デスクトップ仮想化製品紹介:Ericom
費用は従来の2分の1以下、イスラエル発のハイブリッド型デスクトップ仮想化製品
デスクトップ仮想化製品の導入には“初期費用”という壁があった。ところが、従来製品の約2分の1から4分の1で導入できる製品があるという。Ericom Softwareの「PowerTerm WebConnect」を紹介する。
IDC Japanによるとデスクトップ仮想化市場は2012年以降大きく拡大し、年間平均成長率25.3%、2016年には7715億円の規模になるという。TechTargetジャパンが2012年6月に実施したサーバ仮想化に関する読者調査においても、今後導入を検討している仮想化/クラウド技術の第1位がデスクトップ仮想化だった(調査結果はこちら:「サーバ仮想化に関するアンケート調査」結果リポート)。
一方で、デスクトップ仮想化導入への障害はいまだ幾つか残る。その1つが初期費用だ。ソフトウェア販売を手掛ける独立系ディストリビューターのアシストによると、「約13年間Citrix製品を取り扱い、仮想デスクトップ導入実績は400社以上あるが、それ以上の顧客が初期費用の高さを理由にデスクトップ仮想化の導入を断念してきた」という。
そこで同社が2012年2月に販売を開始したのが、イスラエルEricom Softwareのデスクトップ仮想化製品「PowerTerm WebConnect」だ。これまでのデスクトップ仮想化製品の2分の1から4分の1の費用で導入できる製品だという。
Ericom Softwareは1993年に創業し、45カ国以上3万社に営業展開をしている。同社のPowerTerm WebConnectの導入実績は1600社26万ユーザーに上る。日本における総代理店はアシストが務め、2012年2月に日本で販売を開始してから既に5社で導入され、2社で実運用されているとのことだ(2012年7月4日時点)。
PowerTerm WebConnect
PowerTerm WebConnectは、Windowsのリモートデスクトップサービス、仮想PC(VDI:Virtual Desktop Infrastructure)、ブレードPCなど、複数のデスクトップ仮想化方式を提供し、それらを単一の管理コンソールで管理することを特徴とするデスクトップ仮想化製品だ。また、PowerTerm WebConnectはマイクロソフトのアプリケーション仮想化技術であるMicrosoft Application Virtualization(App-V)を統合管理することができる。そのため、ターミナルサービスでは稼働しないアプリケーションを仮想化する場合は、App-Vを用いるという手段も活用できる。
対応する端末やハイパーバイザーも幅広い。ハイパーバイザーは、Citrix XenServer、Hyper-V、KVM、Oracle VM、Parallels Virtuozzo、Virtual Iron、VMware vSphere、Xenなどがある。
PowerTerm WebConnectの製品ラインアップはRemoteViewとDeskViewの2種類。RemoteViewにはDeskViewの機能にプラスして、ターミナルサービス機能が付く(図3)。
また、PowerTerm WebConnectには次のサービスが含まれる。特に着目すべきは、他社ではまだ例を見ないEricom AccessNowだ。
・Ericom Blaze
PowerTerm WebConnectの通信プロトコルはRDPがベースである。Ericom BlazeはRDP通信を高速化するアクセラレーター。WAN環境におけるパフォーマンスアップの目安としては、RDP5、RDP6と比較して10~25倍、RDP7と比較して5倍ほどアップするという。Ericom Blazeは単品でも販売されているため、デスクトップ仮想化製品としてVMware Viewを使っている場合でも、通信プロトコルでRDPを選択すれば適用できる。
・Ericom Access ToGo
iOSやAndroid端末用のRDPクライアントモジュール。AppStoreもしくはGoogle Playにて無料でダウンロードできる。日本語対応はもう少し後の見通しだという。
・Ericom AccessNow
HTML5とWebSocket(サーバー/ブラウザ間の通信を規定する双方向通信規格)の技術を使い、Webブラウザからターミナルサービス、VDI、ブレードPCへの接続を可能にするサーバモジュール。HTML5対応ブラウザであれば、クライアント端末側に、Java、Flash、Silverlight、ActiveXをはじめクライアントモジュールを一切インストールすることなく、デスクトップ仮想化技術を利用できる。単体購入も可能で、「AccessNow for VMWare View」ではVMware View上の仮想デスクトップへのWebアクセス機能を提供する。
ハイブリッド型のデスクトップ仮想化でコスト削減
注目の価格であるが、アシスト システムソフトウェア事業部 技術2部 堤 浩彰氏によると、「PowerTerm WebConnectは、他社製品に比べ2分の1から4分の1の価格帯を実現できる」という。
そこで、PowerTerm WebConnectとXenDesktopの最低価格同士であるPowerTerm WebConnect DeskViewとXenDesktop VDIエディションを、1ユーザー当たりのライセンス価格で比較してみた(※)。PowerTerm WebConnectはユーザー数の規模で製品単価が変わるのだが、製品単価の最も高い10~99人では1ユーザー当たり9720円、製品単価の最も低い1000~2499人では7440円だった(参考資料:Ericom > 製品概要 > 構成&価格)。一方のXenDesktop VDIエディションは、通常ライセンスで1ユーザー当たり1万7100円だった(参考資料:Citrix XenDesktop製品希望小売価格)。単純に1ユーザー同士を比較しただけでも、PowerTerm WebConnect DeskViewはXenDesktop VDIエディションの約2分の1の価格といえる。
(※)最大10ユーザーのXenDesktop Expressエディション(無償)は除く。
また、アプリケーションの配信ができるPowerTerm WebConnect RemoteViewとXenAppを有するXenDesktop Enterpriseエディションを比較すると、PowerTerm WebConnect RemoteViewの10~99人が1万7040円、1000~2499人が1万2960円なのに対し、XenDesktop Enterpriseエディションは4万500円。PowerTerm WebConnect RemoteViewは2分の1から3分の1の価格だ。
PowerTerm WebConnectにおける価格構成例は次のようになる。
(例1)300ユーザーがVDIを常時利用する場合
DeskViewユーザー価格(8760円)×300人=262万8000円
(例2)300ユーザーのうち、VDIとターミナルサービスユーザーが混在する場合
RemoteViewユーザー価格(1万5360円)×300人=460万8000円
なお、上記の他に同時ユーザーライセンスもある。また、初年度からライセンス価格の18%相当で保守費用が掛かる。
PowerTerm WebConnectが安価な理由にはもう1つある。例2の通り、PowerTerm WebConnectは、ターミナルサービスとVDIの両方を管理できるハイブリッド型デスクトップ仮想化製品なのだ。WindowsでVDIを実施する場合、ユーザー分のVDA(サブスクリプションライセンス)が3年ごとに必要になる。だが、ターミナルサービス型のアプリケーション仮想化技術を組み合わせれば、RDS CAL(買い取りライセンス)をユーザー分支払うだけで済む。
また、VDIに比べターミナルサービスではハードウェアリソースを節約できるメリットもある。VDIではユーザーの数(仮想PCの数)だけ仮想マシンが必要になるため、その分ディスクの容量が増える。導入時に、ターミナルサービスで可能なユーザー数をどこまで増やせるかが、ハードウェア費用軽減のポイントになるのだ。
PowerTerm WebConnectの主な機能
安価ではあるが必要な機能は一通りそろっているといえる。管理者は管理ツールを利用して、ユーザー環境のカスタマイズ、構成、使用リソースのモニタリングが可能。また、ユーザーのアクセス履歴を追跡し、侵入者の特定と対応もできる。さらに、全ての接続を記録し、データベースに保存して照会できる監査機能も備えている。ユーザー環境は、スクリーンの色やフォント、キー割り当て、メニュー、ディスプレーなどについても制御可能だという。
| 主な機能 | 概要 |
|---|---|
| コネクションブロ―カー | WindowsターミナルサービスとVDI両方のコネクションブローカーとして機能 |
| VDIやブレードPCへの割り当て機能 | 1製品でターミナルサービス、VDI、ブレードPVなどのハイブリッド環境を管理可能。クライアント側のコンピュータ名やMACアドレスなどを組み合わせて接続制限ができる |
| リソースへのアクセス管理 | アプリケーションやVDIのプールごとに、プリンタ、シリアルポート、ディスクドライブなどの制御が可能。PowerTerm WebConnect接続ユーザーに対し、プリントスクリーンの制御が可能 |
| 仮想デスクトップ管理 | VMware vCenterやSystem Center Virtual Machine Managerなどの管理ツールを必要とせずに、仮想デスクトップの起動/停止、クローンの作成、セッション情報のリポートなどが可能 |
| アプリケーション配信機能 | 管理者は、複数のWindowsアプリケーションを一括公開設定可能 |
| ロードバランサー | サーバ接続セッションを最適化して、ユーザーに適切なサーバを割り当ることで、サーバのオーバーロードと休止時間を防止する。数百台以上のターミナルサーバの負荷分散を簡単な設定で実現 |
| LDAPディレクトリとの互換性 | Active Directory、Novell eDirectory、iPlanetなどのLDAPディレクトリとのインタフェースが可能。システム管理者は既存のネットワーク構成をインポートでき、初期セットアップ時の工数を節約することが可能 |
| その他の管理機能 | ・1つのファーム内で混合OSバージョンをサポート ・Secure Gatewayで簡易VPNをサポート ・特別な設定をせず監査ログの取得が可能 ・クラスタリングとフェイルオーバー機能を有し、設定のみで冗長構成が可能 |
お手軽なPowerTerm WebConnectと機能豊富なXenDesktop
以上、PowerTerm WebConnectの機能や価格を紹介してきた。確かに価格だけを見るとXenDesktopより安価ではある。だが、XenDesktopにあってPowerTerm WebConnectにない機能もある。例えば、狭帯域でも利用が可能な独自のICAプロトコルや、3D CADなどの大容量ストリーミングに対応したHDX 3Dのようなプロトコルは、PowerTerm WebConnectにはない。また、PowerTerm WebConnectで複数の仮想デスクトップを迅速に展開するためには、SysprepやVMware Viewのリンククローン機能を使い、あらかじめマスターイメージを用意する必要がある。さらに、OSおよびアプリケーションのイメージをテンプレート化し、クライアント端末とサーバの起動時にネットワーク経由で一括展開するCitrix Provisioning Serverのような機能もない。そして、PowerTerm WebConnectでもRDS環境でアプリケーションを配信できるが、XenDesktopのPlatinumエディションでは複数のアプリケーションを利用する場合はアプリケーションごとの使用帯域制限ができ、利用するアプリケーションのシングルサインオン機能もある。
XenDesktopは機能が豊富で、数十万クラスのユーザー規模や3Dレンダリングをサポートするなど、大規模環境・特殊環境に適している。それに対しPowerTerm WebConnectは、VDIやターミナルサービスを単体のコンソールで管理でき、導入や管理が容易な点が特徴だ。サーバやソフトウェアの対応バージョンも幅広い。価格の安さ、構築の容易さからも、比較的小規模からの利用に向いているといえる。
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