろえを考える際、物理的に商品を置けるスペースが限られているため、ある商品をたくさん置こうとすると、別の商品を減らすしかなく、チャンスを作る商品を増やすためにはデッドとなる商品を減らさなければならない。従って、有限の店舗面積におけるある商品の売り場面積のように、店全体の売り上げの中のその商品の位置付けという、「全体があってその商品のウエートがある」という発想が、単純な売上順に加えて必要になるのだ。
ここで分析の際に気を付けてほしいのが、対象となる期間の取り方だ。図2の例では2月の1週間としているが、時期が変われば野菜や果物などはまったく商品が変わってしまうし、週の途中から販売される商品もある。
ABC分析はこのように方法が理解できればExcelで実行できる。なお、ABCなどの基本分析ができている店舗では、売り上げが高い商品は売り場面積が大きい、注目を集める扱いをする、催事商品とするなど、店舗の中での扱いを特別にしている。従って、それを応用して競合店の該当商品をチェックし、自店での取り扱いの有無や地位を見ることで「チャンスロス」を洗い出すことも可能になるのだ。つまり、基本分析ができれば、競合店の取り組みや分析レベルも理解できるようになるということだ。
店舗分析の応用(1):ACE分析
ABC分析を定期的に実行することで、売れている商品と売り上げにおけるウエートを認識でき、品ぞろえの判断材料とすることができる。進んでいる店舗では、このABCをさらに細かく明確に分けることで、誰もが品ぞろえの判断をできるようにしている。それは「ABC」を「ABCDE」に5分割する「ACE分析」である。
図4を見ても分かるように、Aは誰が見ても売れている商品、Eは売れていない商品だ。青果品の場合は季節で主役が交代するが、日用品の場合はもっと明確になる。
このケースでは、ABC分析で分けたAをAとBに、BはそのままCとし、CをDとEに分けている。つまり、「上位に入っているB、下位にいるDの扱いを今後どうするか」ということを明確にするために、5つにランク分けしている。そのために、売り上げにおける商品単独の売り上げウエートを基準値に使う。
このように整理すると、「BをどうしたらAにできるか」「DはEに近いのか、それとも消費の関係性から最低限以上置くべきか」などを、より明確に考えることができる。
店舗分析の応用(2):相関分析
最後によく使われる店舗分析手法の1つとして「相関」を解説しておこう。冒頭の店舗分析の基本例で、「購入顧客数に売上高が比例するのか」ということを述べた。これを統計学的にいうと、購入顧客数が増えれば確実に売り上げが大きくなる場合を「正の相関」といい、逆に購入顧客数が増えれば売り上げが小さくなる場合を「負の相関」という(購入顧客数と売り上げでは、負の相関になることはほとんどない)。いずれにせよ、正または負の関係があると判断できる場合は、「相関関係がある」という。
この相関関係は「Aが増えるときはBも増えるのでは?」と何となく経験で想定していることを相関係数という基準値で判断できるので、覚えておくと頭がスッキリするだろう。
実際に分析をしてみるなら、Excelの分析ツールのアドインをインストールの上、[ツール]→[分析ツール]→[相関]を選び、対象となるデータの範囲をドラッグすることで実行できる(Excel 2003の場合)。少し大ざっぱに言えば、相関係数が0.70以上を正の相関関係がある、-0.70以下を負の相関関係があると認定する。
これを覚えておけば「比例するような気がする」と思ったときに、実際に計算をして確認可能だ。専門的に実行する場合は散布図を利用し、異常値などを除いた上で相関分析をするが、まずはキーワードとして覚えておいてほしい。
次回はPOSデータの3つの基本分析の残りの2つ、商品分析と顧客分析について解説する。
筆者紹介
西村泰洋
富士通株式会社 フィールド・イノベーション本部 第ニFI統括部
フィールド・イノベータ ディレクター
流通業・製造業顧客の業務改善やコンサルティングなどに従事。@ITでは「エクスプレス開発バイブル」「RFIDシステムプログラミングバイブル」などを執筆。著書に『RFID+IC タグシステム導入構築標準講座』(翔泳社/2006年11月)などがある。
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