「Oracle EPM&BI Summit 2011」リポート【前編】
オムロンが新経営管理システム構築、製造業が学べることとは
次の打ち手を示すことで企業の成長を支援する経営管理システム。オムロンは30年使ってきたメインフレームベースのアプリケーションを刷新し、意思決定スピードを向上させる新経営管理システムを構築した。
企業の予算や実績を管理し、次の打ち手を早期に示す経営管理システムが注目されている。これまで管理会計といわれていたカテゴリのシステムだが、経営管理システムでは企業グループ全体を対象に、リアルタイムに予実を管理し、さらにシミュレーション機能によって次のアクションを指し示すことができるという特徴がある。8月3日に開催された日本オラクル主催の「Oracle EPM&BI Summit 2011」ではこの経営管理に取り組む企業の事例が多数発表された。今回はその中から前編としてオムロンの事例を紹介しよう。
急速な事業のグローバル化に対応
「新連結決算システムは2010年5月に本番稼働した。これまでのシステムとの並行稼働はせず、一気に切り替えた。リスクだったがそうしないと20年来使ってきたシステムをなくせなかった」
オムロンのグローバルプロセス革新本部 IT革新センタ IT経営構造改革アドバイザーの西阪啓一氏は講演でこう話した。オムロンは2000年代後半からITシステムを含めた社内の構造改革を進めてきた。危機感としてあったのは事業が急速にグローバル化する中で、経営陣が各事業の現状を把握できず、またシステムや業務の統制ができなくなることだった。同社の海外売上比率は2000年に29%、それが2010年には50%まで増加した。オムロングループ3万5684人の従業員のうち、海外子会社の社員は2万4263人。オムロンは世界で稼ぐことを目指す「日本の製造業の縮図のようになっている」(西阪氏)のだ。
より確実なPDCAサイクルを実施
財務・経理とITシステムに関する構造改革の狙いは2つあった。1つは財務会計と管理会計の業務プロセスを統合し、それぞれの数値を一致させる財管一致の実現。もう1つは世界の各地域拠点に分散する経理業務の決算プロセスやITシステムを統合し、本社主導で一気通貫に業務処理ができるようにするグローバル対応の強化だった。この2つを達成することで業務手順の透明性が増し、意思決定の迅速化ができると期待した。特に意思決定の迅速化については、「Oracle Hyperion Financial Management」(以下、Oracle HFM)や「Oracle Business Intelligence」を導入してPDCAサイクルが確実に回るようにした。
オムロンが強化したPDCAサイクルは次のような内容だ。データウェアハウス(DWH)で分析した過去の実績を基に目標を設定し、目標達成のための施策を実施する。次いでDWHを使ってその実績をモニタリング。実績数値に予算との乖離や前年度との大きな違いがあるときは、BI(ビジネスインテリジェンス)によって原因を分析する。そして次の打ち手を発見し、実施する。このようなPDCAサイクルを回すためには、グローバルで標準化された財管一致システムが必要だったのだ。
この財管一致の新経営管理システムでは、世界各地の子会社170社が財務データを直接、Oracle HFMに入力する。これによって本社側が子会社の生データを確認できる。新経営管理システムの構築以前は、子会社側が連結決算用にデータをまとめて本社に送信していた。そのため本社側は子会社の経営情報を深く知ることができなかった。「各子会社の状況がブラックボックスだった」(西阪氏)。しかし、Oracle HFM導入で子会社までさかのぼって財務データを確認したり、業務プロセスの状況を確認できるようになった。
月次リポート作成期間が短縮
今回のIT構造改革は複数あった経営管理システムを統合する狙いもあった。それらの多くは「30年前にメインフレームで構築されたレガシーアプリケーション」(西阪氏)で事業変化に合わせた柔軟な機能追加が難しく、また運用管理・保守のコストも掛かっていた。それをオープン系システム、オラクルのアプリケーションに移行することで「IT関連コストの総枠を圧縮する」(同氏)ことを狙った。一方で、同社の強みを支える領域についてはカスタムアプリケーションを開発し、SOA技術でオープン系システムと柔軟に連携できるようにした。
新経営管理システムの成果は業務プロセスのスピードアップに表れた。西阪氏によると、新経営管理システムによってグローバル連結の社内向け月次リポートを従来の8日から7日に1日短縮できた。将来は4~5日で月次リポートを出せるようにしたいという。
オムロンも多くの企業と同様に2000年以降のITバブル崩壊やリーマンショックで大きな影響を受けて事業を悪化させた。そこから業績を順調に回復させてきた背景には、構造改革と経営管理システムがある。西阪氏は「いつかこういうこと(業績悪化)が起きるだろうと業績の良いときに構造改革をしてきた。その際にフル活用したのが経営情報のシステムだった」と振り返った。
後編では経営統合を機に経営管理システムを拡張させた三越伊勢丹ホールディングスの事例を紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「Oracle EPM&BI Summit 2011」リポート
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[ゾーホージャパン株式会社] サイバー攻撃からネットワークを守る上で確実に押さえておきたいポイントとは? -
事例
[アルプス システム インテグレーション株式会社] 中小企業でも安心して活用できる「手ごろなSOCサービス」とは? -
製品資料
[株式会社シーイーシー] 脱VMwareに成功した企業は何をどう実践した? 事例に学ぶ戦略立案&実装のコツ -
製品資料
[株式会社オービックビジネスコンサルタント] ランサムウェア攻撃を“二重の防御構造”で防ぐ、クラウド型基幹システムの実力 -
製品資料
[株式会社オービックビジネスコンサルタント] 動画で知るランサムウェア被害企業のリアル、会計データが無事だった理由とは
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
鹿島建設のDXを阻む「10年前のAWS」 安全性と自由度を両立したモダナイズ
-
4
AIの導入効果はどう測る? DMM.comのエンジニア組織に学ぶ効果検証のノウハウ
-
5
「企業におけるAI導入検討度とIT投資優先度」に関するアンケート
-
6
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
-
7
「ノートPC派」は損をしている? Dellと考える“自作PC”のメリット
-
8
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
-
9
新旧「Outlook」混在の恐怖を三星ダイヤモンド工業はどう乗り越えたか
-
10
「Excel管理」では限界――製造現場の改善が進まない“隠れた原因”
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
9
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー