PACS(医用画像システム)市場調査リポート
【市場動向】マイナス成長が見込まれるPACS市場 今後は遠隔読影などに期待
各種撮影装置の画像データを管理するPACS(医用画像管理システム)。地域医療連携や遠隔診断などでその利用シーンの広がりが予想される。市場調査を基にその現状や今後の動向予測などを紹介する。
シード・プランニングは2012年2月、市場調査リポート『2011-2012年版 電子カルテの市場動向調査 -電子カルテ/PACS市場規模予測とシェア動向』を発表した。このリポートは電子カルテシステム(病院向け、診療所向け、歯科向け)とPACS(医用画像管理システム)の市場動向を調査し、2015年までの市場規模を予測したものだ。本稿では、病院・診療所向けPACS市場の調査結果を基にその市場規模や導入状況を紹介し、今後の動向を考察する。
マイナス成長のPACS市場
2008年4月の診療報酬改定で「フィルムレス加算」制度が設けられ、「フィルム費や保管スペースなどを削減できる」「フィルム搬送などの手間を省くなどの業務の効率化が図れる」「経営改善・増収につながる」との理由から医療機関におけるPACSの導入が進んだ。
PACS市場は2009年の485億円がピークで、2010年は金額ベース470億円、前年比マイナス3%だった。ただ、大型案件が少なく金額ベースでは停滞したが、中小規模病院の放射線科での導入が進んだことが要因となり、納入システム数は1560件と伸びている。2012年現在、600床以上の大病院では約95%、200床以上399床以下の中小病院では60~65%の導入率となっている。
病院向けPACS市場 2010年は前年比マイナス4.5%の430億円規模
大規模病院ではPACSの導入が一巡し、リプレースの段階に移行している。マルチモダリティ化や周辺システムの治療RIS(放射線科情報システム)や検像システム、3Dネットワークサーバなどの導入が進む分野となっている。
医療IT化の進展で、PACSは病院経営の効率化や収益改善に貢献するものと認知されてきた。今後のPACS市場成長のカギは中規模病院の導入が握ると思われるが、システムの価格は急速に下落している。
診療所向けPACS市場 2010年は約40億円規模、納入システム数580件
フィルムレス加算制度の継続、診療業務の効率化などの導入メリットが認識され、市場は成長している。また、これまでよりも安価な300万円台の新製品の投入もあり、新規開業ではモダリティとの同時導入も増えている。全国約10万件ある診療所において、X線撮影装置などのモダリティを保有する割合は60%で、読影診療を目的とする導入がその裾野を広げている。
地域連携や遠隔医療など、新たなサービス展開の可能性
PACS市場は、医療画像データの外部保存が可能になり、東日本大震災を踏まえた緊急医療体制の整備、地域完結型医療の構築などの施策が推進されたことで、今後新たなサービス展開の可能性が出てきている。
例えば、地域医療連携の推進や画像データの外部保存などが可能になったことで、クラウドやデータベースの外部保存サービスなどPACSの周辺システムには追い風となっている。しかし、既存システムとの接続やデータ移行での料金体系などを明確にしなければ、利用者の増加はそれほど見込めない。
また、価格競争がより一層進んでいる。特に接続料やデータ移行料などの運用費用が高いと、成長を阻害する要因となる。さらに施設間の連携が広がったことで、送受信するデータに関するルール策定にも課題が残っている。画像データの伝送フォーマットは標準規格「DICOM」が採用されるが、システム更新のリプレースでベンダーを変えるとデータ移行がスムースにできないという問題も生じている。
政府主導の施策の後押しもあり、医療機関間の医療情報の連携が進んでいる。画像情報の共有、遠隔診断など遠隔医療分野においては、PACSは欠かせないシステムである。遠隔読影支援機能付きPACSが市場に登場したこともあり、今後は遠隔読影システム領域の市場拡大が期待できる。
ベンダーの市場シェアと各社の動向
PACSに参入している主要ベンダーは、大規模病院向け、中小規模病院向けなどそれぞれが得意とする分野で機能の開発を進めている。市場のすみ分けは一層進展し、価格競争も激化すると予想される。新しい動きとしては、2010年から民間業者における医療情報の外部保存が認められたことである。現在は総務省、経済産業省、厚生労働省が策定しているガイドラインを相互参照としているが、データセンターで外部保存する場合は、そうした各規制に関する整理が必要になる。
参入メーカーシェア・動向
累計納入数では「富士フイルムメディカル」が1500件を越え3年連続でトップとなっている。「東芝メディカルシステムズ」と「GEヘルスケア・ジャパン」が13~14%台で続き、上位3社で市場の約半分を占める(48.9%)。それに続くのが「ピー・エス・ピー」「コニカミノルタヘルスケア」「横河医療ソリューションズ」で6~8%台のシェアを獲得している。上位6社だけで市場の約7割を占めている(69.5%)。
今後は、リプレース需要だけではなく、業務系や治療系システムとの統合システムとしての対応製品の投入など、製品ラインの拡充が図られ、一層価格競争が激化している。診療所向け製品は富士フイルムメディカルとコニカミノルタヘルスケアの2製品が強くなっている。今後は、一層の顧客の囲い込みが進むものと思われ、PACS周辺システムの拡充がポイントになる。
今回紹介した調査結果の詳細は、シード・プランニングが発行している『2011-2012年版 電子カルテの市場動向調査 -電子カルテ/PACS市場規模予測とシェア動向』に記載されている。
筆者紹介
林 和夫(はやし かずお) 株式会社シード・プランニング エレクトロニクスITチーム 研究員
医療画像システムのPACSや治験電子化システムEDC、医療機器分野などの市場調査を担当する。
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