アドレス枯渇問題の解決と現状
IPv4/IPv6アドレス変換アプローチを検討する──IPv4からIPv6への移行対策とは
IPv4アドレスの枯渇が迫る中、これまでに試みられてきたIPv4とIPv6の橋渡しするソリューションを2回にわたって紹介する。
パブリックなIPv4アドレス空間は2年以内に確実に枯渇するはずだ。奇跡が起こり、インターネットを草創期から使ってきた組織がクラスAネットワークをパブリックプールに返却すれば、話は別だろう。だがそれでも、この避けられない枯渇が数カ月か数年、先延ばしされるにすぎない。では、IPv4からIPv6への移行はどうなっているのか。
これまでの所、インターネットのエコシステム全体が、IPv4アドレスの枯渇という差し迫った危機を見事に無視している。大手キャリアによるIPv6サービスの展開は、需要がないため、なかなか進んでいない。ローエンドの顧客宅内機器(CPE)やモバイルデバイスのメーカーは、IPv6が存在しないかのようなふりをしている(例えば、IPv6をサポートしているUMTS方式のモバイルデバイスは、Symbianベースの携帯電話しかない)。
また、ほとんどのコンテンツプロバイダーは、IPv6が何かも知らないだろう。もちろん、Googleなど大手のコンテンツプロバイダーは例外だ。訪問者を1人でも逃さないために、IPv6への移行開始をはじめ、Googleはあらゆる必要な措置を早急に講じるだろう。
今われわれが直面しているのは、次のような厳しい現実だ。
- 数年後には、大きなパブリックIPv4アドレス空間を新規に取得できなくなる
- 新しいデバイス(とユーザー)は、インターネット接続にIPv6の使用が必須となる
- ロングテール戦略(多種類のユニークなニッチアイテムを比較的少量ずつ販売していく)の下で長年提供されてきたコンテンツは、新規ユーザーからは直接アクセスできなくなる
関連業界の対応が現状のままなら、Comcastのようなサービスプロバイダーは、将来を見据えてIPv6に積極的に投資し、IPv6サービスの展開に必要な規格と機器の開発に向けてベンダーと協力しても、依然としてIPv4サーバへのアクセスニーズに対応しなければならない。パブリックなIPv4アドレスの枯渇が近づいているのでさえなければ、デュアルスタック運用(IPv4とIPv6を並行して稼働させる)が理想的な解決策になるだろうが、もちろん、この前提は成り立たない。
IPv4アドレスの枯渇が迫る厄介な状況にありながら、IT業界の大部分がまったく関心を示さないことから、ネットワーキングの専門家は、NAT(Network Address Translation)を採用するようになった。このツールは15年くらい前から、IPv4アドレスの延命に貢献してきた。しかし、彼らはその後、IPv6への移行過程で必要となるIPv4/IPv6アドレス変換の単一の実用的なアプローチについて合意できなかった。以下、今回と次回の2回にわたってこれまでのアプローチを見ていこう。
IPv4とIPv6を橋渡しする初期ソリューション
IPv4の世界とIPv6の世界を橋渡しする必要性は10年以上前から認識されていた。この必要性から、IETF(Internet Engineering Task Force)でIPv4パケットとIPv6パケットのフォーマットを相互変換する技術であるSIIT(Stateless IP/ICMP Translation Algorithm)とDNSサーバと連携してIPv4ネットワークとIPv6ネットワークを相互接続するNAT-PT(Network Address Translation-Protocol Translation)が策定され、それぞれ「RFC 2765」「RFC 2766」として標準化された。SIITは、各IPv6アドレスを固有のIPv4アドレスに変換するが、これは明らかに、IPv4アドレス枯渇問題の解決には役立たない。
NAT-PTでは多くの問題解決が図られたが、結局使い物にならなかった。NAT-PTのRFCは2007年7月にRFC 4966で廃止され、Historical RFC(過去の記録として残すべき情報に関するドキュメント)となった。だが、いまだにNAT-PTは、Juniper NetScreenシリーズやCisco IOS搭載機器などをはじめ、実運用レベルの機器に実装されている唯一のIPv6/IPv4変換メカニズムだ(ただし、Cisco IOS上のNAT-PTは最近、パフォーマンスにやや難がある)。
本稿筆者のイヴァン・ペペルニャック氏はCCIE資格保持者(No. 1354)で、ネットワーク業界25年のベテラン。大手サービスプロバイダーのネットワークやエンタープライズWANおよびLANの設計、インストール、トラブルシューティング、運用の経験を10年以上持つ。現在、NIL Data Communicationsの最高技術アドバイザーを務めており、先進的なIPネットワークとWeb技術に注力している。著書として『MPLS and VPN Architectures』や『EIGRP Network Design Solutions』など。
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