デスクトップ仮想化、2012年に評価を予定する企業は約26%なかなか進まないデスクトップ仮想化導入。その理由は?

ベンダーが積極的にデスクトップ仮想化のメリットを訴え導入を促す一方で、多くのユーザー企業は従来のPC運用からの脱却に関心がないことが米TechTargetの調査で分かった。

2011年12月19日 09時00分 公開
[Bridget Botelho,TechTarget]

 Windows環境を主体としており、翌年にデスクトップ仮想化の評価を予定している企業は、2010年に比べて2011年は増加した。だが、全面導入を計画している企業の割合はわずかであり、多くの企業では従来のPC運用からの脱却に関心がないことが、米TechTargetが最近実施した「Windows Purchasing Intentions 2012(2012年Windows購入移行調査)」で分かった。

 この調査の回答企業560社のうち33%は、デスクトップ仮想化に関心がないと答えている。大手ベンダーがここ数年の流れを引き継いでデスクトップ仮想化のメリットを訴えていることを考えると、皮肉な結果だ。

 「デスクトップ仮想化は、特殊なケース(に利用する技術)のように思える。万人向けではない」と、米ITコンサルティング会社Evolve Technologiesのデーブ・ソーベルCEOは話す。

 ただし、2012年にデスクトップ仮想化を評価すると回答した企業は約26%に上る。また、約14%は2011年に評価を実施し、16%は一部の部門にデスクトップ仮想化を導入済みだ。しかし、全面的に仮想デスクトップを導入しているのは、わずか4%にすぎない。

 このように仮想デスクトップに関心があるか実際に導入している企業の割合は大きいとはいえないが、2011年の調査では2010年に比べてデスクトップ仮想化に対する関心は高くなっている。2010年の調査では、671人の回答企業のうち42%がデスクトップ仮想化に関心がないと回答した(本年度の調査では33%)。また、前回の調査では、翌年(2011年)にデスクトップ仮想化を評価すると回答した企業は22%だったが、今回は26%に増えた。

 米ITコンサルティング会社Cornerstone TechnologiesでITエンジニアリングサービス担当ディレクターを務めるユージーン・アルファーロ氏は、この調査の結果は業界アナリストの予想に一致していると話す。「2006年と2007年に見られた仮想(サーバ)インフラストラクチャ導入の動きと比べると、短距離走ではなくマラソンになる」

 IT担当者は口をそろえて、デスクトップ仮想化の導入は遅々として進んでいないと話す。仮想デスクトップインフラストラクチャ(VDI)をはじめとするデスクトップ仮想化テクノロジの総保有コスト(TCO)投資効果(ROI)も、依然として仮想化導入の妥当性を裏づけできるレベルには至っていないからだ。

 デスクトップ仮想化の導入ペースが遅いのは、例えば、ユーザーがアプリケーションをインストールできない、アプリケーションの仮想化は難しい、ストレージ費用が掛かる(関連記事:キャッシュと重複排除でストレージ容量を節約、デスクトップ仮想化を速くする「Atlantis ILIO」)、システムが複雑であるなど、障害が多過ぎることが原因だと見る向きもある。

 また、現在提供されているVDIソフトウェアを使用して全てのデスクトップを仮想化することは不可能に近い。そのため、デスクトップ仮想化を導入している企業は、VDI、アプリケーション仮想化ソフトウェア、ワークステーション仮想化など、デスクトップ仮想化ツールを組み合わせて使用している。複数のツールを使用しなければならないため、総じて複雑になり、ソフトウェアの費用が押し上げられる。

 さらに、Webベースアプリケーションの台頭も、デスクトップ仮想化の存在意義を薄めている。

 「Web対応アプリケーションとクラウドベースのサービスは手ごわい。オンラインでアプリケーションをすぐに利用でき、可用性が高い。その上、米Microsoftなどの大手ベンダーがオンラインサービスを提供している」とアルファーロ氏は指摘する。「Microsoftは、仮想デスクトップよりも、クラウドベースのサービスの売り込みに力を入れている」

 しかし、クラウドサービスの影が、デスクトップ仮想化のメリットを完全に覆い隠しているわけではない。今回の調査で2012年にデスクトップ仮想化を評価すると回答した企業の63%以上が、一元管理を仮想化導入の理由に挙げている。続いて、約56%が管理コストの低減を、約42%がアプリケーションの一元的な保守を仮想化導入の理由としている。

 ハードウェア費用を抑えられ、分散セキュリティを強化できることも、デスクトップ仮想化導入の理由と考えられ、回答企業の約24%が、全体的な仮想データセンター計画の一環としてデスクトップ仮想化を導入すると回答している。

 デスクトップ仮想化ソフトウェアを既に使用しているか、今後導入する計画がある回答企業の62%強は、VMware製品(VMware View、ThinApp、またはVMware Workstation)を選んでいる。続いて、49%強はMicrosoft製品(RDS、App-V、Med-Vなど)を、39%強はCitrix製品(XenApp、XenDesktopまたはXenClient)を利用している。

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