ERP Now!【第1回】
ビッグバン導入が復活? 注目したい3つのERP導入事例
ERPに関するトレンドを解説する新連載。第1回では注目されるERPの導入事例を取り上げます。トレンドの1つはビッグバン導入の復活。その背景には何があるのでしょうか? 3つの事例を紹介します。
基幹系システムを刷新した「ユニクロ」
製品発表など“点”の情報からでは分かりにくいERPに関する流れやトレンドを解説する新連載「ERP Now!」を始めます。第1回では、最近のERP導入事例を取り上げます。多くのモジュールやシステムを一括で導入するERPのビッグバン導入は、その失敗リスクの高さや導入期間の長期化などから、ここ最近は避けられる傾向がありました。限られたモジュールを、限られたエリアに導入する「小さく生んで、大きく育てる」型の導入が主流になりつつありました。しかし、今回紹介する導入事例を見ると、ビッグバン導入が復活しつつあるように思います。その背景には何があるのでしょうか。
最初に紹介するのは「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの導入事例です。商品企画・生産・物流・販売までを一貫して行うSPA(アパレル製造小売企業)モデルを採る同社は、経営管理の強化とIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)への対応を目的に、基盤系のシステムを刷新しました。導入したのはいずれも日本オラクルのシステムで、会計業務や人事給与業務にはオラクルのERP「Oracle E-Business Suite R12」を導入。そしてIFRS適用で重要性が増すグループの経営管理や連結決算処理では「Oracle Hyperion Financial Management」を採用しました。
また、ハードウェアとしてはデータベースやストレージ、ネットワークを専用筐体に格納した「Oracle Exadata Database Machine」を利用しています。Oracle Exadataはデータウェアハウス処理やオンライントランザクション処理(OLTP)に強みを持つ製品で、オラクルは「処理特性が異なるデータベースの統合、システムおよび業務間のバッチ処理の低減、事業拡大に伴うシステムの拡張性を要件として、Oracle Exadataの性能が評価された」としています。
また、専用のアプリケーションとしてファーストリテイリングはオラクルの流通業向けアプリケーション「Oracle Retail」を使っています。ファーストリテイリングは国内808店舗、海外136店舗に展開していて、Oracle Retailの活用で、グローバルでの販売サービス、商品管理業務の共通化を計ります。
ファーストリテイリングがグループ業務システムの統一プロジェクト「G1プロジェクト」でオラクル製品の採用を決めたのは2010年2月。そして新システムは9月に稼働を開始しました。わずか7カ月間で大規模なシステムがビッグバン導入できた背景には、オラクルのアプリケーションに最適化されたOracle Exadataの利用や、アクセンチュアのシステム構築、そしてNTTコミュニケーションズの仮想ホスティングサービスの利用などがありました。特定ERP専用のサーバ構成、そしてクラウドコンピューティングを活用した短期導入の実現という流れは、ほかのベンダーや製品でも広がるのではないでしょうか。
資生堂がSAP ERP導入、業務標準化を重視
2つめは資生堂が行っている「SAP ERP 6.0」の導入です。NECが支援する導入プロジェクトで、資生堂は2013年度までにSAP ERP 6.0を活用し、グローバルで販売、物流、生産、会計などの基幹業務システムを大規模に刷新する計画です。
注目したいのは、SAP ERP 6.0の導入に合わせて、業務プロセス標準化などの業務改革にも着手することです。具体的には、資生堂は基幹業務システムの刷新と同時に、業務プロセスの標準化やコードなどのデータの標準化、業務評価指標(KPI)の統一などを日本、欧米、アジアのグローバルで行う考えです。社内に情報企画部門と業務部門が一体となった「標準化維持チーム」を立ち上げて、海外各社からのシステムの変更要求に対して受注や出荷などの業務プロセスごとにその妥当性を評価し、対応するといいます。NECはこの標準化維持チームの一員として対応を支援するということです。システムだけでなく、業務改善も含めたビッグバン導入といえるでしょう。
ERPの導入では関連部門や世界の拠点からさまざまな要求が寄せられます。ERPの基本思想が業務の標準化であることを考えると、すべての要求には応えられません。しかし、現場のプロセスとかけ離れたシステムでは、結局使われなくなります。どの要求をどういう視点で受け入れていくのか。ERPの導入ではその判断が極めて重要になります。今回の資生堂のSAP ERP 6.0導入では、要求のレベルをグローバル、リージョナル(地域)、ローカル(現地)の3点に分けて整理し、対応を検討するということです。
外資系ERPから国産ERPに乗り換えた住友林業
3つめの事例は住友林業の「SuperStream」導入です。住友林業は従来、外資系のERPパッケージを使っていましたが、カスタマイズにカスタマイズを重ねた結果、システムの硬直化を招いていたといいます。日本企業はIFRSへの対応を迫られています。硬直化したシステムでは相次ぐ会計処理の変更に迅速に対応できない、と住友林業は判断し、SuperStream導入を決めました。
住友林業が導入を決めたのは基幹会計システムの「SuperStream-CORE」のほか、支払管理、債権管理、固定資産・リース資産管理、手柄管理、分散入力の各システムです。カスタマイズしたのは帳票類などの一部で、ほとんどのシステムはカスタマイズをせずに導入しています。まずは国内グループ企業の3社で利用を開始し、最終的にはグループ28社への展開を計画しています。
ERP市場では、ビジネスが小規模で、国内にとどまっている間は国産のERPを利用し、企業が成長、グローバル展開するようになると外資系のERPに乗り換えるケースが多いようです。外資系のERPは海外の複数拠点でシステムを展開するグループ対応機能を備えていたり、複数通貨、複数言語に対応するなど海外で実績があるために選ばれています。
しかし、外資系ERPからSuperStreamという国産ERPに移行した住友林業の事例にあるように、国産のERPもグループ対応を強化してきています。結果としてERP選定の現場では外資系ベンダーと国産のベンダーが競り合うケースが増えています。その場合に国産ERPが売りにするのは国内の法規制や商慣習への対応、そしてライセンスコスト、サポートコストの安さです。
大規模グローバル企業の定番は、やはりSAPやOracle E-Business Suiteなどの外資系ERPですが、機能強化によって国産のERPが活躍できる領域も広がってきたように思います。一方で、外資系ERPはこれまで国産ERPが得意領域としていた中堅・中小規模企業の市場に対してアプローチを続けていて、競争は激しくなっています。
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