“むちゃ振り上司”にこういわれたら【第3回】
「IFRSへの対応はどうすればいい」と質問されたら
最近、再び盛り上がり始めた「IFRS」。企業が近い将来何らかの対応を求められる可能性がある。IFRSとは何なのか? 基本を紹介する。
日本もIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)に対応すべきタイミングを迎えつつある。このIFRSとはどんなものなのか。そして、IFRSに適用していくために企業は何をしなければならないのか。上司への説明のために押さえておきたいIFRSの基本を学ぶ。
これまでの上司の“むちゃ振り”
IFRSとは
IFRSとは「International Financial Reporting Standard(s)の略称。日本語では「国際会計基準」または「国際財務報告基準」と訳す。「イファース」「アイファース」「アイエフアールエス」などと読む。
従来の会計基準は国ごとに異なる制度を採用しており、国をまたいで決算情報を比較することが困難な時代が長く続いてきた。このような状況を解消し、国際的に統一された品質の高い会計基準を作るという動きが1970年代から進行。このときに作成された「国際会計基準」(IAS)が発展する形で「国際財務報告基準」(IFRS)が整備されてきた。
この動きは今世紀に入ってから加速度的に進展し、2005年からはEU域内の上場企業がIFRSに基づく財務報告を強制されるなど、IFRS適用の動きは一気に世界に広がることになった。
現在では120カ国以上の国がIFRSを採用しており、主要先進国でIFRSを強制適用(アドプション)していないのは米国と日本という状況だ。
日本のIFRSへの対応
日本はどのような状況になっているのか。日本でも1990年代から国際的な会計基準と日本の会計基準を調和させる取組み(コンバージェンス)が進められてきた。このコンバージェンスは2011年に一定の区切りが付けられた。また2009年6月には金融庁が「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」を公表。この中間報告では、2010年3月期からのIFRSの任意適用を認めると同時に、IFRSの強制適用の時期を2011年に明確にする長期計画が想定されていた。
その後、政権交代や東日本大震災による企業への影響を受けて強制適用のタイミングは保留とされ、当初は「2015年ごろ」と想定された強制適用の時期は「未定」という扱いになった。以後の検討においては「3年から5年の準備期間を確保する」という想定の下、金融庁の諮問機関である企業会計審議会を中心に継続的な検討が行われているが、強制適用の時期はいまだ明示されていない。
企業会計審議会での議論においては、主に
- 「IFRS任意適用要件の緩和」
- 「基準の一部を修正した日本版IFRSの作成」
- 「単体財務諸表の簡素化」
といった論点を中心に進められてきた(参考記事:IFRS任意適用要件が8月にも緩和、4000社が適用可能に)。
一方で、一定の条件を満たす企業については上記のように2010年から任意にIFRSを適用できるようになっている。例えば国際的な資本市場で資金調達を行う、いわゆるグローバル企業についてはIFRS適用によるメリットも大きいため、日本電波工業をはじめとして多くの企業がIFRSを任意適用している。2013年6月現在、上場企業のうち20社がIFRSを任意適用(または適用を表明)している(東証の説明)。
企業が準備すること
日本でIFRSを強制適用する時期はいまのところ未定だが、強制適用が正式に決定されたり、任意適用を行うなどIFRS適用を会社として決断した途端に、やるべきことは山積みになる。直前になって慌てないように十分に準備期間を取って進めたいところだ。
準備ではまず、IFRSという「国際的な会計基準」と、自社で採用している「日本の会計基準」との差異を分析し、会計処理の面でどの程度IFRSとの乖離(かいり)があるかを調べる。これは「影響度分析」「GAP分析」などともいわれ、IFRS適用に当たって多くの会社が踏む最初のステップとなる。
IFRS適用に向けて処理を変更することの全体像が見えたら、数年先を想定した「IFRS適用日」に向けたロードマップを策定する。IFRSを適用する最初の年度(初度適用)においては、IFRSで作成された2年分の損益計算書(包括利益計算書)と3年分の貸借対照表(財政状態計算書)が必要になる。それらを作る準備作業としては初度適用の日から3~4年前からIFRSに基づいて財務数値を作る体制作りが求められる。この体制作りの過程においては、企業グループ全体で適用する「グローバル会計ポリシー」の策定が必須で、ポリシーを前提とした「財務会計プロセス」の見直しも避けることができない。
また、このように財務会計プロセスの見直しを行うことで、現在行っている「内部統制評価」にも影響が出てくるため注意が必要だ。さらに会計システムをIFRS適用に合わせて更新・刷新する場合には、システム要件のとりまとめをIFRS導入スケジュールに連動して進める必要があり、さらに検討内容が増えるため慎重に対応することが求められる。
あなたの会社がIFRSを適用するのはいつからだろうか? 適用する必要があるのかどうかも含め、世の中の動向を引き続き観察して、いざというときに慌てないよう準備を進めておくのが大事だ。
原 幹(はら かん)
株式会社クレタ・アソシエイツ 代表取締役
公認会計士・公認情報システム監査人(CISA)
大手監査法人にて会計監査や連結会計業務のコンサルティングに従事。ITコンサルティング会社を経て、2007年に会計/ITコンサルティング会社のクレタ・アソシエイツを設立。「経営に貢献するITとは?」というテーマをそのキャリアの中で一貫して追求し、公認会計士としての専門的知識と会計/IT領域の豊富な経験を生かしたコンサルティングに多数従事する。
著書に「図解IFRSのきほんがわかる本」をはじめ、翻訳書やメディア連載実績多数。
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