9つのPaaSの違いが分かる比較表付き!
主要PaaSの機能とユーザーの開発トレンドを解説
PaaSの多くは、複数のプログラミング言語や開発フレームワークなどに対応し、料金体系も多岐にわたる。本稿では、言語やフレームワークのユーザー動向、主要PaaSの機能、料金体系のトレンドを紹介する。
ガートナーによるPaaS機能の定義とロードマップ
調査会社のガートナーは2011年2月、PaaSのロードマップを発表した。広義のPaaS「Application Infrastructure Services」(アプリケーションインフラストラクチャ)に関する機能要件は、2011年では統合アプリケーションサーバなど多岐にわたっている。2013年ごろには、ユーザーが開発した個々のアプリケーションサービスとデータをホスティングして管理する「aPaaS(アプリケーションPaaS)」と、aPaaSがホスティングして管理するアプリケーションを連携させて統合する「iPaaS(インテグレーションPaaS」に統合され、2015年ごろに包括的なPaaSスイートへと集約されていくと予測している(図1)。
2011年はさまざまなPaaSが登場したが、2012年からはaPaaSを中心としたサービス提供が進み、中長期的には包括的なサービスとしてPaaSがコモディティ化していくと予想される。
主要PaaSの提供機能を比較
PaaSは、各社からさまざまなサービスや機能が提供されている。以下の比較表では、主要なPaaSをプログラミング言語や開発フレームワーク、データベースなどで分類した(図2)。
主要PaaSの機能比較表をダウンロード
- 9つのPaaSの内容をまとめた比較表をPDFで提供しています。「主要PaaSの機能比較表」からダウンロードしてください。
各社が提供するPaaSは、複数のプログラミング言語や開発フレームワーク、また各種データベースサービスに対応する傾向にある。背景として、開発者が開発用途に合わせてプログラム言語や開発フレームワーク、データベースなどの各サービスを柔軟に組み合わせることのできる、マルチプラットフォームとなる開発環境が求められていることがある。
Heroku(セールスフォース・ドットコム)
2011年9月には、Facebookアプリのデフォルトの開発プラットフォームとなり、主にソーシャルアプリやモバイルアプリを対象としている。また、多種多様なアドオンを無償版と有償版で提供しており、Webアプリを作成する際に管理UIでAPIの情報を確認できる「Apigee for Facebook」など、Facebook API連携や課金決済サービスなどが提供されている。
Force.com(セールスフォース・ドットコム)
GUI操作で業務アプリを開発できるPaaSサービスで、OEMパートナーなどによるインテグレーションサービスとしても提供している。今後、HTML5モバイルサービス「touch.salesforce.com」によって、Force.comの企業向けモバイルアプリ開発機能が拡充される予定だ。Database.comは2011年8月から一般向けサービス提供開始している。
Google App Engine(グーグル)
パブリックPaaSサービスとして、スケーラブル性が評価されており、大規模なWebサービスやソーシャルアプリ等を対象としている。実行できるプログラミング言語、フレームワーク、データベースの種類は限定されているが、データベースはApp Engineデータストアの他、MySQLを使えるようになるなど、エンタープライズ環境も想定したサービスの拡充を進めている。
Cloud Foundry(ヴイエムウェア)
オープンソースで特定のIaaSに依存せず、複数のプログラミング言語やフレームワークに対応している。パブリッククラウドおよびプライベートクラウドの双方に導入できる。パブリッククラウドでの利用では、主にアプリケーション開発者の利用を対象としている。
OpenShift(レッドハット)
Cloud Foundryと同様に特定のIaaSに依存せず、複数のプログラミング言語やフレームワークに対応しており、パブリッククラウドおよび企業向けのプライベートクラウドの双方に導入できる。今後、オープンソースして提供しつつ、最大手のLinuxディストリビュータとして、自社開発ツールやPaaS連携の付加サービスを追加するなど、エンタープライズ分野での利用に向けたサービス拡充を図っている。
AWS Elastic Beanstalk(Amazon Web Services)
現在はβ版での提供。基本的に無料で、Amazon EC2/S3などで動作する。2012年04月には東京リージョンでも利用可能になった。VPCでは提供していない。自由度の高い開発環境でWebアプリの実行環境を構築・管理できる。
DotCloud
開発者からニーズの高いさまざまなプログラミング言語やデータベースをサポートし、開発者はそれらを自由に選択して利用できる。料金体系は2サービスまで無料で、4サービスまでの「Pro」は月額99ドル、最上位には「Enterprise」を提供しており、個人開発者だけでなく企業の開発利用も対象としている。
Windows Azure(マイクロソフト)
Windows Azure Platfom(SQL Azure、AppFabricなど)のクラウドサービス群の1つ。インターネットでスケールアウト可能なアプリケーションの実行環境であり、主にアプリケーション開発ベンダーやISV、システムインテグレーターを対象としている。
Open PaaSから派生する特定PaaSの台頭
