デスクトップ仮想化って何?(後編)
どれを選ぶか 3大ベンダーのデスクトップ仮想化技術比較
世界3大仮想化ベンダーであるヴイエムウェア、シトリックス、マイクロソフト各社のデスクトップ仮想化ソリューションの特長を見ながら、選択に役立つポイントについて考えてみたい。
本企画の前編「デスクトップ仮想化がもたらす柔軟で堅固なIT基盤」では、既に10年以上も昔から提案されてきた、シンクライアントに代表されるセンター集約型のデスクトップソリューションとデスクトップ仮想化技術の関係について説明した。デスクトップ仮想化技術は、ユーザーが業務の生産性向上策として注目し続けてきたデスクトップソリューションを一気に身近なものにしたのである。
後編では、デスクトップ仮想化ソリューションの提供を積極的に進めている代表的な3つのベンダーを取り上げ、それぞれの特長について考えていく。
ヴイエムウェアの原点回帰「VMware View」
最初に紹介するのは、サーバ仮想化を強みとするイメージの強いヴイエムウェア。ここ最近同社はデスクトップ仮想化製品「VMware View」のプロモーションに力を入れている。
VMware Viewは、通常のクライアントPCのほか、シンクライアント端末、スマートフォンからでも利用でき、「VMware View Manager」を介してVMware vSphere 4上で集中管理されている社員個人の仮想デスクトップにアクセスする。VMware View Managerは単一の制御ポイントから仮想デスクトップの管理やプロビジョニング、認証を行う管理ツールだ。VMware Viewは構造が非常にシンプルなことが特長で、Active Directoryでの認証とともに、仮想環境を管理する「VMware vCenter」とセットで用いられることが多い。
デスクトップ配信用に設計されたプロトコル「PCoIP」
VMware Viewのキーテクノロジーは主に3つある。1つがイメージ管理とストレージ最適化を支援する「VMware View Composer」。マスターデータ(全員共通のアプリケーションや仕様)と差分データ(個人の好みの環境)を別管理するリンククローン方式を活用して、ディスクスペースを節約することでストレージコストを大幅に削減するとともに、マスター更新による一括構成変更が可能。スケールアウト型で無駄な投資を抑えながら拡張でき、デスクトップを用意するのも容易なため準備作業時間も短縮できる。
2つ目が、アプリケーションの実行環境をカプセル化してOSから分離する「VMware ThinApp」。ユーザーがOSを更新した場合でも、旧OSでしか動作しなかったアプリケーションを更新後のOS上で、インストールせずに稼働させることができる機能だ。OSとアプリケーションのイメージ管理作業を独立させ、OS移行に伴うアプリケーションの移行工数を大幅に削減できるという。
3つ目が、デスクトップ配信用に設計されたプロトコル「PCoIP」(PC over IP)のサポート。VMware View 4で強化されたデスクトップの拡張性に対応するとともに、RDP(Remote Desktop Protocol)に加えてPCoIPも選択可能になったことで、仮想デスクトップ上でスムーズな動画配信や3Dグラフィックスの高品質な転送が可能になり、ネットワーク帯域も最適化された。
同社はサーバ仮想化の技術的基盤と実績を土台に、信頼性のあるインフラとシンプルな管理手法に加え、コストダウンやパフォーマンスの最適化といったメリットを享受できるのがVMware Viewの最大の強みといえるだろう。
ヴイエムウェアのデスクトップスペシャリストである橋本洋氏は、「コールセンターでの利用や、同じデスクトップを複数のユーザーで共有する職場、複数のリッチアプリケーションを同時に利用する設計開発部門など、すべてのユーザー層に対してVMware Viewは共通の基盤を提供する」と語る。
シトリックス「Citrix XenDesktop」のユニークさとは
一方、Windowsのターミナルサービスを利用するためのCitrix MetaFrameやCitrix Presentation Serverなど、サーバベースコンピューティング(SBC)方式のシンクライアントで一世を風靡(ふうび)したシトリックス・システムズは、現在、「Citrix XenDesktop 4」(以下、XenDesktop)をもって、2010年をデスクトップ仮想化元年と位置付けようと意気込む。アプリケーション仮想化の「Citrix XenApp」(以下XenApp)と組み合わせることで、短期間かつ低コストに仮想デスクトップ環境を構築できるようにした。
XenDesktopのユニークさを象徴する機能は主に4つ挙げられる。その1つが、「Citrix HDX(High Definition eXperience)テクノロジ」だ。ネットワーク遅延の高いWANを含むあらゆる接続を介して、シンクライアントが不得意としてきた音声、動画、3Dグラフィックスなどをサポートするための技術である。高圧縮を可能にする独自プロトコルの「Citrix ICA(Independent Computing Architecture)仮想デリバリープロトコル」や、最適化/アクセラレーション機能などを組み合わせることで、ネットワークに負荷を掛けずにスムーズな画面転送を実現する。
2つ目が、「FlexCastデリバリテクノロジ」(以下、FlexCast)。シンクライアントがこれまでカバーできなかった目的や負荷の異なる使い方に対し、FlexCastでは1台のサーバで最大500ユーザーのサポートや、複数のユーザーが1台の端末を共有するようなヘビーユース、1つのデスクトップに1台のブレードPCをホスティングする場合など、バラエティに富んだ使い方を網羅することでユーザーの多様性をカバーする。
