教えて経理部長!【第2回】
経理部から的確にERP要件を引き出すポイントは「仕訳で話す」
ERPシステムの選定、導入で欠かせない経理部とのコミュニケーション。しかし、情報システム部のERP担当者の中には経理部とのやりとりを苦手に思う人もいる。ERP構築のための要件を的確に引き出すには?
質問
基幹システムの再構築プロジェクトのメンバーの一員となり、会計システムを担当することになりました。経理業務に関する要件を検討するため、先輩と一緒に経理部の人との打ち合わせに何度も出席しています。しかし、打ち合わせの中で経理部の人の話すことがよく分からなかったり、うまくコミュニケーションが取れていないと感じることがあります。経理部から要件を引き出すに当たって、心掛けることがあれば教えてください。なお、私は簿記検定の2級に合格しており、基礎的な会計の知識は持っているつもりです。
教科書の知識を実務で確認する
回答:経理部の業務をよく理解することが、経理部から要件を的確に引き出すための最短の近道だ。そのためには、簿記の勉強をはじめとして、会計や財務の勉強は必須。簿記検定の2級は、そのスタートラインといえる。
もちろん、簿記や会計の教科書に書いてあることと、実際の経理業務には多くの違いがある。しかし基本の考え方は教科書も実務も変わりがない。簿記の教科書には「仕訳帳」「総勘定元帳」「補助元帳」「転記」といった用語が出てくる。それらが実際の業務や、さらにはシステムでどのように実現されているかを確かめることが実務を理解する上で役立つ。また、会計の教科書には「収益の認識」や「棚卸資産の評価」について書かれているが、それらが実際の業務やシステムでどのように実現されているかを確認することも有益だ。教科書と実務の違いを1つ1つ地道に確認する作業が、経理業務を理解するために重要なステップとなる。
経理の人と良好なコミュニケーションを取るには
経理部の人とうまくコミュニケーションが取れていないことを気にするERP担当者は多いが、経理部の人も同じように感じているかもしれない。つまり、経理部の人もERP担当者が話すシステムの話がよく飲み込めず、「何を聞かれているのか分からない」「どう答えていいか分からない」と思っている可能性がある。
システムの話を経理部の人に分かりやすく伝えるには、仕訳をイメージできるように話すと良い。なぜなら経理部の人はいつも「仕訳で考える」という習慣がついているからだ。例えば、情報システム部の人が、処理内容について、以下のように伝えたとする。
A
出荷確定処理をすると、出荷日の日付で在庫引落し処理が行われ、在庫単価マスターを参照して売上原価テーブルに売上原価レコードを作成します。同時に販売単価マスターを参照して売り上げテーブルに売り上げレコードを作成します。売り上げレコードには、画面にある得意先コードをセットします。
これを会計の言葉である仕訳で表すと、
B
△月△日 (借方) 売掛金 ×× (貸方) 売上 ××
△月△日 (借方) 売上原価 ×× (貸方) 在庫 ××
となる。Aの説明の中には、日付の特定、勘定科目の識別、金額の計算など、Bの仕訳をイメージするための情報が過不足なく含まれており、仕訳をイメージしやすい説明といえる。
上記は簡単な例示だが、どんな複雑な取引であっても最終的には仕訳の形で会計システムに取り込まれる。仕訳がイメージできれば、経理部の人はシステムの処理と会計処理の関係が理解しやすくなる。その上で仕訳を構成する要素である、日付、勘定科目、金額などの項目について検討を深めていけば、システムの処理と会計処理の関係がさらに明確になる。その結果、経理部と情報システム部の人の間で認識のずれがなくなり、コミュニケーションがスムーズになり的確に要件を引き出すことができる。
経理部の人から頼りにされる情報システム部員になる
経理部の人は、話している相手に経理の知識があると安心する。経理部の人とコミュニケーションを深め、信頼を得ることができれば、積極的に相談に来てくれるようになるだろう。
五島伸二(ごしましんじ)
アドバ・コンサルティング株式会社 代表取締役 公認会計士・ITストラテジスト
監査法人トーマツにて会計監査、IPO支援、マネジメントコンサルティングに従事。トーマツ退所後は多数のシステム開発プロジェクトやERP導入プロジェクトに参画し基幹システム構築を行う。その後、上場会社の経理部長を経て、2010年3月にアドバ・コンサルティング株式会社を設立。それまでの経験を生かし、会計とITの専門家としてシステム開発や業務改善コンサルティングに取り組んでいる。
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