PaaSの市場はこれまでProprietary PaaSが主流であったが、Cloud FoundryやOpenShiftといったOpen PaaSがこの1年で注目を集めており、Open PaaSを中心としたクラウドエコシステムの形成が予想される(PaaSの種類や動向を解説した記事:オープンソースのPaaSはなぜ注目されるのか ~Open PaaSの魅力と課題)。
一方、既存のProprietary PaaSの事業者との直接的な競合を避け、対応するプログラミング言語や開発フレームワーク、データベースを特定し、特定の業界・分野向けに付加機能を提供するなど、既存サービス事業者との差異化を図るサービスも登場している(表1)。
例えばIronfoundryは、Cloud Foundryをベースに.NET FrameworkベースのパブリックPaaSを提供している。
| サービス名 | 特徴 | URL |
|---|---|---|
| Stackato | ActivePython、ActivePerl languagesベースのプライベートPaaS | http://www.activestate.com/cloud/ |
| AppFog | PHPベースのパブリックPaaS(旧:PHP Fog) | http://appfog.com/ |
| Joyent | Node.jsベースのパブリックPaaS | http://www.joyent.com/ |
| Ironfoundry | .NET FrameworkベースのパブリックPaaS | http://www.ironfoundry.org/ |
プログラミング言語や開発フレームワークにおけるユーザー動向
PaaSでは、特にプログラミング言語や開発フレームワークへの対応が重要となる。米Red Hatが「VMworld 2011」参加者に調査した結果によれば、現在社内環境で利用している開発フレームワークでは、.NET Frameworkが33%でJava EEが31%となっている。また、今後パブリッククラウド上で利用したい開発フレームワークは、1位がJava EE(32%)、2位が.NET Framework(29%)、3位がPHP(13%)となっている(図3)。
こういった調査結果からのJavaへの高い評価もあり、2011年に入ってから大手クラウドベンダーが相次いでJava PaaSを発表している(表2)。
| 年 | 月 | Java PaaSの内容 |
|---|---|---|
| 2009年 | 4月 | 「Google App Engine」がJavaのサポートを開始 |
| 2011年 | 4月 | Amazonが「AWS Elastic Beanstalk」を提供開始 VMwareが「Cloud Foundry」を発表 |
| 5月 | Red Hatが「OpenShift」を発表(Java EE 6もサポート) | |
| 10月 | OracleがJava EEをサポートしたパブリッククラウド「Oracle Public Cloud」を発表 |
Java EE 7は、クラウド対応のためにマルチテナンシーにも対応するなど、JavaのPaaS化が進み、Open PaaSの流をさらに加速させていくことが予想される。
PaaSの料金体系トレンド
PaaSは、各社料金体系にも特徴がみられる。現状のPaaS事業者の料金体系は、大きく分けると「基本無料」と、「最初から料金プランを適用」とする体系に分類される(図4)。
一定のリソースや開発ツールを無料で提供し、無料分を超えたところから従量課金あるいは料金プランを提供するモデルが中心(Herokuなど)だが、PaaS機能は完全に無料で提供して他の付加サービスでのみ課金を行うケースもある(AWS Elastic Beanstalkなど)。
また、現在β版サービスで無償提供している「CloudFoundry.com」も近いうちの商用サービスへの移行を発表しており、有償のサービス提供が予想される。
まとめ
PaaSは、各社提供する機能や課金機能は多岐にわたっている。今後、サービスの充実や安定性が図られている中で、市場の成長と機能や価格競争が進み、PaaSにおいてもコモディティ化が進んでいくと予想される。PaaS事業者は、競争優位に立つための独自機能による差別化戦略とオープン化を推進しつつ、安定した収益を生み出すためのサービスモデルを構築し、クラウド市場の領域を拡大させていくことが求められている。
玉井 誠(たまい まこと)
NTTコミュニケーションズ株式会社 勤務
前職(グループ会社勤務)では、050VoIPによる会議システムや光回線を使ったソフトフォンなどのコミュニケーションサービスの開発業務、またモバイル向け検索システム開発・サービス運用業務を担当。
2011年7月より現職にて、クラウドサービスのPaaSの開発企画などを担当。
林 雅之(はやし まさゆき)
NTTコミュニケーションズ株式会社 勤務
2007年より主に政府のクラウド関連プロジェクトや情報通信政策の調査分析、中堅企業のクラウド案件等を担当。
2011年6月よりクラウドサービスの開発企画やマーケティング等を担当。
国際大学GLOCOM客員研究員、社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。オープンクラウド実証実験タスクフォース OpenPaaS研究会チェア。
著書『「クラウド・ビジネス」入門』
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