“むちゃ振り上司”にこういわれたら【第4回】
「従業員の経費処理の間違いを減らして」といわれたら
とにかく煩雑になりがちな経費処理。従業員から提出された書類の間違いも多く、財務経理担当にとって気が重い作業だ。間違いを少なくして、処理を効率化するにはどうすればいいのか。
財務経理部門で気が重い業務の1つが毎月の「経費精算」「交通費精算」といった経費処理だ。とにかく時間がかかり、提出された資料を整理したりファイルしたりするのが煩雑。とりまとめにもチェックに膨大な時間がかかる。金額や内容が間違っていれば、提出した本人に確認して正しいデータに直さなければならない。こうした面倒なことにならないためには、普段からどういった工夫をすればいいのだろうか? 上司に「従業員の経費処理の間違いを減らして」といわれた場合の対応を説明する。
経費処理の内容
「経費処理」と聞いてすぐに思い浮かぶのは、毎月(会社によっては月2回以上)行っている「交通費精算」だろう。従業員は始点終点を表す「経路情報」にはじまり、「支出金額」や「目的地」などの情報を過去にさかのぼって調べ、社内で定めた所定の書式に入力していく。ルーチンワークの中でも非常に煩雑な作業だ。
次に思い浮かぶのは、個人の支出で立て替えた金額を後から会社に請求する「立替精算」。手元の領収書を基に「立替精算書」といった書式を作成し、立て替えた本人が領収書などを添付し提出する、というのが基本ルールになる。
経費処理の「ありがちな間違い」
財務経理部門に提出される経費データのうち、ありがちな間違い(エラー)を項目別に分類する。
金額
間違いが最も多く起きがち。入力ミス、転記ミスなど。
費目(勘定科目)
従業員自身が申請書類に費目を設定して申請する場合に間違いが起きがち。例えば会議費と接待交際費の区別、消耗品費と事務用品費の区別の間違いなど。
経路情報
交通費精算で頻繁に見受けられる。社内システムなどで最短経路を検索できる仕組みがあればよいが、多くの場合は申請する当人が経路を検索して電車やバスなどの交通費情報を入力しなければならず、間違いも起きやすい。
その他にも「経理処理に必要な情報が足りない」(証憑が添付されないなど)といった間違い(エラー)も日々発生していることだろう。
「ありがちな間違い」をなくすには?
ではこのようなありがちな間違い(エラー)が頻発しないように、財務経理部門としてはどのような対策をすればいいのだろうか? ポイントは「会計データの作成というゴールに対して、いかに必要最低限のコスト(手間)で対応するか?」だ。「環境整備」「データ入力」の二段階で工夫してみよう。
「環境整備」段階でどうするか?
- 「ルールの周知を工夫する」
提出書類を正確に作成してもらうためには、作成するためのルールやマニュアルの整備が大事なのは間違いない。ただ多くの場合、せっかく立派なマニュアルを作っても配るだけではほとんど見られることがない。そのため、例えば提出書類に「チェックリスト」を添付して、提出者が自分でチェックをできるように工夫して周知徹底を進める必要がある。
- 「データの発生と入力のタイムラグを短くする」
交通費精算書における経路情報は、データの入力を人間が行うことからヒューマンエラーが生まれやすく、エラーの修正に手間が掛かる。この原因の1つに「交通費の発生」から「精算」までのタイムラグがある。忘れたころに数カ月前の領収書を提出されて頭を抱えたことはないだろうか。これはタイムラグが最大限引き延ばされたことによる弊害だ。また、数週間前の交通費情報(経路情報含む)を間違いなく思い出して正確に入力するのを期待するのは非常に難しい。
そうであれば、タイムラグを短くするよう工夫してみよう。具体的には
- 書類の提出頻度を月1回から月2回や毎週などに増やす
- 交通費請求や立替請求を遡及する限度を設ける
などの方法がある。
前者は、発生から精算までのタイムラグを短くするために提出頻度を上げる方法だ。もっともこれは経理業務の負荷分散にはなるが、提出とチェックの回数が増えることで業務負荷そのものの削減につながりにくいので要注意だ。
後者は、例えば「締切日から2カ月前以上さかのぼっての立替精算は行いません」など、厳格なルールで対処するものだ。遡及する対象範囲が狭くなればエラーの発生確率は少しなりとも下げることができる。もっとも既に社内でこのように期限を設定していても、実際は守られていないケースも多いことだろう。こういった厳格なルールを徹底していくためには、会社でルールを決めてトップダウンで通知するしかない。マネジメントをうまく活用して、スムーズにルールが定着するように工夫したいところだ。
- 「提出書式を定型化しすぎない」
財務経理担当者の立場としては、とかく書式の定型化にこだわりがちだ。せっかく定型化した書式はあまり改変してほしくないし、できれば配布したテンプレートをそのまま使って提出してほしいと考えるだろう。だが実際には、書類の書式は作成者に改変され拡張されてしまうことが多い。これに対しては「定型化を維持すること」にこだわるか「会計情報にこだわるか」の判断が必要だ。
担当者としては、とかく提出書面が「完璧」に作られていなければ会計データを入力できないと考えがちなところがある。一方でこれらの経費データはゴールが「会計データを作ること」であることを思い返そう。極端に言えば「会計データが作れればよい」と考えることもできる。
書式を定型化することと、提出情報を会計データにつなげるために柔軟な対応することのバランスを考えてみよう。
「データ入力」段階でどうするか?
- 「二重入力を回避する」
提出書式に入力する箇所が多ければ多いほど、入力ミスにつながりやすい。ならば、入力する項目そのものを減らしてミスを減らしてしまおう。一度入力した費目や金額データは他の場所で入力しないようにすることで、打ち替えミスの防止につながる。
- 「費目を定型化する」
立替精算書の場合、利用する勘定科目は限定されている。さらには作成者自身に勘定科目を決めてもらうことで、財務経理担当者から作成者へ確認する手間を減らすことができる。下記のように、あらかじめ使用する科目と内訳のガイドラインを作成しておき、入力段階で作成者自身が選べるようにしておくことで費目を間違えないように工夫してみよう。
- 交際接待費(取引先への接待、供応、慰安、贈答など、5000円を超えるもの)
- 会議費(会議に関連した茶菓や弁当など)
- 消耗品費(10万円を超えない物品の購入など)
- 通信費(郵便料金、電話料金など)
- 事務用品費(文房具など)
- 旅費交通費(電車・バス・タクシー、高速道路料金、日当など)
とかく煩雑になりがちな経費処理業務だが、さまざまに工夫することで正確な会計データを作れるように継続的に改善を進めてみよう。
原 幹(はら かん)
株式会社クレタ・アソシエイツ 代表取締役
公認会計士・公認情報システム監査人(CISA)
大手監査法人にて会計監査や連結会計業務のコンサルティングに従事。ITコンサルティング会社を経て、2007年に会計/ITコンサルティング会社のクレタ・アソシエイツを設立。「経営に貢献するITとは?」というテーマをそのキャリアの中で一貫して追求し、公認会計士としての専門的知識と会計/IT領域の豊富な経験を生かしたコンサルティングに多数従事する。
著書に『図解IFRSのきほんがわかる本』をはじめ、翻訳書やメディア連載実績多数。
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