XenDesktopとの違いは?
SMBに最適なオールインワンデスクトップ仮想製品「VDI-in-a-Box」
SMB向けに特化したVDIソリューション「Citrix VDI-in-a-Box」。VDIに必要な機能を網羅した仮想アプライアンスとして提供され、物理サーバ1台からVDIを始められる。本稿では、VDI-in-a-Box の機能の他、XenDesktopとの違いも解説する。
シトリックス・システムズ・ジャパンは2012年4月に中堅・中小企業企業(SMB)向けのVDI(Virtual Desktop Infrastructure)パッケージ「Citrix VDI-in-a-Box」の国内販売を開始した。同製品はもともと、同社が2011年5月に買収した米Kavizaの製品。国内でも2010年秋から「Kaviza VDI-in-a-Box」として販売されていた。その最新版(バージョン5)がCitrix VDI-in-a-Boxに装いを変えて登場したのだ。
そうした経緯からVDI-in-a-Boxは、同じシトリックスの仮想デスクトップソフト「Citrix XenDesktop」とアーキテクチャが大きく異なる。XenDesktopはVDIの他、ネットブート、ブレードPC、クライアントハイパーバイザー、ストリーミング/セッション型のアプリケーション配信と多くの仮想デスクトップ方式に対応している。一方のVDI-in-a-Boxは、仮想デスクトップ(仮想マシン)をサーバ側で実行し、その画面情報をクライアント側へ転送するVDIに特化している。標準化された(しやすい)デスクトップ環境の仮想化に向くといえる。
“お任せグリッド”で負荷分散、HA構成
その名の通り、オールインワンパッケージであるVDI-in-a-Boxは、ハイパーバイザー上で動作する仮想アプライアンス「vdiManager」として提供される。そしてCitrix製品になった現在でも複数のハイパーバイザー製品をサポートしている。「Citrix XenServer」に加えて、今回新たに「Microsoft Hyper-V」と「VMware ESXi」が使えるようになった(「VMware ESX」は従来もサポート)。
vdiManagerは、ユーザー、テンプレートの管理、コネクションブローカー、負荷分散、動的プロビジョニングなどVDIに必要な機能を網羅している。そのため、物理サーバのハイパーバイザー上にインストールするだけでVDIのサーバ環境が整うのだ。ストレージも物理サーバのローカルディスクを利用できる。エンタープライズ向けのXenDesktopのようにサーバの機能ごとに物理サーバを立てたり、高価な共有ディスクを使ったりする必要がない。これはSMBにとって魅力である。
しかも、vdiManagerは“グリッドエンジン”を内蔵する。複数の物理サーバをグリッド(グループ)化すれば、自動的にグリッド内で負荷分散が行われ、一部の物理サーバが停止すると、その物理サーバが担っていた処理は残りの物理サーバに割り振られる。そしてグリッドに物理サーバを追加すると、その分だけ性能やキャパシティーが高まる。それが可能なのは、各物理サーバが後述するデスクトップイメージやテンプレート、構成情報を同じくストアしているからだ。
唯一欠かせない外部サーバは、ユーザー認証で利用する「Microsoft Active Directory」である。vdiManagerはWindowsワークグループのユーザーデータベースを保持しているため、必ずしもActive Directoryが必要というわけではないが、これを利用すれば「移動ユーザープロファイル」が使え、個別設定の仮想デスクトップを割り当てられる。さらに高度なユーザープロファイル管理を行うなら専門ツール「Citrix Profile Management」との連携も可能だ。
Citrix HDXでWAN越しアクセスも実用的
VDI-in-a-Boxでは、画面転送プロトコルとして「Citrix HDX」と「Microsoft RDP」をサポート。クライアントソフト「Citrix Receiver」かWebブラウザ、専用のJavaクライアントのいずれかを搭載したユーザーデバイスから仮想デスクトップにアクセスする。そのため、Windows、 Mac OS X、Linuxが動作するPC、iOS/Android端末、Windows XP Embedded、Linux、Citrix Receiverを搭載するシンクライアントと、幅広い種類のユーザーデバイスが利用できる。
特にCitrix HDXに対応するCitrix Receiverでは、仮想デスクトップでも音声・動画を用いるマルチメディアアプリケーションを利用することができる。また、画面転送に必要な帯域幅を抑えることにより、WAN環境でも実用性が保たれる。
なお、VDI-in-a-BoxでWAN越しのリモートアクセスを行う場合、ゲートウェイ仮想アプライアンス「Citrix Access Gateway VPX」との連携によりセキュリティを高めることができる。同製品はデバイス種、ユーザーID、ネットワークロケーションなどに応じて、あらかじめ決めたポリシーを適用したり、ユーザーデバイスとVDIの通信を暗号化する。
シンプルな管理コンソールで統合管理
アーキテクチャがシンプルなVDI-in-a-Boxは構築・運用も容易だ。サーバ、デスクトップイメージ、テンプレート、ユーザーの統合管理が行える管理コンソールが提供されるが、できることが限られる分、設定項目は少なく、仮想化の深い知識がなくても使いこなせる。
例えば、シトリックスが「Windows管理者なら1時間以内で配備可能」とうたう構築フェーズは、(1)ハイパーバイザー設定とグリッド構築、(2)デスクトップイメージ生成、(3)テンプレート作成、(4)仮想デスクトップへのユーザー割り当てと、4つのステップで完了する。
グリッド構築は、新規グリッドを作成してユーザーデータベースのActive Directory/ワークグループと関連付け、vdiManagerの情報を登録するだけで済む。それで自動的に負荷分散とフェイルオーバーの仕組みが実装されるのだ。稼働後にグリッドを拡張する場合も同様にvdiManagerを追加登録するだけである。特別なスキルは一切不要だ。
デスクトップイメージは、vdiManagerに取り込んだOSイメージ(Windows XP/7)に対して、エージェントソフトを組み込み、所定の設定を施し、任意のアプリケーションを追加して生成する。これに仮想デスクトップの最大数やメモリ割り当て、ローカル接続する周辺機器などのポリシーを適用したものがテンプレートである。そしてテンプレートごとにユーザー、ユーザーグループ、IPアドレスを割り当てる。
PCを買い換えるより低い導入コスト
SBM、大企業の部門でVDIを導入する際に最も重要な要素はコストだろう。まず、コストの多くを占める物理サーバへの要求は次の通りだ。
CPU1コア当たり6~10台の仮想デスクトップを立ち上げられる(Hyper-Threading対応CPUなら2倍。1コアはハイパーバイザー専用)。メモリ容量は、Windows 7の仮想デスクトップ1台ごとに1.5G~2Gバイト、ハイパーバイザーとvdiManagerでそれぞれ最低1Gバイト。HDD容量は、デスクトップイメージ容量の2倍に加え、仮想デスクトップごとにデスクトップイメージ容量の15%、vdiManagerに74Gバイトである(シンプロビジョニング対応のXenServerとESXiの場合)。
同時接続する仮想デスクトップを最大50として、Hyper-Threading対応の4コアXeonあたりを搭載した物理サーバで間に合うだろう(3コアで仮想デスクトップ48~60台のキャパシティー)。これを2台でグリッド構成にすれば、高可用性VDIを実現できるのだ。通常はそれぞれの物理サーバで余裕を持って25台の仮想デスクトップを稼働させ、片方のサーバが停止しているときはもう片方で50台が稼働する設計だ。
シトリックスによれば、同時接続ユーザー50の場合(ハイパーバイザーはXenServer、Microsoft Software Assuranceは未契約)、コストの内訳は、VDI-in-a-Boxライセンスが130万円、ハードが100万円、Microsoft VDAライセンスが50万円。仮想デスクトップ1台当たりにすると5万6000円、ハードを二重化するとして7万6000円になる。
上記の試算でも分かる通り、VDI-in-a-Boxの導入コストはPCの買い換えより安く済むか、最低でも同等だろう。集中管理による情報セキュリティ向上、管理者の負荷軽減を考えれば、コストメリットはある。VDI-in-a-BoxはSBMが利用できる現実的なVDIソリューションだ。
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