IT担当者のためのIFRS入門【第4回】
今すぐ始めたい固定資産管理システムのチェック
IFRS対応する多くの日本企業を悩ませる固定資産。既存の日本基準、税法との差異が大きく、ITシステムの対応も必須だ。概要とITシステムの対応を解説する。
企業を悩ますIFRSの固定資産
多くの日本企業が共通して対応をしないといけないIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)の項目とは何だろうか。それは「収益認識」と「固定資産」だ。日本基準との差が多いことに加えて、現場の業務プロセスや、ERPなどのITシステムへの影響も大きい。収益認識については、前回記事「IFRSと日本基準で異なる収益認識――4つの対応法を示す」で解説した。今回は、日本IT会計士連盟が2010年5月20日に開催したセミナー「情報システムに関わる人のためのIFRS入門」での公認会計士 五島伸二氏の講演を基に、固定資産関連の影響を解説しよう。
固定資産関連はIFRSと日本基準とで差が大きく、多くの企業で対応が必要といわれている。それは日本企業が税法に従って固定資産を処理しているケースが多いからだ。五島氏が示した図にあるように耐用年数や残存価額については税法ベースで行っている企業が多い。これをIFRSベースで処理することは可能だが、当然ながら税法への対応は引き続き必要であり、企業はIFRS、税法、日本基準と複数の基準に対応して固定資産を管理する必要がある。五島氏は「税法、個別会計、連結会計(IFRS)とシステムが必要になる。そのため複数台帳に対応した固定資産システムが今後は使われていくだろう」と指摘した。
| 項目 | 日本基準・実務 | IFRS(IAS第16号) | 留意事項 |
|---|---|---|---|
| 減価償却方法 | 建物などを除き、定率法が多い | 経済的便益を消費されると予測されるパターンを反映した方法 | 定率法の低減的な償却費の発生形態と、資産の実際の使用状況とが一致するか十分に検討する必要がある |
| 耐用年数 | 税法の規定に従うケースが多い | 使用が見込まれる期間 | 実務上、税務上の耐用年数を超えても使用する機械装置や、税務上の耐用年数より短期にスクラップ・アンド・ビルドを繰り返す店舗設備などは多い。状況に応じて耐用年数の変更を行う必要がある |
| 残存価額 | 税法の規定に従うケースが多い(取得原価の10%もしくは0%) | 耐用年数到来時でその資産から受領できる価額 | 実態に即して対応する必要がある |
また、IFRSでは残存価額や耐用年数、減価償却費は各年度末に見直す必要がある(IAS第16号)。対して、現状の日本企業では税法ベースのために、それらの見直しはほとんど行われていない。IFRSでは見直しで重要な変更があった場合には、会計上の見積もりの変更として取り扱われ、将来に向けた調整を行う。五島氏は「実務的には会計方針の変更は損益に影響を与える。意志決定する場合は、実際にどのくらいの損益に影響があるかの情報が必要になる。固定資産システムにシミュレーションの仕組みが必要になる」と話した。
固定資産管理システムに必要な戻し入れ機能
減損についても日本基準とIFRSとで違いが大きい。減損とは、四半期末や会計年度末に時価が著しく下落している場合に固定資産の帳簿価額を引き下げる会計処理。五島氏はIFRSと日本基準の減損について、「IFRSでは戻し入れ(戻入)が強制される点に違いある」と指摘し、その上で「戻し入れの機能がある固定資産管理システムが必要になる」と話した。
IFRSのIAS第36号が定める戻し入れとは、過去に減損を認識し、帳簿価額を切り下げた資産について毎期テストし、価値が回復した場合に、資産の回収可能額まで減損損失を戻し入れる会計処理。日本基準の固定資産管理ではこの戻し入れの考えはなく、多くの固定資産管理システムにとっては新機能が必要になる。つまり、過年度の減損を行わなかった場合の簿価の情報を固定資産管理システムは持ち続ける必要があるのだ。
また、無形固定資産については開発費の資産計上もシステム対応が必要になる可能性がある。日本基準では、研究開発費は一部を除き、発生時に費用処理する(費用計上する)。しかし、IFRSでは研究開発を2つのフェーズに分けて認識する。研究段階での支出については同じように費用処理するが、開発段階での支出は以下の6つの要件をすべて満たす場合は、無形資産として認識し、バランスシートに計上する必要がある。
- 技術的に実現可能である
- 無形資産を完成させ、使用または販売する意図がある
- 無形資産を使用し、販売する能力がある
- 将来の経済的便益をもたらす可能性が高い
- 無形資産を完成させ、使用または販売するための適切な技術的・財務的な資源が入手できる
- 無形資産に帰属する支出を信頼性をもって測定できる
これらの要件はつまり、「将来、もうかるのであれば無形資産として計上する」(五島氏)ということだ。研究開発に、プロジェクト管理ソフトウェアなどを使っている場合は、プロジェクトごとにコストの把握や、研究開発フェーズの認識などが必要になるだろう。
要件を先取りしてITシステム対応を
IFRSの固定資産はそもそも、「コンポーネントアカウンティング」の考えの基づき、有形固定資産の構成単位ごとに取得原価を分けてそれぞれに固有に残存価額、耐用年数、減価償却方法を適用する必要がある(IAS第16号)。コンポーネントアカウンティングの例としてよく出されるのは旅客機。日本基準では旅客機1機が有形固定資産の単位だが、IFRSではボディやエンジンなどその構成要素ごとに固定資産を管理する必要がある。
このような考えは、日本基準、または税法ベースの固定資産管理とは大きく異なるため、対応には時間がかかるといわれている。ITシステムの対応は基本的に会計処理のポリシーが決まってからになるため、さらに時間の制約が厳しくなる可能性が高い。今のうちにIFRSの固定資産管理で必要となる要件を先取りし、関係するITシステムの改修に当たりを付けることが求められる。
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