ERP製品カタログ【第7回】エス・エス・ジェイ
グローバル進出をにらむ「SuperStream」、視線の先には何が?
新たにSaaS対応を発表した「SuperStream」が機能強化を急いでいる。特にグローバル対応機能を追加することで大企業顧客を獲得したい意向だ。IFRS対応にも先進的に取り組む同社に戦略を聞いた。
豊富な実績を持つ国産ERPパッケージ「SuperStream」
エス・エス・ジェイ(以下、SSJ)が提供する「SuperStream」は、中堅・大手企業向けの国産ERPパッケージとして長い実績と高いシェアを持つ製品だ。現在、SuperStreamは2つの製品ラインに分かれている。1つは、1999年に初代バージョンがリリースされた「SuperStream CORE」。既に12年近い歴史があり、6000社近くもの導入実績を持つ。
もう1つが、2009年12月にリリースされた「SuperStream NX」である。こちらは、既に長い実績を持つSuperStream COREの機能を引き継ぎつつ、さらにWebアーキテクチャやグローバルビジネス、クラウドコンピューティングなどに対応した製品である。
まずは、SuperStream COREの特徴を簡単に紹介しよう。同製品は、主に会計と人事の業務をカバーするERPパッケージ製品である。それ以外の業務領域に関しては、SuperStream COREは機能を提供せず、他システムとの連携によって対応する。なぜ会計と人事以外の機能は実装していないのか。その理由を、SSJ マーケティング企画部 部長 山田 誠氏は次のように説明する。
「企業が行う業務の中で、会計と人事は極めて普遍的で企業や業態ごとの違いが少なく、従ってパッケージ製品の業務適合率も高くなる。パッケージ製品とは本来、どんなユーザーの用途にも耐える普遍的なものであるべきだと考えていて、そうなるとおのずと適合率が高い会計と人事の機能を優先的に実装することになる。この方針は、会社設立時からずっと固持している」
このような考えから、同社の製品はすべて会計・人事の機能を中心に構成されている。またSuperStream COREは、会計・人事業務をさらに細分化して、それぞれをモジュール化して個別に提供している。複数のモジュールの中から、自社に必要なものだけを選んで組み合わせることができるようになっている。これは同製品に限らず、現在市場に出回っている多くのERPパッケージ製品が採用している方式だ。
新しい技術とアーキテクチャを大幅採用
一方のSuperStream NXも、SuperStream COREと同じく、主に人事・会計の機能をカバーするERPパッケージ製品である。しかし、単なる派生製品ではなく、SuperStream COREとは別にまったく新規に開発した製品である。SuperStream COREとの相違点はどこにあるのだろうか?
まず最大の違いは、ユーザーインタフェースを含めた全体のアーキテクチャにある。クライアント/サーバ型アーキテクチャを採っているSuperStream COREに対して、SuperStream NXは完全にWebに対応したアーキテクチャだ。クライアントPCに専用ソフトウェアをインストールする必要はなく、基本的にはブラウザさえあれば利用できる。
業務アプリケーションのWeb化には、運用管理面で多くのメリットがあることが知られている。しかし、会計業務における複雑な入力処理を、HTMLのインタフェースだけで行うには限界がある。SuperStream NXでは、RIA(Rich Internet Applications)技術を採用することで、これを克服している。具体的には、マイクロソフトの「.NET Framework」「Silverlight」の実行環境上でユーザーインタフェースを動作させることにより、クライアント/サーバ型アプリケーションに見劣りしないリッチなインタフェースを実現している。
また先述したように、SuperStream COREは業務モジュールを個別に導入することが可能だが、一方のSuperStream NXはすべての機能を統合した形でのみ提供される。こうした方針を採った理由について、山田氏は次のように説明する。
「SuperStreamの既存ユーザーの声を聞くと、『“ワンファクト”でやりたい』という要望が多かった。つまり、各業務モジュールで別々にデータを持ち、モジュール間インタフェースを介して連携するのではなく、マスターデータを一元管理して、業務間の連携を自動化・リアルタイム化したいというニーズが増えてきていた」
SuperStream NXでは、例えば支払い管理で入力したデータが自動的に会計管理に渡り、リアルタイムに会計データとして参照でき、財務諸表への転記といった処理もバックグランドで自動的に行われる。山田氏によれば、業務モジュールを個別に組み合わせてシステムを構築する文化が根強い国産ERPパッケージでは、このような自動連携やデータのリアルタイム参照ができる製品は、多くないという。
また、外部システムとの連携に関しても自動化・リアルタイムを追求している。通常のERPパッケージ製品では、CSVファイルのエクスポート/インポートにより外部システムとの連携を図ることが多い。一方、SuperStream NXはWebサービスの外部インタフェースを備えており、これを介して自動的に外部システムと連携できる。この仕組みを使って定期的に外部システムからデータをSuperStream NXに取り込み、ほぼリアルタイムに会計システム上で参照できる。
SaaSでの利用も可能に
SuperStream NXは今後、これまで紹介してきたようなアーキテクチャ面での新しさだけではなく、機能面やサービス面でもさまざまな強化をしていく予定だという。その1つが、SaaS対応である。SSJは2010年11月、SuperStream NXのSaaS(Software as a Service)対応版を発表した。2011年2月から、同社のパートナー12社がSuperStream NXのSaaSを提供開始する予定である(参考記事:SuperStreamのクラウド利用が可能に、月額数万円から)。
SuperStream NXのSaaSは、大きく「パブリック型」と「プライベート型」の2種類に分かれる。パブリック型は、サービスを利用する企業は基本的にすべて同じプログラム、同じデータベースを共有する。一方、SuperStream NXの機能に大幅にカスタマイズを加えたい場合には、プライベート型が利用できる。こちらは、利用企業ごとに個別にSuperStream NXのインスタンスを保有できるサービス形態。料金はパブリック型より高くなる予想だが、よりきめ細かい要件に対応可能となる(参考記事:2011年は「クラウドERP」元年になる)。
あるいは、両方を使ったハイブリッド型の使い方も有効かもしれないと山田氏は言う。
「グローバルにビジネスを展開している企業の場合、国内の本社はオンプレミスあるいはプライベート型SaaSでシステムを構築し、海外拠点ではパブリック型SaaSを利用するような使い分け方も考えられる」
なお、同社ではSaaSだけでなく、ビジネス全体にわたって今後はグローバル対応に力を入れていく予定だという。2011年にはSuperStream NXの英語対応版が提供される予定で、その後も順次多国語対応を進めていくという。
IFRSコンバージェンスへの対応を開始
同社がグローバル対応に力を入れる背景としては、IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)の存在がある。山田氏は次のように述べる。
「IFRSが日本で浸透し、会計制度が世界中で統一されるという状況は、逆に言うと日本のERPパッケージ製品が海外に進出するいい契機になるのではと考えている。SSJでも、2011年を『グローバル進出の元年』と位置付けている」
なお同社は2010年4月に、SuperStreamシリーズにIFRS対応機能を標準装備することを公式に発表している(参考記事:SSJ、SuperStreamにIFRSコンバージェンス対応機能を標準搭載へ)。具体的には、IFRSコンバージェンスに対応する個別機能を既に順次提供しており、2010年2月には「資産除去債務」への対応機能を提供開始している。また、「包括利益表示」に関しても、既に先行して対応機能を提供している。
さらに2011年1月には、同年4月から制度適用が開始される「過年度遡及修正」への対応機能も提供開始する予定だ。もちろん、その後も「企業結合」「無形資産」「固定資産の減損会計」など、順次適用が予定されているコンバージェンス項目に関しては、制度改正の状況をにらみながら随時対応していくという。
また、日本の会計基準とIFRS、それぞれの総勘定元帳のデータベースを保持・管理できる「複数帳簿機能」も、2012年以降に提供予定となっている。この機能により、単体のSuperStreamで日本基準とIFRS双方の会計情報を並行して管理できるようになり、ユーザー企業の経理部門の作業負荷を大幅に低減できるという。
既に、同社製品の既存ユーザーからもIFRS対応に関して多くの問い合わせがあり、大手ユーザーの中には早期のIFRS任意適用を検討している企業も少なくないという。また、将来のIFRS適用を視野に入れてSuperStreamを新規導入する例も多いという。
ちなみにERPのIFRS対応に関しては、既に海外(特に欧州)でIFRS対応の実績がある外資系ERPパッケージが有利であるとの風潮もあるが、山田氏は「これは個人的な見解だが」と前置きした上で、次のように述べる。
「外資系のERPパッケージは、IFRSへの完全対応、いわゆる『アドプション』には対応しているものの、日本基準のコンバージェンスへの対応は遅い。また、将来的にコンバージェンスが完了した日本基準は、恐らくアドプションしたIFRSとは完全に一致しないだろう。SuperStreamをはじめとする国産パッケージは、コンバージェンスへの対応は早いし、パフォーマンスや安定性の面でも今や大手外資系のパッケージ製品と比べても遜色がない。現在のIFRSをめぐる日本の状況を考えた場合、外資系パッケージより、IFRS対応を表明している国産パッケージを選ぶ方が得策だと思う」
大手グループ企業での利用拡大狙う
IFRSに関連する興味深い機能として、同社は「グループ経営管理」という新機能を2011年夏ごろにSuperStream NXに加える予定だ。これは、SuperStream NXの個別会計機能と、連結会計ソフトウェアとの間に位置して、グループ経営の状態を詳細レベルまで可視化できるという機能だ。同社では、こうした機能強化が呼び水となり、大手企業グループでのSuperStream NXの導入が増えることを期待しているという。
またライセンス面でも、SuperStream NXは企業グループでの導入に適した「Engine(エンジン)」という独自のライセンス形態を用意している。これは、どれだけユーザー数が増えても、またどれだけグループ会社数が増えても、追加課金は一切なしというライセンス形態だ。数十社のグループ企業を抱える大手企業では、こうしたライセンス形態を使うことでコスト削減できるという。
「これまでわれわれは主にオンプレミスでの製品提供を行ってきたが、SuperStream NXではこれに加え、SaaS版で中堅・中小企業に対するソリューションを、そしてEngineライセンスで大手グループ企業に対するソリューションを提供できるようになった。これにグローバル対応も合わせて、ますます幅広い企業にSuperStream NXの良さを訴求していけるようになったと考えている」(山田氏)
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