iTunes感覚でアプリを選べるDazzle
3つ目がプロビジョニングサービス。従来は100人のユーザーがいれば100人分の仮想デスクトップイメージを作って保存していたが、格納するためのストレージコストの肥大が問題となっていた。プロビジョニングサービスではデスクトップのシングルマスターイメージを複数ユーザーで共有し、オンデマンドで必要なときに複数のユーザーに一括配信することでデータ量を減らし、ストレージの初期コストを圧縮することができる。
そして4つ目は、ユーザーインタフェース「Citrix Dazzle」(ダズル:以下、Dazzle)と、仮想デスクトップにアクセスするためのクライアントソフト「Citrix Receiver」(以下、Receiver)。Dazzleは企業アプリケーション専用のセルフサービス型ストアフロントで、あたかもiTunesから音楽を取り込むような操作感覚で、XenAppの管理下にあるビジネスアプリケーションやデスクトップ、コンテンツをセルフサービスで選択・利用できるユニークなツールだ。
Receiverは、自宅のPCや移動中のiPhoneなど任意のデバイスからIT部門が配信する仮想デスクトップ環境や業務アプリケーションを安全かつ自由に利用できるようにするクライアントソフトである。
システムの上流にCitrix XenDesktopを置き、各デバイスにDazzleとReceiverを組み合わせることで、より高度な仮想デスクトップコンピューティングを、システム管理者とユーザーの双方が負担なく実現できるようになるという。
マイクロソフトの壮大なクライアント仮想化体系
マイクロソフトの定義はほかと少々異なる。同社はまず、クライアントの仮想化という観点で大きくくくり、その中にデスクトップ仮想化とアプリケーション仮想化のライセンス体系を考えている。また、デスクトップ仮想化の中には、シンクライアントに加えてリッチクライアントも含めて定義する。
機動性や生産性を犠牲にしてもセキュリティやコンプライアンスの強化を重視する用途に向くシンクライアント方式では、Hyper-V上で不特定のユーザーがデスクトップOSをリモートで動かすためのライセンス「Windows Virtual Enterprise Centralized Desktop」(VECD)を運用するVDI(Virtual Desktop Infrastructure)方式が主流になる。
また、パフォーマンスを重視して生産性を高めたいユーザーのためのリッチクライアントでは、「Microsoft Enterprise Desktop Virtualization」(MED-V)を活用する。このMED-V はクライアント向け仮想デスクトップ技術「Virtual PC」のアーキテクチャをベースとし、アプリケーションの集中管理と配布を自動化する。
さらに、アプリケーションの仮想化を実現するのが、仮想化されたアプリケーションごとに独立した実行環境を提供し、インストール、アップデート、アンインストールまで一元管理する「Microsoft Application Virtualization 」(App-V)だ。仮想アプリケーションの作成・配信・実行の3つのコンポーネントで構成され、アプリケーションをパッケージで保存し登録するとともに、ストリーミングで各端末にイメージを配信する。
デスクトップ仮想化を進めるためのデスクトップ最適化
マイクロソフトはこのようなデスクトップ仮想化戦略を推し進めるに当たり、「Windows Optimized Desktop」(デスクトップの最適化)を提唱している。これからのクライアントデスクトップは、場所を問わない高い生産性を維持することが求められるとともに、アプリケーションを管理しデータを確実にバックアップするために中央で集中的に実行する必要があるという考え方だ。また、時代に合った事業を迅速に展開するためにナレッジワーカーやタスクワーカーなどの多様な人材活用と、突発的事態における業務継続への対応を求められることも前提とする。そのような「変化に強い働き方」を支えるのがWindows Optimized Desktopであり、その技術の中核になるのがデスクトップ仮想化になるという。
また、Windows Server 2008 R2のSP版ではVDIに関する機能強化が2つ行われる予定だ。その1つが、2008年1月に買収を完了したCalista Technologiesのリモートデスクトップアクセラレーション技術の「RemoteFX」。これは、Windows 7 SP1クライアント専用のLAN対応RDP用アクセラレータである。3D CADや動画などの描画処理をサーバ側ではなくクライアント側で実施することで、画面をストレスなく転送できる技術となる。提携を結ぶシトリックスも自社のCitrix HDXに加えてRemoteFXもサポートしていく計画だという。
そして2つ目が、Windows Server 2008 R2のHyper-V上で稼働中の仮想マシンのメモリ負荷を調整してダイナミックに割り当てる「Dynamic Memory」。今後、サーバリソースを効率的に活用する機能として期待されている。
以上のように、ベンダー各社のデスクトップ仮想化に対する立ち位置はそれぞれに異なるものの、最も期待できるソリューションの1つと位置付け、その力の入れようは並大抵のものではないようだ。今後、技術やサービスがどのように強化されるか非常に楽しみな分野でもある。
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