【IFRS】IFRS動向ウォッチ【第14回】
調査が示す「日本の経理財務部門が進む道」
コスト管理だけではなく、成長戦略にも貢献を。アクセンチュアが行った世界規模の調査からは経理財務部門に対するこのような期待がうかがえる。日本企業の経理財務部門にとっては同時にグローバル人材の活用も求められるようだ。
アクセンチュアは2011年11月、世界各国の企業の経理財務部門を対象にした調査結果を発表した。CEOなどの経営トップからは経理財務部門に対して全社のコスト管理に加えて、企業の成長戦略への貢献を期待する声が多かった。調査結果についてアクセンチュアの経営コンサルティング本部 財務・経営管理 グループ統括 エグゼクティブ・パートナー 公認会計士 野村直秀氏に聞いた(アクセンチュアの発表資料)。
調査は2011年1月から8月にかけて実施。売り上げ10億ドル以上の世界各国14業種の企業が対象で、530人以上の経理財務責任者、約300人の経理財務部門以外の経営層を対象に調査をした。
高いコスト管理への評価
2008年のリーマンショック以降、企業経営の環境が悪化する中で、経理財務部門は全社のコスト管理をリードしてきた。「その時期、経理財務部門はコスト管理のための施策を提案し、引っ張ってきた。経理財務部門の責任者の自己評価や、COOなどCレベルからの全体的な評価も高い」(野村氏)。
一方、調査によると、CFOなどの経理財務責任者の79%が自社の成長機会を見据えた財務機能の強化が「重要ないし非常に重要」と回答している。また、CEOなどの経営幹部の46%は自社の経理財務部門に対して「2012年は市場拡大などの成長戦略に焦点を当てるべき」と答えた。野村氏は「依然としてコスト管理は重要なテーマだが、加えて成長戦略や、成長に向けたイニシアティブで経理財務部門に貢献してほしいという期待や、そうしなければならないというCEOの声があった」と解説した。
ビッグデータの活用が課題
ただ、実際にその成長戦略への貢献ができているかというと、そうではないようだ。自社の経理財務部門が成長戦略をリードしていると回答した経理財務責任者は34%にとどまる。リードができていない理由はリソースの不足が要因の1つだ。野村氏は活用できる社内データの不足と、人材の問題をその理由に上げる。
社内データの不足については、経理財務部門がKPI管理や予算編成、予実管理、フォーキャスト作成などを行おうとしても、勘定科目体系やコード体系の標準化が企業グループ内で進んでおらず、適切に行えていない現状を指摘した。調査結果によると、経理財務責任者の40%がデータ量の増大やデータの不整合、データ活用の複雑化が経理財務部門の課題になっていると回答している。また経理財務責任者の55%が経理管理を高度化するための予測精度の向上が求められると回答。49%がキャッシュ・フロー管理の強化、40%が財務データのさらなる可視化が必要と答えている。
「IFRS
対応では勘定科目体系や会計処理方法をグループ内で統一し、売上計上などの定義を合わせることが重要とされている。だが、現状は子会社によって売り上げの基準や会計処理が異なっていて、正確に各社の財務状況を評価できないという企業も多い。経理財務部門はビッグデータともいわれる大量の社内データの活用が可能な部門。ビッグデータを迅速に整理して、適切な人に適切な形で提供することが求められる」(野村氏)
海外子会社の経理人材が不足
もう1つのリソース不足は人材だ。財務責任者の36%は新たな社員プログラムを実施する計画があると回答。その内訳として、他社と比較して競争力のある給与と福利厚生の導入(62%)、個人の成果にひも付く報酬体系の導入(60%)が挙がっている。「グローバル企業では優秀な人材を獲得して、社内に留めておく施策を真剣に考えている」(野村氏)。
一方、日本企業は、他国のグローバル企業とは異なる認識を持っているという。「欧米企業では税務や最新の会計基準に知識が足りないとして、自社の経理財務部門に対してスキルアップしてほしいという要望が強い。だが、日本企業の経営幹部は現場のスキルレベルは高いと評価している」(野村氏)。日本企業の問題意識は、本社経理財務部門ではなく、「海外子会社に人がいないということ」だという。製造業中心に日本企業の海外での売上比率が高まる中で、海外子会社における経理財務部門のスキルアップが求められているのだ。
ただ、この問題は企業の人事制度にも関係する。CFOが海外子会社も含めて経理財務部門の人事を統括することが多いグローバル企業と異なり、日本企業では「CFOといっても日本本社の経理財務部門が中心で、横ぐしで組織の人事権限などを持っている企業は多くない」(野村氏)からだ。
日本企業は伝統的に子会社の独立性を尊重してきた歴史もあり、本社といえども子会社の人事に関与していないケースも多い。結果的に経理財務部門のスキルにグループ内でばらつきが出ているのだ。「経理財務部門と、現地法人の人事部門とが相談して人事を決めているケースもあるが、そうすると現地法人の力量以上のことはできない。海外では企業が競い合って優秀な人材を獲得している。日本のグローバル企業は人事部とタッグを組み、グローバルの経理組織の仕組みとして積極的な人材採用を考えておく必要がある」。
今回の調査で見えてきたもう1つの傾向はアウトソーシングに興味を持つ日本企業の増加だという。2008年の調査では経理財務業務のアウトソーシングについて具体的に検討するという日本企業の回答は皆無だったが、今回の調査では約3割の企業が実施するかどうかを検討すると回答した。野村氏は「国内の人件費が高くなり、大胆な改革を打ち出さざるを得なくなっている」と分析する。
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