クラウドERP製品カタログ【第3回】エス・エス・ジェイ
真の意味でのSaaS――「SuperStream-NX」が提供する価値とは
多くのユーザーを抱える「SuperStream-NX」のSaaS版が登場した。中堅・中小企業だけでなく、グローバル展開するような企業もターゲットにした製品だ。「真の意味でのSaaS」の真意を探る。
「SuperStream-NX」のSaaS提供を開始
キヤノンMJ ITグループのエス・エス・ジェイ(以下、SSJ)が提供する「SuperStream」は、初代バージョンのリリースから16年の間に6000社以上もの導入実績を重ねてきた、国産ERPパッケージ製品の代表選手の1つである。
同製品には、伝統的なクライアント/サーバ型のアーキテクチャに基づいて作られた「SuperStrem-CORE」と、完全Web対応版の「SuperStream-NX」の2つの製品ラインがあるが、SSJは2010年11月、SuperStream-NXの機能をSaaSのサービスとして提供することを発表した。実際にサービスの提供が始まったのは2011年2月からだが、本稿執筆時点(2011年8月)で早くも導入企業が現れ始めているという。
同社 マーケティング部 部長 山田 誠氏は、このSuperStream-NX SaaS対応版のビジネスの将来性に自信をのぞかせる。
「SuperStream-NXは完全Web対応しており、クライアント環境にはブラウザさえあればいい。一方、他社のSaaS/クラウドコンピューティング型をうたっているERPアプリケーションの中には、単にクライアント/サーバ型アプリケーションをホスティングしたようなものもある。しかしSaaSやクラウドとは本来、アプリケーションの全ての機能がサーバ上にあるもの。そういう意味では、SuperStream-NX SaaS対応版は、真の意味でのSaaSソリューションだと胸を張っていえる」(山田氏)
一般的にWebアプリケーションの弱点とされるUIの使い勝手に関しても、マイクロソフトのRIA技術である「Silverlight」を全面採用することで、十分にカバーしているという。
「経理部門の現場では、伝票入力のために実にハードな入力操作が行われる。HTMLとJavaScriptだけで作ったUIでは、これになかなか追随できないのが実態だ。その点、RIAであるSuperStream-NXの画面は見た目に優れるのはもちろんのこと、ハードな入力操作にも十分追随できる」(山田氏)
会計分野の広範な機能をカバーするソリューション
パッケージがカバーする機能の範囲という面でも、SuperStream-NX SaaS対応版には強みがあると山田氏は言う。
「SuperStreamはもともと、業種・業態を問わず業務適合率が最も高い会計と人事の領域に機能を絞っている。SaaSやクラウドの最大のメリットの1つは、迅速かつ低コストにアプリケーションを導入できる点にあるが、そのためにはカスタマイズ要件は少なければ少ないほどいい。そういう意味では、業務適合率の高い分野に機能を絞ったSuperStreamは、SaaSでの提供に極めて適している」(山田氏)
ちなみに、オンプレミス版のSuperStream-NXは財務会計、人事管理、管理会計の機能を実装しているが、今回SaaS対応版で提供される機能は、そのうちの財務会計と管理会計になる。人事管理機能のSaaS提供に関しては、山田氏いわく「前向きに検討中」とのことだ。
また、一般的にSaaS型のアプリケーションというと、中小企業向けの「お手軽な」ソリューションという印象が強い。事実、コストを低く抑える代わりに、機能とカスタマイズの自由度はある程度制限されることが多い。
SuperStream-NX SaaS対応版も同じく、主なターゲットユーザーとして中堅・中小企業を想定しているという。しかし、決して機能を絞り込んでいるわけではない。もともと大手・中堅企業向けに開発され、洗練されてきたSuperStream-NXの各種会計機能が、SaaS版でもそのまま利用できるようになっている。
「中小企業向けのお手軽なSaaSアプリケーションでは、一般会計の機能の他は、せいぜい支払管理の機能があるぐらい。しかしSuperStream-NX SaaS対応版ではマネジメントアプローチに基づく各種の管理会計機能も提供している。従ってSaaSとはいえ、単に軽くて安いというものではなく、高付加価値型のソリューションを志向している」(山田氏)
さらに山田氏によると、これまでコストがネックとなりSuperStreamの導入をためらってきた企業にとっては、同じ機能をSaaS版で安価に導入できるメリットがあるという。一方、中小企業にとっても、こうした広範な機能を積極的に活用する価値は高いとも力説する。
「伸び盛りの成長企業こそ、どんぶり勘定ではなく、つぶさに会計を見ていく必要がある。単に損益計算書で経営の概況を判断するだけではなく、部門別やセグメント別できちんと経営状況を可視化していくことが、ビジネスの継続的な成長には不可欠。そのための機能をオールインワンでパッケージングし、かつSaaSで安価に利用できるSuperStream-NX SaaS対応版は、まだ規模の小さい成長企業にこそ導入メリットが大きいはずだ」(山田氏)
グローバル対応機能で日本企業の海外展開を支援
SuperStream-NX SaaS対応版が持つもう1つの大きな特徴が、グローバル対応に力を入れている点だ。既に2011年秋から2012年初めにかけて、SuperStream-NX オンプレミス版の英語版がリリースされる予定となっている。さらに、SuperStream-NX SaaS対応版はオンプレミス版と同じソースコードから開発されているため、SaaS対応版も同じタイミングで英語版が提供開始される。
