クラウドERP製品カタログ【第1回】富士通
「GLOVIA smart きらら」はクラウドERP市場で輝けるか
ERPの新たな選択肢として浮上してきたクラウドERPに企業が注目している。その中で富士通の「GLOVIA smart 会計 きらら」は「本当の稼働に耐える」ことを強調する。
SaaSやクラウドコンピューティングを活用したアプリケーションというと、これまではCRMやSFAなどといった、情報系システムの機能を提供するものが多く、基幹系システムの機能をSaaSやクラウドで提供するという発想はあまり見られなかった。
しかしここ1年ぐらいの間で、会計・財務分野を中心にERPパッケージや業務アプリケーションの機能をSaaSやクラウドで提供するサービスが、各ベンダーから提供されるようになってきた。本稿で紹介する、富士通の「GLOVIA smart 会計 きらら」(以下、きらら)も、そうした先駆的な製品の1つだ。
中堅・中小企業にクラウドERPを提供
富士通は1970年代から、会計業務を中心とした、企業における共通基幹業務を支援するアプリケーションを広く提供してきた。現在同社は、ERP・業務アプリケーションのパッケージソリューションを「GLOVIA」ブランドとして展開しており、大手企業向けの「GLOVIA/SUMMIT」と、中堅企業向けの「GLOVIA smart」「GLOVIA-BP」の製品ラインをそろえる。
2010年10月にリリースされたきららは、このラインアップに新たに加わる「GLOVIA smart きらら」という製品ラインの「第1弾製品」という位置付けだ。富士通マーケティング ソリューション事業本部 GLOVIAビジネス統括部 共通業務ソリューション部の和田幸子氏は、同社がきららを開発した背景について次のように説明する。
「きららはGLOVIA smartのサブブランドという位置付けだが、想定するユーザーは年商100億円以下の中堅・中小企業。富士通ではこれまで、この規模の企業にフィットする会計パッケージ製品を持っていなかったが、きららでこうした企業にもソリューションを提供できるようになった」
先ほど紹介したように、同社は会計パッケージ分野で長い実績を持っており、特に中堅企業向け製品の「GLOVIA smart」は、中堅・中小企業向けのERP市場で高いシェアを誇る。こうした実績の積み重ねの中で培われた豊富なノウハウが、きららにも引き継がれているという。
しかし、富士通マーケティング ソリューション事業本部 GLOVIAビジネス統括部 プロモーション部 プロジェクト部長の梶山 亮氏は、同製品が従来の会計パッケージ製品の単なる焼き直しではないことを強調する。
「きららでは、中小企業向けに最適化した機能や使い勝手、あるいは導入の容易さなどを新たに実現している。さらに価格帯も、中小企業が導入しやすいレンジに設定している。富士通が培ってきた会計パッケージのノウハウを継承しつつも、全く新たに設計・開発された製品だ」
SaaSとしてのメリットを追求
冒頭でも紹介した通り、きららの最大の特徴は、アプリケーションの機能がSaaSで提供される点にある。同製品のサーバ側モジュールは全て富士通が運営するデータセンターで運用される。ユーザーは、インターネット経由でデータセンターに接続し、アプリケーションの機能をPC上で利用する。こうした利用形態のメリットを、和田氏は次のように説明する。
「きららの特徴は3つ。1つ目は、自社でサーバのセットアップが不要なので、手間を掛けずに迅速に導入し、利用を開始できる点。2つ目が必要な分のライセンスのみを購入すれば済む点。必要最小限の規模でスモールスタートしつつ、将来的な業務拡大や追加ニーズにも柔軟に対応できる。そして3つ目が、SaaSでありながら、既存の社内システムや他のクラウドサービスともデータ連携できる点」
1つ目の「迅速に利用を開始できる」というメリットに関しては、同製品特有のユーザーインタフェースの仕様も寄与しているという。SaaSやクラウドというと、クライアント側のインタフェースはブラウザ画面だと思い込みがちだが、同製品のユーザーインタフェースはマイクロソフトのスマートクライアント技術を採用しており、リッチな機能と使い勝手を実現している。
例えば、伝票入力画面での入力項目間を移動する際には、[Tab]キーではなく[Enter]キーを利用できる。また、ファンクションキーを模したボタンも画面下に配置される。昔ながらの伝統的な会計アプリケーションの使い勝手が、そのまま再現されているわけだ。
「やはりSaaS型、クラウド型として製品を顧客に紹介すると、『使い勝手や操作性が悪いのではないか』と指摘されることも多い。しかし、実際に製品のデモを行うと、伝票入力の操作があまりにスムーズなので驚かれる」(和田氏)
また、3つ目のデータ連携機能に関しては、企業グループ内での導入の際にもメリットがあるという。
「例えば、きららが持つ会計データを、GLOVIA smartやGLOVIA/SUMMITと連携させることも技術的には可能だ。従って、企業グループの本社でGLOVIA smartやGLOVIA/SUMMITを導入する一方、子会社にはきららを一気に展開する、というような利用形態が可能になる。事実、既にそういった案件の引き合いも来ている」(和田氏)
信頼性の高いデータセンターで運用
また、きららはSaaSだけではなく、オンプレミスでも提供されている。その理由について、梶山氏は次のように述べる。
「小規模な企業であっても、やはり会計データは社内で持ちたいという顧客もいると考えられる。そうした企業向けに、今後もGLOVIA smart きららの製品ラインアップではSaaSと併せてオンプレミスの提供も行っていくつもりだ」
ただし、やはり「導入のしやすさ」「運用の手間が掛からない」といったSaaSやクラウドの特徴は、小規模の企業にとって特にメリットが大きいだろう。また、サービス品質やセキュリティなど、従来SaaSやクラウドで懸念されていた点も、近年では払拭されつつあると梶山氏は言う。
「かつてはネットワーク性能や、プロバイダーのサービスレベルにばらつきがあり、アプリケーションの機能を満足に使えないこともあったが、近年ではインフラの整備が進み、かつてほどこうしたことを心配する必要がなくなってきた。また、データを外部に委ねることに対して、セキュリティの観点から懸念を示す企業もまだ少なくないが、逆に社内システムの方がセキュリティ対策が脆弱だったり、あるいはインシデントが発生した際のリカバリ体制も万全ではなかったりと、『社内にデータを置くことのリスク』も徐々に認知され始めている」(梶山氏)
また最近では東日本大震災の影響から、災害時の事業継続の観点からクラウドに着目する企業も増えてきているという。
会計以外のアプリケーションも追加予定
今後同社では、きららの機能強化を随時行っていく予定だという。法改正対応に伴うバージョンアップなどは無償で提供される。また、サーバモジュールは全て富士通のデータセンターで運用されているため、ユーザー側ではバージョンアップに伴う作業は一切必要ない。これも、SaaSならではの強みだといえよう。
先に説明した通り、GLOVIA smart 会計 きららは「GLOVIA smart きらら」という新ブランドの第1弾製品という位置付けになっている。従って今後は、同ブランドに会計以外の分野の業務アプリケーションを追加していく予定もあるという。
「例えば給与計算の業務は、業容を問わずその内容はどの企業でもほぼ同じで、GLOVIA smart きららがターゲットとする中小企業ユーザーにとってはシステム化する意義が大きいと思う。従って、まずはこの領域から製品化できないかと現在考えている」(梶山氏)
今後登場する製品ラインアップに関しても、SaaSとしての提供形態が用意される予定だというが、SaaSやクラウドのサービスであっても、きららと同様にオンプレミス版と遜色ない機能を提供していくと梶山氏は述べる。
「他社で『SaaS型・クラウド型の業務アプリケーション』と言っている製品の中には、従来のオンプレミス製品の拡販ツールのような位置付けのものもあるように見える。そうした製品が、果たして本当にユーザーの本格運用に耐えられるのかどうか、疑問だ。しかしきららは、オンプレミス版と同じく、『本当の稼働』に耐えられるよう開発・運用されており、単にパッケージ製品をクラウドプラットフォーム上に載せたようなサービスとは異なる。もちろん、今後提供していくSaaS型サービスに関しても、こうしたポリシーにのっとって開発していく」
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