ERP Now!【第12回】
SAP ERP 6.0を2020年まで使い続けられる理由
ERPは定期的にアップグレードするという常識が変わりつつある。SAP ERPは2020年までの長期間のサポートを提供することで現行バージョンを使い続けられるようにした。その理由を探る。
混乱なく新しい価値を利用可能に
SAPジャパンは11月17日、主力のERPパッケージ「SAP Business Suite 7」についてその標準保守契約を2015年から2020年に延長すると発表しました。簡単にいうと2020年まではSAP Business Suite 7をアップグレードせずに使い続けることができるということです。SAPジャパンはなぜそのような決定をしたのでしょうか。今回の「ERP Now!」ではSAPジャパンへの取材を通して、SAP ERPのアップグレードを考えましょう。
SAP Business Suite 7は複数のアプリケーションが含まれたERPパッケージです。中心となるのはERPである「SAP ERP 6.0」。SAP ERP 6.0は2006年に登場した製品です。今回の発表では、このSAP ERP 6.0と、「SAP SCM 7.0」「SAP CRM 7.0」などについて、サポートサービスであるSAPの「SAP Standard Support」「SAP Enterprise Support」を2020年まで提供するとしました。Standard Supportはバグフィックスなどの基本的なサポートを提供するサービスで、Enterprise Supportはこの基本サービスに加えて、アプリケーションのライフサイクル管理、ビジネスプロセス管理など事前対応型のサービスを提供するという内容です。
SAPジャパンのバイスプレジデント ソリューション統括本部 本部長 脇阪順雄氏は、サポート期間の延長について「顧客に混乱がない形で新しい価値を提供したいという思いが根底にあります」と話しました。ERPはアップグレードによって新しい機能を追加するケースが多いのですが、ERPのアップグレードでは「そのたびに混乱が生じるという矛盾があります」と脇阪氏は言います。実際、SAP ERPに限らず、ERPのアップグレードは多くのユーザー企業にとって負担になっています。その原因はERPの標準機能に修正を加えるカスタマイズや、追加機能であるアドオンといわれています。ERPをアップグレードする際、カスタマイズをした機能やアドオンを修正、再チェックする必要があり、かなりの開発工数になってしまうのです。
SAP ERPのアップグレードについての記事
SAPジャパンは頻繁なアップグレード作業を避けるために製品のリリースサイクルをSAP ERP 6.0から長期化しました。それに伴ってサポート期間も延長したというのが今回の発表です。SAPジャパンのソリューション統括本部 ソリューション&カスタマーイノベーションセンター センター長の松村浩史氏は「SAP ERPの次のバージョンがいつ出るかは、まだ決まっていません」と話します。
機能拡張パッケージを提供
しかし、ERPをはじめITシステムを取り巻く状況は日進月歩です。SAP ERPのユーザー企業にとっては同じバージョンを使い続けることで、その進化から取り残されるリスクはないのでしょうか。脇阪氏はこの疑問について「エンハンスメントパッケージを適用することでイノベーションに追随できます」としています。エンハンスメントパッケージとは、SAP ERP 6.0をはじめとするSAP Business Suiteに適用できる機能拡張です。ユーザー企業はこのエンハンスメントパッケージを適用することで、SAP ERP 6.0のコアに影響を与えることなく、新機能を利用できます。SAP ERP 6.0についてはこれまで5つのエンハンスメントパッケージが提供されていて、11月には6つ目のエンハンスメントパッケージが提供開始されました。
6つ目のエンハンスメントパッケージでは会計や人事ついて日本の法制度への対応を強化しました。また、研究開発やサプライチェーン、調達などについても新機能を追加。公共や小売、銀行などの各業種についても機能拡張を提供します。エンハンスメントパッケージを適用できるのは現状でSAP ERP 6.0のみです。「今はユーザー企業の6割がSAP ERP 6.0を使っていて、それ以前のバージョンの利用は4割程度。顧客にはSAP ERP 6.0にアップグレードすることを勧めています」(脇阪氏)
エンハンスメントパッケージは現在、1~2年に1回の頻度で提供されていますが、今後はエンハンスメントパッケージ以外の拡張機能の提供方法も検討し、四半期ごとなど、より高い頻度で提供する方針です。
SAP ERPを使い倒してほしい
エンハンスメントパッケージは確かにSAP ERPをアップグレードせずに新機能を取り組むために有効といえますが、上記のようにSAP ERP 6.0でないと利用できません。そして4割のユーザー企業はSAP ERP 6.0がリリースされて5年以上がたつにもかかわらず、それ以前のバージョンのSAP ERPを使っているのです。やはりSAP ERPのアップグレードを負担と感じるユーザー企業が依然として多いことが分かります。
ただ松村氏は「アップグレードのインパクトはかつてと比べて小さくなってきました」と話します。「SAP R/3 4.6くらいでERPのコアは完成されました。そのためSAP ERP 4.7から6.0へのアップグレードではかつてのようなアップグレードの問題は起こらなくなりました。ユーザー企業にはSAPが何を提供し、どういうサポートを提供しているのかを理解して、SAP ERPを使い倒してもらいたいです」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
ERP NOW!
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[テクバン株式会社] 1画面でITサービスデスク業務が完結 太陽ホールディングスに学ぶデバイス管理 -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] ライセンス無料 Drupalベースの「多言語ECサイト開発用パッケージ」の実力は? -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] 日本発グローバル企業用Drupal「Risley(リズリー)」の実力とは? -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] Drupalサイト運用のリスク解消 潜在的なセキュリティ問題を迅速に発見する方法 -
製品資料
[株式会社ソースポッド] SCS評価制度への対応で工数が増大? 取得後の管理・運用をどう進めるべきか
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
3
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
6
世界PC出荷数が20%急減 情シスを直撃するPC先行調達の反動と価格高騰
-
7
「レガシーシステム・老朽化システムの運用課題と刷新」に関するアンケート
-
8
セキュリティは「情シス任せ」が過半数 漏えい発生時やSCS評価制度の課題は?
-
9
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
10
326のIPアドレスで1200超のアクセス AIエージェント関与が疑われる攻撃の中身
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
2
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
3
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
4
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
5
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
6
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
7
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
8
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
9
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
10
生成AIの活用を阻む「5つの壁」とは? AIネイティブ組織へ変革を遂げる方法
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー