会社を元気にする次世代アプリケーション【第1回】
マーク・ベニオフ氏が出資、経費精算を極めた「Concur」の機能を見る
企業に浸透しつつある次世代アプリケーションを紹介する。連載第1回ではクラウド、スマートフォンを活用し、経費精算の効率性や透明性を高める「Concur」を取り上げる。
企業向け業務アプリケーションには多数の“定番”アプリケーションがある。ERPやCRM、SFAなどでは、名前がすぐに浮かぶ製品があるだろう。しかし新しい定番になることを目指す、次世代アプリケーションも次々と日本に上陸している。クラウドコンピューティング、スマートフォンなど新しい技術を積極的に活用し、会社を元気にする次世代アプリケーションを紹介する。
マーク・ベニオフ氏が日本法人に出資
「Concur」は米Concurが開発する経費精算アプリケーションだ。Concurの設立は1993年で、2011年2月には日本法人であるコンカーを設立した。SAPジャパンなどで活躍した三村真宗氏が代表取締役社長として率いる。日本法人には米本社の他、セールスフォース・ドットコムの日本進出を支援したサンブリッジと、セールスフォース・ドットコム CEOのマーク・ベニオフ氏が少額出資する。サービスは国内でも提供済みで、海外企業の日本法人を中心に110社が国内で使っているという。
Concurは従業員の経費精算をSaaSで提供する。サービスを一言で言えばそうなるが、三村氏は「ERPの経費精算機能とは作り込みが違う」と胸を張る。他の経費精算アプリケーションが入力の簡便さを競う中で、三村氏は「入力の簡便さは当たり前。Concurの特徴は経費精算で入ってきたデータの可視化と、経費が規定に違反していないかどうかをシステム的にチェックできることだ」という。
信号の色で経費申請を管理
実際にConcurを利用するケースを説明しよう。例えば従業員がクライアントPCを購入した場合、WebブラウザでConcurを開き、その価格や購入日、販売店などを登録する。社内プロジェクトに関連した購入の場合は、そのプロジェクトコードなども入力する。これらの項目は社内の経費規定やポリシーに応じてカスタマイズできる。また請求書はその画像を添付する(3万円以上の支払いでは原本も提出)。この情報を上司に送信し、上司や経理部の承認が得られたら実際に立て替え経費が従業員に支払われるという流れだ。このワークフロー自体は一般的な経費精算アプリケーションと変わらない。
Concurの特徴は規定管理エンジンを組み込んでいることだ。どの企業でも経費精算に関して経費規定がある。例えば、旅費交通費、消耗品費、雑費など経費精算ができる範囲、金額の上限、決裁権者、締め日と精算日、事前承認の必要性、領収書の扱いなどが決められている。しかし、多くの企業では「マネジャーも含めて、誰も経費規定を覚えていない」(三村氏)。結果的に経理部が事後的にチェックをすることになるが、その作業は膨大だ。かといって経費規定に反した経費申請を許してしまうと、企業としての内部統制が脆弱になる。
Concurでは、赤黄緑の信号表示で従業員に経費規定を守らせるようにしている。例えば、必要な情報が全て入力されていて、金額や領収書も適正な場合、緑の信号表示が上司の承認画面に出る。一方で情報が不足していたり、領収書の添付がないなどの不備がある場合は、黄色信号となり、従業員の入力画面にアラートが発せられる。従業員は必要な情報や領収書の添付がない理由をコメントとして付けなければ、経費申請ができない。申請された場合でも、上司は黄色信号が付いた経費申請を注意深くチェックすることになり、不適切な経費申請は却下することができる。さらに経費規定に反した申請では赤信号となり、従業員は経費申請できない。システムで経費申請を事前にチェックすれば、経理部に申請が集まった段階では情報が適正になっていて、その後の処理をスムーズに進めることができる。
Concurは分析機能を組み込んでいて、経費精算の分析結果をリポートとして出力することも可能だ。これによって経理部は経費精算プロセスや経費規定の適正性をチェックしたり、経費が適正に使われているかどうかを確認できる。
「経費承認が蓄積されると部門や会社全体の傾向が分からなくなる。また経理部に情報が集まった段階では勘定科目ごとにまとめられ、詳細は分からない。ConcurではBI(ビジネスインテリジェンス)を組み込むことで、会社や部門の経費利用の傾向を分析できる。例えば会社全体で黄色信号の申請が多いなら、経費規定が誤っている可能性がある。特定部門で黄色信号が多いならその部門のマネジャーの承認がおかしいということになる」(三村氏)
Suica、PASMOにも対応へ
外出が多い従業員にとってはスマートフォン対応も役立つ機能だ。iPhoneやiPad、Android端末、BlackBerryのアプリケーションでPCのWebブラウザと同様の作業ができる他、スマートフォンで撮影した領収書の画像をメールで提出することもできる(参考記事:動画で見る、スマートフォン対応ERPの最前線)。
また、国内での利用を想定した機能ではSuicaなどの交通系ICカードへの対応がある。PCのICカードリーダーでICカードを読み込むと利用履歴がConcurに表示され、その中から交通費として経理申請をしたい項目をConcurにインポートすることができる。乗り換え案内サービス「ジョルダン」が組み込まれていて、経路に対する交通費が自動で表示される。これによって煩雑な交通費申請も簡単に済ますことができる。ICカードの実際の利用履歴がベースとなるため、誤りや不正な申請を防ぐことが可能だ。この機能は2012年2月に提供開始する予定だ。
米国ではConcurと法人カードを併せて使うことで、さらに経費精算の透明度を上げている。Concurがクレジットカード会社と提携していて、法人カードでの支払いが全てConcurに自動で登録される。従業員はその中から経費精算する項目を選んで経費申請を行う。それ以外の項目は私費利用として自らに請求される。
法人カードで経費精算する項目は、例えば「ホテル代金」としてまとまった金額が表示されるだけではなく、その中のレストラン代金やクリーニング代金、ルームサービス代金などの詳細項目も表示される。ホテル代金に私費利用が含まれる場合は、それを除いて経費申請をすることになる。ホテル代金の中に私費利用の項目を混ぜることができない仕組みになっているのだ。
この機能はVISA、 MasterCardなど海外のカードであれば国内でも既に提供可能。JCBなど日本のカード会社とは現在、提供について協議しているという。法人カードというと役職者が使うイメージがあるが、Concurは一般従業員も法人カードを使うという慣習を日本に持ち込むことを狙っている。「従業員が現金を扱わないようにすることで、透明性が向上する」(コンカー 執行役 最高技術責任者の佐山宇宏氏)としている。
月額数百円で利用可能
Concurの利用料金は経費申請の件数に応じた従量課金。利用規模に応じてボリュームディスカウントがあり、平均すると従業員1人当たりの月額料金は数百円程度という。外資系以外の日本企業への拡販はこれから本格化させる考えで、三村氏は「最近提案した企業では、打率7割で見積もり依頼をされた」と自信を見せる。「日本法人設立時の資本金は4億円と、日本に対する米本社のコミットは大きい。日本を世界で2番目の売り上げにするのが目標だ」
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