SaaS型のERPアプリケーションがグローバル環境で利用できることには、さまざまなメリットがある。昨今の経済のグローバル化や国内市場の縮小、海外新興市場の勃興などを背景に、日本企業が海外に進出するケースが年々増えつつある。それに伴い、海外拠点のビジネスインフラをいかに迅速に、かつ低コストで立ち上げるかが、新たなビジネス課題としてクローズアップされるようになってきた。
一昔前であれば、こうしたニーズに応えることができるERPパッケージ製品は、一部の大手外資系ベンダーの製品に限られていた。しかし、国産パッケージ製品のグローバル対応が進んだことで、こうした状況は一変しつつあると山田氏は述べる。
「外資系ベンダーのERPパッケージ製品は、グローバル対応にはもともと強いものの、給与計算や固定資産・リース管理などといった日本固有の要件については弱かった。しかし、日本のグローバル企業をサポートするのであれば、本来は日本向けの機能がメインになり、それをベースにグローバル対応していくのが本来の姿だ。その点、遅ればせながらSuperStream-NXがグローバル対応することで、日本企業のための本来あるべきグローバルERPが実現できると考えている」(山田氏)
加えて、アプリケーションの機能をSaaS型として提供することで、海外拠点でのシステム立ち上げを低コストで、かつ迅速に実現できるメリットもある。新たな拠点を新設するたびにサーバを導入し、システムを新たに構築していたのでは、コストも時間もかかってしまう。また、オンプレミスシステムを運用管理するための要員を現地に置くコストもばかにならない。その点SaaS型であれば、そうした作業やコストが一切不要になるのだ。
グローバル企業のグループ経営にも対応
また、企業グループ内の基幹システム基盤の統一化を推し進める上でも、SaaS型アプリケーションは有用だ。例えば、日本国内の本社にはSuperStream -NXのオンプレミス版を置き、海外拠点ではSaaS対応版を利用するような形を取れば、効率的にグループ内のシステム基盤を統一できる。このことはそのまま、グローバルレベルでのグループ経営基盤の強化につながる。
「SuperStreamのユーザー企業の4社に1社が、海外拠点を持っている。しかし多くの場合、海外拠点では現地の安価なERPパッケージ製品を導入して、Excelファイルを介して本社のSuperStreamと連携を取っている。これでは、報告された数字の妥当性を検証することもできないし、海外拠点で普段何をやっているのか、本社の目が全く行き届かないことになる」(山田氏)
その点、SuperStream-NXでグループ内のシステム基盤が統一できれば、海外拠点の経営状況をリアルタイムに可視化できる。本社から各拠点に対してガバナンスを効かせやすくなるばかりでなく、より迅速で高精度な経営判断も可能になるというわけだ。
さらにもう1つ、ERPパッケージ製品のグローバル対応で欠かせない要素が、「IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)」への対応だ。SSJでは既に、SuperStreamをIFRSに完全対応させることを正式にアナウンスしているが、その一方でIFRSをめぐる情勢は近年、不透明さを増している。2015年もしくは2016年のIFRS強制適用は、現時点(2011年8月)では見送られる公算が高まってきた。しかしこうした動向にもかかわらず、SuperStreamのIFRS対応の方針に一切変更はないと山田氏は説明する。
「たとえIFRSの強制適用時期が延びたとしても、既にIFRSの早期適用に向けて動き始めているユーザー企業は後戻りすることはできない。そうしたユーザーをしっかりサポートしていくためにも、われわれの製品のIFRS対応スケジュールを変えるつもりはない」(山田氏)
パートナー企業が個別サービスとして提供
なお、SuperStream-NX SaaS対応版は、SSJから直接提供されるのではなく、同社のパートナー企業が自社のデータセンターやクラウド基盤を使って提供する形が取られる。既に、日立情報システムズやキッセイコムテック、鈴与シンワートなどをはじめ、SSJの主要パートナー企業15社からSuperStream-NX SaaS対応版の提供が開始されている。
サービスの提供形態には2種類が存在する。1つが、同一のデータベースと同一のサーバの中に複数のユーザー企業のシステムを共存させるマルチテナント型。別の言葉で言えば「パブリッククラウド型」だ。そしてもう1つが、ユーザー企業ごとに個別のシステム環境を割り当てるシングルテナント型、つまり「プライベートクラウド型」である。
後者のシングルテナント型は、セキュリティが完全に担保される点や、オンプレミス版と同等のカスタマイズが可能といったメリットがある。しかし、SaaS/クラウドによるシステム調達の本当のメリットを享受できるのは、前者のマルチテナント型ではないかと山田氏は述べる。
「シングルテナント型の場合、企業に割り当てられた環境ごとにOSやミドルウェアのライセンス料金が発生するし、ハードウェアリソースの利用効率にもどうしても無駄が生じてしまう。そうして発生する無駄なコストは結局、ユーザーの利用料金に跳ね返ることになる。やはりマルチテナント型こそが、SaaS/クラウド型ソリューションの本質的な姿だと考えている」(山田氏)
SuperStream-NX SaaS対応版は、マルチテナント型であっても個々のインスタンス間のセキュリティ境界が強固に守られるアーキテクチャになっており、またカスタマイズも技術的には可能になっているので、多くのユーザーがマルチテナント型に対して抱く不安は払拭されていると山田氏は断言する。事実、パートナー企業による提供形態も、多くがマルチテナント型だという。
利用料金は、各パートナー企業が提供する付加サービスやサービスレベルにより若干異なっている。参考までに一例を挙げると、キッセイコムテックが提供するサービスでは、初期登録料が5万円(税別、以下同じ)、月額利用料が3ユーザーで7万8000円となっている。
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