教えて経理部長!【第1回】
自動化がポイント、決算早期化に必要な会計システムの要件とは
ERPの選定、導入で重要な役割を果たす経理部。情報システム部のERP担当者は経理部の業務プロセスや要件を理解することが重要だ。上場企業で経理部長を務めた公認会計士がERPについての疑問に答える。
質問
今回のERPシステムのリプレースでは、課題となっている決算早期化の実現が求められています。どのような点に注意して提案をすればよいでしょうか?
回答:決算早期化といっても単体決算、連結決算、開示書類作成のうち、どの期間を短縮するかによってアプローチが異なる。今回は、単体の会計システムのリプレースなので、それに沿ってポイントを説明する。
期中取引伝票登録の自動化
単体決算の早期化とは決算伝票を効率的に登録して、できるだけ早く残高試算表を完成させることだ。しかし決算日の翌日からすぐに決算伝票を登録できるかというと、そうではない。なぜなら売上計上の伝票、仕入計上の伝票、経費や人件費の伝票などの期中取引の伝票を大量に処理する必要があるからだ。これらの伝票は期末から翌期首にかけて集中する。従って一日も早く決算作業をスタートするには、大量の期中取引伝票を効率よく登録する必要がある。
そのためには、
- 販売管理システム、購買管理システムから売り上げや仕入の伝票が自動仕訳の形で会計システムに登録される
- 債権管理システムで入金消し込み作業をすることで、債権の消滅の仕訳が自動的に会計システムに登録される
- 固定資産システムから資産の取得や除売却の仕訳が自動仕訳の形で会計システムに登録される
などの自動処理の仕組みが不可欠だ。これらの処理を手作業で行っていては、決算作業はなかなか始められない。
これらの自動化は、期中取引の伝票登録を効率化するだけでなく、経理部における伝票確認作業の省力化にもつながる。自動化の仕組みに信頼性が確保できていれば、経理部では自動処理に含まれない例外的な伝票のみをチェックすればよく、厳格な伝票チェック作業を省略することが可能となる。
決算伝票登録の自動化
期中取引の伝票登録が完了したら、在庫評価や減価償却、債権評価など決算伝票の登録を開始する。原価計算や減価償却計算をシステム化している企業は多い。それ以外にも、子会社に対する貸付金利息の計算や、保有する有価証券の評価計算など、システム化による自動化で効果を生む場合がある。
しかし経理部には表計算ソフトを駆使して作り上げることが得意な人が多く、各人が工夫を重ねて、極めて効率的な処理を行っていたりする。その結果、作業が属人化し、自動化に消極的となる原因になりがちだ。
多くの場合、そういった各人が抱えている決算作業を一度棚卸しして、第三者の目を通して標準化したり、システム化することが全体のスループットを上げ、決算早期化につながる可能性がある。決算早期化の検討に先立ち、既存プロセスに改善の余地がないかよく確認する必要がある。
どういった提案が受け入れられるか?
決算早期化は決算作業の中でボトルネックとなっているところを見つけて丹念につぶす作業を積み重ねることで実現できるのであり、高機能の会計システムにリプレースすれば簡単に実現できるというものではない。業務改善の支援や周辺システムとのインタフェースの改善も含めた総合的な検討をする必要がある。
四半期決算の導入後は、まさに1年中決算をやっているというのが経理部の人の実感だ。要員をなかなか増やしてもらえず、解決すべき課題を解決するより、目の前の決算を終わらせることが最優先の課題になっている感があり、多くの経理部員はいつも仕事に追われている。経理部は、そういった状況を大きく改善できる提案をERP担当者から待ち望んでいるといえる。
五島伸二(ごしましんじ)
アドバ・コンサルティング株式会社 代表取締役 公認会計士・ITストラテジスト
監査法人トーマツにて会計監査、IPO支援、マネジメントコンサルティングに従事。トーマツ退所後は多数のシステム開発プロジェクトやERP導入プロジェクトに参画し基幹システム構築を行う。その後、上場会社の経理部長を経て、2010年3月にアドバ・コンサルティング株式会社を設立。それまでの経験を生かし、会計とITの専門家としてシステム開発や業務改善コンサルティングに取り組んでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
9
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー