VDAとはどう違う? CSLの中身
AndroidやiOSは料金上乗せ、Windows 8のBYODライセンスにユーザーの評判は?
Windows 8で導入された年間ライセンス「Companion Subscription License」(CSL)では、従業員の私物端末をサポートするためのコストを削減できるかもしれない。
米Microsoftの「Companion Subscription License」(CSL)では非Windows端末に料金が上乗せされる。これは長い目で見れば企業の端末に関する意思決定に影響を与え、Windowsタブレットを有利に導く可能性もある。
だが、Windows 8で導入された年間CSLでは、従業員の私物端末をサポートするコストも削減できるかもしれない。
CSLはSoftware Assurance(SA)契約の追加オプションとして提供される(関連記事:Microsoft「ソフトウェアアシュアランス」のリスクを理解する)。Windows端末を主に使うユーザーは、仮想デスクトップインフラ(VDI)経由で会社のデスクトップにアクセスできる。端末はiOSとAndroid搭載の私物端末を含め、4台までサポートされる。
MicrosoftのCSLが登場するまでは、企業は仮想デスクトップアクセス(VDA)ライセンスを私物の補助端末1台ごとに購入する必要があった。VDAライセンスの料金は端末当たり推定100ドル。ただしこの100ドルというのは希望小売価格のようなもので、ディーラーから車を買うのと同様に、交渉できる場合もある。
MicrosoftのWindows担当ビジネスアナリストマネジャー、コリン・ホワイト氏は、「CSLはオープンライセンス制度での販売は行っていない。しかし流れに従ってVDAの料金よりも約25%低く設定した」と説明する。
ホワイト氏はCSLの価格帯についてのコメントは避けたが、同氏によると、企業がWindowsのプライマリユーザー用にCSLを契約すれば、VDAライセンスよりも安い料金で4台までの端末をカバーできるという。
複数の筋によると、エンタープライズ向けエンドユーザーCSLの料金は、Enterprise Agreement(EA)と関連のSAパッケージを契約している企業の場合で月間4~7ドル、年間契約では48~84ドルだという。
年間48ドルの契約でも、ライセンスには各種のレベルがあり、数量割引など追加の割引を適用すると、CSL料金はユーザー当たり年間48ドルを下回ることもある。
利用する数量や、顧客とMicrosoftとの取り決め次第ではライセンス料が交渉可能な場合もあり、こうした数字は公にされないことが多い。
BYODに対応するCSLライセンス
Microsoftは端末ライセンス料金を低く設定しているが、それで事が単純になったわけではない。
「規定には非常に制約が多い」と話すのは、ライセンスに詳しい米Pica Communicationsの主席コンサルタント、ポール・デグルート氏。
Microsoftのライセンスは非常に分かりにくいため、業界には顧客のためにライセンス契約の交渉を担う専門のMicrosoftコンサルタントやパートナーが登場した。
匿名希望のある顧客は、2012年秋に変更が発表されたにもかかわらず、CSLのことは認識さえしていなかったという。
Microsoftは企業で拡大する私物端末の業務利用(BYOD)のトレンドに対応して、Windows 8の発表前からライセンス制度の変更を決めていた。以前は新しいライセンス契約を「Companion Device License」(CDL)と呼んでいたが、サブスクリプション方式を反映させるためにCompanion Subscription License(CSL)と名称を改めた。
CSLはSAライセンス契約を結んだ顧客向けのアドオンであり、EA契約に基づいてWindows 8 Enterprise Editionを利用し、さらにSA契約も結んでいる場合、「Direct Access」「BranchCache」「Windows To Go」などのエンタープライズ機能が利用できる。
しかも、Microsoft広報によれば、Windows 8をまだ導入していない企業の場合、CSLが割り当てられるのはSAまたはVDAでカバーされている端末に限られる。端末はOEMからの購入後90日以内、またはその端末用にアップグレード版のライセンスを購入した時点でSAの対象として追加できるという。
CSLは、AppleのiOSやAndroid搭載端末、「Surface Pro」、私物のWindows搭載ノートPCといった非x86端末もカバーされるため、BYODを導入している顧客にとっては理にかなう。
一方、ARMベースの「Windows Surface RT」は既に一般的なSAライセンスでカバーされているという理由でCSLの対象にはならず、CSLの追加料金も適用されない。
ソフトウェア契約を専門とする米Forrester Researchの上級アナリスト、マーク・バートリック氏は言う。「確かに分かりにくいが、Microsoftに対して公平な見方をすれば、同社はユーザーが複数の端末を使っていることを認識している。そのことを理解するまでに5年もかかったのは残念だが」
CSLはWindowsタブレットの採用を加速させるか
業界関係者はCSLを導入したMicrosoftの動きについて、企業のITに関する意思決定に影響を与えてWindowsベースのタブレットをエンドユーザーが利用できる端末として認めさせることを狙った裏口戦略と見る。そこからエンドユーザーによる端末購入の行動に影響を及ぼすことも可能だ。
だが米451 Researchのモバイル・ワイヤレス担当調査ディレクター、クリス・ヘーゼルトン氏は、「この戦略がユーザーに歓迎されることはないだろう。しかも他のプラットフォームに大きな弾みが付いた今となっては遅すぎる」と話す。
実際に、企業でのWindows 8導入が進まない実態は、企業が新しいOSや他のWindowsモバイル端末を採用するペースの鈍さを物語っている。
米IT資産管理企業Express Metrixのクリス・バーカー最高経営責任者(CEO)は「Windows 8端末の普及の鈍さを考えると、AndroidとiOSに対する料金上乗せに、状況を変える効果はほとんどないことがはっきりした。Microsoftがクライアントアクセス料を上乗せしている実例がまた1つ増えたにすぎない」と指摘する。
Microsoft製品のパワーユーザーでありながら、Microsoftのライセンスに関する戦略には失望したというエンドユーザーもいる。
米金融サービス企業Marketaction Capital Managementの創業者、クレイトン・コーン氏は「ばかばかしいほどひどいアイデアだ」と手厳しい。「Googleのような企業が自社の従業員に報い、同社製品のユーザーの出費を減らすために資金を投じて大きく成長してきたのに対し、Microsoftは丸い穴に四角いくいをはめ込もうとするようなことを何年も繰り返すばかりだ」。
これに対してMicrosoftは、CSLに対する見方はそれぞれの企業のBYODポリシー次第だとの立場を取る。「BYODに目を向ける企業の多くは、ハードウェアコストの削減と、何台もの端末を管理することの複雑さをはかりにかける」とホワイト氏は言い、「従来型のモデルにとどまり続ける企業と、純粋なBYODに踏み切る企業が入り混じるだろう」と予想する。
BYODライセンスに関するアドバイス
MicrosoftがBYODにサブスクリプション方式で対応したにもかかわらず、ライセンスの専門家はエンドユーザーが同社の複雑なライセンス方式を通じて状況を切り抜けるためのアドバイスを提供している。
企業のIT部門はMicrosoftの端末の定義をチェックし、対象とすべき端末の台数を数え、エンドユーザーがその端末をどのように使って会社のデータにアクセスするかを理解しておく必要があるとバートリック氏は助言する。
実際のところ、端末の定義と、Microsoft以外の端末をVDAに使うコストについて理解しておくことは極めて重要だ。これは企業がWindows Surface RTをエンドユーザーのために購入するか、それとも従業員が私物の非x86端末を仕事のために持ち込むかで違いが出ることを示すものかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
3
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
4
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
「IBM iはDXのボトルネック」は誤解 意外と知らない今風モダナイズの効果
-
9
「朝8時にバッチが終わらない」データ爆発の危機をJPX総研はどう乗り越えたか
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー