2011年、企業のIT投資はどう動くのか
市場調査から探る2011年データセンタートレンド
2011年、データセンター関連市場はどうなるのか? 主要調査会社が2010年下半期以降に発表した市場調査や動向予測などから2011年の方向性を探る。
本稿では主要な調査会社が2010年に発表した、2011年の市場動向予測や企業のIT投資に関する調査結果から、ストレージやサーバなどのデータセンター関連分野のトピックを紹介する。
戦略的技術としてのSSD Gartner
米国の調査会社Gartnerは2010年10月、企業や組織にとって戦略的な重要性を持つと考えられるテクノロジーのトップ10を発表した。その中では「クラウドコンピューティング」「モバイルアプリケーションおよびメディアタブレット」「ソーシャルコミュニケーションおよびコラボレーション」などと並んで、「ストレージクラスメモリ」が挙げられている。
これは、コンシューマー製品などで採用が進んでいるフラッシュメモリ「Solid State Drive」(以下、SSD)の企業利用がさらに進むことを示しているだろう。SSDは電源の供給なしにデータの保持や書き換えが可能で、企業向けのストレージにおいても採用が広がっている。特に、企業内データを、可用性とパフォーマンスなどの要求に応じてストレージ装置に階層化して管理する「ストレージ階層化」に利用することで、ストレージ環境のコストを削減するメリットがある。
製品分野別の市場予測を発表 IDCジャパン
IDCジャパンは2010年12月、「2011年国内IT市場の主要10項目」を発表した。その中で「2011年国内IT市場全体は今後緩やかな拡大基調になるが、2011年は一時的に減速し、前年からほぼ横ばいとなる」と予測している。また、同社は国内データセンター関連の製品別市場予測を発表している。その中から注目トピックを紹介する。
ディスクストレージシステムにおけるファイルベースの容量がブロックベースを上回る
IDCジャパンが2010年10月に発表した「国内ファイルストレージ需要動向」によると、国内のディスクストレージシステム容量に占めるファイルベース容量はブロックベース容量を上回る成長率で増加し、2011年にはブロックベースを上回るという。また同社では「企業が保有するファイルデータの増加とともに、ファイル仮想化や重複排除、データの自動仕分け(自動化)といったファイルデータを効率的に管理する技術への需要増が期待される」とみている。
データセンター向けサーバ市場は伸長
IDCジャパンでは、国内サーバ市場全体の2009年~2014年における5年間の年間平均成長率(CAGR)をマイナス成長と分析している。そんな中、サービス事業者が外部サービス用に購入する「データセンター向けサーバ」市場については、外部サービス利用企業の増加が市場拡大に寄与することでプラス成長を予測(「国内データセンター向けサーバ市場予測」2010年10月発表)。また、同市場については2011年も出荷台数、出荷金額共に増加し、2014年の市場規模は1169億円になると予測している(年間平均成長率2.6%)。さらに「x86サーバが国内データセンター向けの需要をけん引する」と同社はみている。
クラウドの利用拡大がアウトソーシングサービスをけん引
企業の情報システムをデータセンターで監視/運用する「データセンターアウトソーシング」サービスについて、IDCジャパンでは2010年10月に「国内データセンターアウトソーシング市場予測」を発表し、「2010年は前年比成長率5.3%、市場規模は8333億円まで拡大する」と見込んでいる。また、「今後2012年にかけて首都圏や首都圏郊外を中心にデータセンターの新設が継続することを受け、供給過剰による価格競争が激化し、成長が鈍化する可能性がある」と分析している。さらに今後はクラウドサービスの適用範囲を拡大するユーザーが増加しており、それが同市場の拡大をけん引すると予測。特に、共有ホスティング市場の成長率が高水準になるとみている。
2011年度のトレンドは「IT基盤の構造改革」 ITR
アイ・ティー・アール(ITR)は2010年11月、国内企業3000社を対象にしたIT投資動向調査を発表した。この調査では、企業のIT予算に関する2010年度(2010年4月~2011年3月)の実績と、2011年度(2011年4月~2012年3月)の見通しについて回答を求めた(有効回答:446社)。
ITRの発表によると、2010年度のIT予算の増減実績について、「増額した」と回答した企業が24.9%と2009年度から8ポイント以上上昇し、「減額した」とする企業は26.6%となり、2009年度の調査から20ポイント近く下降しているという。この結果を受けて、同社では「企業の投資意欲は着実に回復している」とみている。また、2011年度の増減見通しについては、IT予算の増額を見込む企業の割合が29.3%と2010年度よりもさらに上昇していることから「楽観的な見方をしている企業が増加している」という。しかし、わずかながら減額企業の方が上回っているため、「かつてのような成長路線に戻ったとまでは言い切れない」としている。
さらに同社は、主要なIT動向20項目に関する重要度指数と実施率の経年推移も紹介している。それによると、ここ数年重要度指数がトップだった「日本版SOX法などの法令対策/内部統制の強化」を押さえて、2011年度は「IT基盤の統合・再構築」と「仮想化技術の導入」が上位2つを占めている。IT基盤の統合・再構築の実施率は現在の22.3%から、2013年度までに72.1%に高まる予定。一方、仮想化技術の導入は、現時点でも42.6%と高いにもかかわらず、重要度指数が前年の調査の数値(2.9)も上回る3.2となり、同社では「企業において不可欠な技術となりつつある」と分析している。
上記の調査結果について、ITRのシニア・アナリスト舘野真人氏は「IT基盤の構造改革につながる施策が上位を占めたのが2011年度の調査の特徴である」とし、「経済不況への対策としてのコスト削減から、中長期的な視点におけるIT基盤のスリム化やガバナンス強化に取り組む企業が増加する」とコメントしている。
「企業ストレージ」関連コンテンツ
ここまで幾つかの市場調査や動向予測を紹介してきた。それらを基に2011年の方向性をまとめてみた。
2011年データセンター分野トレンド まとめ
- 企業のストレージ環境におけるSSDの採用が進む
- 企業が保有するファイルデータの増加に伴い、そのデータを効率的に管理できる技術への需要が高まる
- ベースの外部サービス市場振興に伴い、データセンターサーバの需要が拡大
- クラウドの利用拡大により、共有ホスティングを中心にアウトソーシングサービスの需要が進む
- 中長期的な戦略として、IT基盤の統合や再構築に取り組む企業が増える
TechTargetジャパン「データセンター」では2011年もストレージ、サーバを中心にデータセンター関連の情報を読者に提供していく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
9
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
10
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー