教えて経理部長!【第6回】
日々発生する会計伝票、どこでどう処理する?
日々発生する会計伝票をどこでどう処理するかは単純だが深い問題だ。本社集中が効率的なのか、現場での分散入力の方が手間は掛からないのか。それぞれのメリットを説明する。
質問
当社では、業務改善の一環として、会計伝票の処理プロセス全般を見直すことになりました。会計伝票は、現状、各部署で入力しています。そのため月末近くの現場の事務負担が大きく、改善を求める声が出ていました。情報システム部では、今後は本社の経理部門に作業者を集め、会計伝票の入力を本社で集中して行うことで効率化を図ることを提案しました。しかし、経理部は、この提案に難色を示しています。現場分散入力と本社集中入力、どちらを選択するのがよいでしょうか?
回答 会計伝票を会計システムに登録するプロセスに関して、本社集中入力がよいか、現場分散入力がよいかはよく議論されるテーマである。このテーマは、会社の組織構造や人員配置、使用している会計システムの機能などによって結論は変わってくる。よって、以下は一般論と捉えてほしい。
一般に、会計伝票の本社集中入力は、各部署にいる入力担当者を本社に集中させることで作業の標準化を図ることができ、効率アップが期待できる。入力担当者の教育コストも低減できるであろう。
本社集中入力のマイナス面
しかし本社集中入力にすることで非効率が発生する場合がある。それは処理を行うために現場の専門知識や情報が必要な伝票を、本社集中にする場合だ。例えば、地方によって支払い形態が違う販売奨励金の伝票や、取引条件が複雑で1件1件の処理が異なる取引伝票を本社に集中させると、伝票入力時に現場への問い合わせ作業が頻繁に発生することになる。そういった問い合わせ作業自体は何ら価値を生まず、非効率によるコスト増につながるのみである。
経理部では、そういった本社集中入力のマイナス面を経験的に知っているので質問にある提案に慎重になっていると考えられる。
伝票承認について整理する
本社集中入力を考えるときには、伝票の承認についても整理しておく必要がある。本社集中入力には、伝票起票の元となる行為の承認まで経理部が行うということではない。職務分掌規定に従って、適切な承認者、通常は各部署の管理者が行為を承認する。経理部は、承認済みの伝票であることを確認して入力する責任はあるが、行為に対する責任はない。経理部の責任は、本来的には会計的に正しい計上処理を行うことである。だが、それが理解されないと責任の範囲が不明確になる。これを危惧して経理部が本社集中入力に慎重になっているケースもある。
伝票承認を明確にした上で、重要な伝票、すなわち金額が大きい伝票や内容的にリスクがある伝票については、各部署で起票したものを経理部門がチェックすることで相互けん制を機能させる仕組みにするとよいだろう。逆に、不正が発生する可能性の少ない伝票や、間違いがあっても影響の少ない小額の伝票は、思い切って経理部でのチェックを省略して効率重視で処理を進めることもできる。
最適な組み合わせを考える
一方で取引に関する専門知識や現場情報が不要な伝票、言い換えると、単に書類を見て入力処理するだけの伝票は、本社集中入力にすることで効率化につながる。例えば、定型のフォーマットで申請される交通費や交際費、書籍購入費などの諸経費の入力処理などが典型である。
いずれにしても、現場分散入力か本社集中入力のいずれかの二者択一という問題ではない。会社の伝票処理のプロセスをよく分析して、最適な組み合わせを考えることが重要である。
さらなる効率化に向けて
伝票を本社集中入力するために書類のフォーマットを統一したり、プロセスを標準化する作業が進むと、次のステップとして、伝票処理のプロセスごとシステム化したり、さらにはプロセスごとアウトソーシングすること(いわゆるビジネスプロセスアウトソーシング:BPO)も効率化のための検討対象となる。そういった可能性も含めて、伝票処理プロセスの改善を検討してほしい。
五島伸二(ごしましんじ)
アドバ・コンサルティング株式会社 代表取締役 公認会計士・ITストラテジスト
監査法人トーマツにて会計監査、IPO支援、マネジメントコンサルティングに従事。トーマツ退所後は多数のシステム開発プロジェクトやERP導入プロジェクトに参画し基幹システム構築を行う。その後、上場会社の経理部長をへて、2010年3月にアドバ・コンサルティング株式会社を設立。それまでの経験を生かし、会計とITの専門家としてシステム開発や業務改善コンサルティングに取り組んでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
9
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー