仮想化リーダー企業に聞く2010年の戦略【第2回:シトリックス・システムズ】
FlexCastとXenAppを備えたXenDesktop 4で、デスクトップ仮想化の本格普及を目指す
“デスクトップイノベーション”を戦略に掲げるシトリックスは2010年、デスクトップ仮想化への動きをさらに加速する。同社は企業のデスクトップ環境をどう変革しようとしているのか。
デスクトップ仮想化技術の集大成、XenDesktop 4
シトリックス・システムズ・ジャパン(以下、シトリックス)は、デスクトップ仮想化製品の最新版として「Citrix XenDesktop 4」(以下、XenDesktop 4)を展開している。この製品こそ同社が20年間にわたって追求してきたデスクトップ仮想化技術の集大成であり、デスクトップイノベーション推進の中核を担うキーソリューションである。
シトリックス リードプロダクトマーケティングマネージャーの北瀬公彦氏は、「当社はデスクトップ仮想化分野において20年間、試行錯誤を重ねてきた。そして、デスクトップ仮想化の技術力については、他社を大きくリードしていると考えている」と自信を見せる。XenDesktop 4には、この技術力を結集した「FlexCastデリバリテクノロジ」(以下、FlexCast)を新たに搭載するとともに、アプリケーション仮想化ソリューション「Citrix XenApp」(以下、XenApp)の全機能を統合している。北瀬氏はこれらにより「あらゆるタイプの仮想デスクトップを提供することが可能となった。単一の統合ソリューションで、ユーザーのすべてのデスクトップ仮想化ニーズに応えられる製品はほかにはない」と説明する。
FlexCastによる6つの仮想デスクトップ配信手法
北瀬氏の言葉にもあるように、XenDesktop 4の最大の特長はFlexCastだ。これによって、「あらゆるユーザーのあらゆるデバイスに、あらゆるタイプの仮想デスクトップを配信できる」(北瀬氏)という。
具体的には、FlexCastでは6つの仮想デスクトップ配信手法を実現する。まず、特定のアプリケーションを使用するタスクワーカー向けの配信手法として、サーバベース型の「ホステッド共有デスクトップ」と「オンデマンドアプリケーションデリバリ」を提供する。ホステッド共有デスクトップは、複数のユーザーが1つのサーバのリソースを共有し、標準化されたデスクトップ画面がクライアント端末に配信される。一方、オンデマンドアプリケーションデリバリは、クライアント端末のデスクトップ画面に、サーバにホストされた仮想アプリケーションが配信される。
在宅勤務をする人やオフィスワーカー向けには、一般的な仮想PC型の「ホステッドVMベースデスクトップ(VDI)」を提供する。各ユーザーのデスクトップ環境はサーバ側の仮想マシンで稼働し、画面出力とデバイスから入力(操作)したデータのみをクライアント端末とやりとりする。クライアント端末を問わず、オフィスと完全に同じデスクトップ環境を利用できる。
3Dグラフィック処理など多大なリソースを必要とするパワーユーザーには、「ホステッドブレードPCデスクトップ」で対応する。1ユーザーにつき1台のブレードPCやワークステーションなどの物理マシンを割り当てるため、一般的なクライアント端末で優れた処理能力を実現する。
複雑な業務は行わないがクライアント端末の処理能力を必要とするユーザー(外注、派遣、教育機関)には「ローカルストリームドデスクトップ」がある。サーバからOSイメージをネットブート技術でクライアント端末に送信・展開し、端末上で実行する。常に初期状態のクライアント端末に配信するため、複数のユーザーが同一端末を利用する場合に最適な配信手法となっている。
最後の配信手法は、ノートPCをオフラインで使用するモバイルワーカー向けの「ローカルVMベースデスクトップ」だ。クライアントPCにインストールしたXenハイパーバイザー上でデスクトップイメージを展開し、複数の仮想マシンを同時に稼働させる。モバイル環境でのオフライン利用が可能で、オンライン状態になるとホスト側と自動的に同期する。
さらに、XenDesktop 4では、このFlexCastに加え、高品位なユーザーエクスペリエンスを提供する「Citrix HDX(High Definition eXperience)テクノロジ」を機能強化。これにより、仮想デスクトップの配信環境に関係なく、すべてのユーザーに最適な利用環境を実現するとともに、ほかのソリューションと比べて帯域使用量を最大で90%削減できるという。
北瀬氏は、「サーバ型、仮想PC型、物理マシン型、そしてこれらを組み合わせたデスクトップ配信手法を網羅し、幅広いユーザー層に向けて、各人の業務環境に最適な仮想デスクトップ環境を提供できる製品はXenDesktopだけ。これによって、今まで企業の一部組織で限定利用されていたデスクトップ仮想化を、全社レベルに広げることができる。企業全体に仮想デスクトップを適用することで、ITインフラの変革はもちろん、ワークスタイルそのものの変革を推進することが、デスクトップイノベーションの目指すところだ」と力を込める。
では、デスクトップイノベーションは、企業にとってどんなメリットをもたらすのだろうか。
企業のデスクトップ環境を簡素化
最も分かりやすいメリットは、企業のデスクトップ環境が簡素化されることだ。シトリックス マーケティング本部 統括本部長の打樋(うてび)洋一氏は次のように語る。
「例えば、XenDesktopのデスクトップ仮想化を活用することで、企業内で使われているフルスペックのクライアントPCを、すべてディスクレスのシンクライアント端末に置き換えることができる。これによって、全社レベルで省電力化、静音化、省スペース化を促進することが可能だ。また、モバイルユーザーにとっては、ノートPCを持ち歩かなくても、スマートフォンから仮想デスクトップを利用できるほか、ネットワークに接続さえすれば、いつでもどこからでもオフィスと同じデスクトップ環境で仕事を進められ、生産性向上にもつながる」
さらに、企業内のクライアントPCがすべて仮想デスクトップ環境になることは、システム管理者にとっても大きなメリットがある。
現在、クライアントPCの増加に伴い、アプリケーションのインストールやセキュリティパッチ対応、障害対策といった管理負荷の増大に頭を悩ませているシステム管理者は少なくない。しかし、デスクトップ環境がすべて仮想化され、データセンターで一元管理できるようになれば、システム管理者は、クライアントPCの数にかかわらず、短時間でアプリケーションのインストールやセキュリティパッチに対応できる。また、障害が発生した場合もイメージ化しておいた仮想デスクトップ環境を展開すれば、瞬時に復旧することが可能だ。
そして、シトリックスが大きなビジネスチャンスとみているのが2014年4月、Windows XPの延長サポートが終了するタイミングである。
この背景について打樋氏は、「現在稼働している膨大な数のWindows XPクライアントを、物理的にすべて入れ替えるのは多大な労力とコストが必要になる。その解決策として期待されているがデスクトップ仮想化だ。たとえ何万台というクライアントPCがあっても、短時間でOSをアップグレードできる。さらに、メモリの追加やディスクの増設なども、仮想化領域で柔軟に対応でき、ハードウェアを買い替える必要もない」と述べている。
なお、シトリックスでは、デスクトップ製品だけでなく、サーバ製品の「XenServer」やネットワーク製品の「NetScaler」もラインアップしている。
これら製品の位置付けについては、「XenServer、NetScalerともに、XenDesktopを中核にしたデスクトップ仮想化戦略を推進するための基盤となるソリューションとして位置付けている。特に、XenServerは、Linux系サーバの仮想化において高いパフォーマンスを発揮するため、サービスプロバイダーを中心に導入が拡大している」(北瀬氏)という。
2010年4月26日には、マイクロソフトと共同でVDI利用促進プログラムを展開することを発表し、デスクトップイノベーション実現に向けた戦略を加速しているシトリックス。打樋氏は、「まだ、デスクトップイノベーションの入り口に立ったところ。2010年は、デスクトップ仮想化の真のメリットを積極的に訴え、本格普及に向けた活動に力を注いでいく」と意欲を見せている。
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