仮想環境のバックアップ製品 選定ポイント【最終回】
【徹底比較】コストを詳細分析、VMware環境の主要バックアップ4製品
VMware環境をバックアップすると、どれくらいのコストが掛かるのか? 小規模/中規模/大規模環境を想定し、主要バックアップ製品を用いたバックアップシステムのコストを比較する。
今回は、これまでに説明したバックアップ製品の選定ポイントおよび機能比較を踏まえて、小規模/中規模/大規模環境でのバックアップシステムのコストを比較する。なお、本記事では、下記の流れで説明を行う。
- システム規模
- バックアップ要件
- バックアップシステムのコスト
システム規模
コストを比較する仮想環境の規模(小規模/中規模/大規模)は、下記の状況を考慮し表1のように想定した。
- 小規模は、VMware vSphere Essentials Plus Kitライセンスでサポートされているのが物理サーバ3台まで
- 中規模は、ブレードサーバを使用した環境で1台のシャーシに搭載できるブレードサーバ数が8台程度のものが主流
- 大規模は、中規模の約2倍の環境を想定
| 規模 | ESXサーバ台数 | 仮想マシン台数 | 容量 |
|---|---|---|---|
| 小規模 | 3台 | 30台 | 3Tバイト |
| 中規模 | 8台 | 100台 | 10Tバイト |
| 大規模 | 15台 | 200台 | 20Tバイト |
バックアップ要件
バックアップデータの種類は、システムデータ(OS)、ファイルデータ、データベース(以下、DB)/アプリデータがある。データの種類ごとのバックアップ/リストア要件と運用、災害対策の要件について定義する。
小規模の要件
比較的小規模の場合は、VADP(vStorage API for Data Protection)や重複排除機能を使用しなくても、運用上支障がないケースが多い。システムバックアップについてはVADPを使用せず、VMwareの機能やバックアップソフトのシステムバックアップ機能、システムバックアップ専用ソフトを使用することを想定する。
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| システムデータ | 仮想マシンを停止した上で、VMwareのクローン機能を使用して不定期に取得 (別ストレージ筐体へクローンを取得することを推奨する) |
| ファイルデータ | バックアップソフトのエージェントによるネットワークバックアップ |
| DB/アプリデータ | バックアップソフトのエージェントによるネットワークバックアップ |
| 運用面 | バックアップ管理者によるバックアップ/リストア |
| 災害対策 | なし |
中規模の要件
中規模環境ではVADPの採用を想定する。VADPバックアップは中規模環境での採用例が多く、システムデータのバックアップの効率化に加え、ファイルデータのバックアップを兼ねることができる。それにより、ネットワークバックアップと比較し、非常に効率が良くなる。
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| システムデータ | VADPによるオンラインバックアップ |
| ファイルデータ | VADPバックアップデータからのファイルレベルリストア(Windows、Linuxともに) |
| DB/アプリデータ | バックアップソフトのエージェントによるネットワークバックアップ |
| 運用面 | バックアップの柔軟な並列実行、リポート/アラート機能など |
| 災害対策 | なし |
大規模の要件
大規模環境を効率よくバックアップするためには、まずは大規模環境に適したアーキテクチャの製品を採用する必要がある。バックアップ対象容量の削減機能を有していることや、バックアップ運用を効率よく行うための機能も必要になる。この点を考慮して以下を要件として想定する。
- 大規模環境に適したアーキテクチャ
- バックアップサーバがスケールアウトできるアーキテクチャ
- Windows、Linuxへの対応
- 物理/仮想環境への対応
- バックアップ対象容量の削減
- 永久差分バックアップ
- ファイルレベルリストア(Windows、Linuxともに可能)
- 削除ブロック、スワップ領域の除外バックアップ
VADPバックアップの速度はバックアップソフトによるが、VMwareデータストア、バックアップ格納ストレージ、バックアップジョブの設計を正しく行ったとしても、1秒当たり300~500Mバイト(1時間当たり約1Tバイト)のパフォーマンスになる。リストアはそれ以下のパフォーマンスとなる。それ以上のパフォーマンスが必要な場合は、VMware・ストレージ連携ソフトの使用を検討してみるのもよい。
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| システムデータ | VADPによるオンラインバックアップ、または、高速なバックアップ/リストアが必要な場合は、VMware・ストレージ連携ソフトを使用する |
| ファイルデータ | VADPバックアップデータからのファイルレベルリストア(Windows、Linuxともに)、または、VMware・ストレージ連携ソフトを使用している場合は永久差分バックアップが可能なバックアップ製品を選択する |
| DB/アプリデータ | バックアップソフトのエージェントによるネットワークバックアップ、または、VADPバックアップデータからのリストアが可能な製品であればなおよい |
| 運用面 | マルチテナント、バックアップの柔軟な並列実行、リポート/アラート機能、高速なリストアなど |
| 災害対策 | 「なし」と「あり」の両方の要件を想定する |
下記に、規模、バックアップ方法、使用するバックアップ製品について、まとめる。
| 規模 | 構成No. | バックアップ方法(システムデータ) | バックアップ方法(ファイルデータ) | バックアップ方法(DB/アプリデータ) | バックアップ製品 |
|---|---|---|---|---|---|
| 小規模 | 1-1 | VMwareクローン | ネットワークバックアップ | ネットワークバックアップ | BackupExec |
| 中規模 | 2-1 | VADP | ネットワークバックアップ | ネットワークバックアップ | NetBackup |
| 2-2 | VADP | ネットワークバックアップ | ネットワークバックアップ | Avamar | |
| 大規模 | 3-1 | VADP | VADP | VADP/ネットワークバックアップ | NetBackup |
| 3-2 | VADP | VADP | ネットワークバックアップ | Avamar | |
| 3-3 | ストレージ・VMware連携ソフト | ネットワークバックアップ | ネットワークバックアップ | NetBackup NetApp VSC Backup and Recovery(筐体内複製を含む) |
|
| 大規模+災害対策 | 4-1 | VADP | VADP | ネットワークバックアップ | NetBackup |
| 4-2 | VADP | VADP | ネットワークバックアップ | Avamar | |
| 4-3 | ストレージ・VMware連携ソフト | ネットワークバックアップ | ネットワークバックアップ | NetBackup NetApp VSC Backup and Recovery(筐体間複製を含む) |
バックアップシステムのコスト
バックアップシステムのコストを比較する際に、バックアップソフトのライセンス費用とバックアップアプライアンスの費用を比較すると、それぞれに含まれているものが異なるため、平等な比較にならない。また、バックアップシステムに関わるコストを正しく比較するためには、設計・構築・運用コストについても本来は考慮する必要がある。ただ、バックアップアプライアンスを採用することで、バックアップソフトと比較して、設計・構築コストを削減できる可能性がある。今回は下記についてのコストを比較する。
| バックアップ製品の種類 | コスト比較の対象 |
|---|---|
| バックアップソフト | バックアップサーバ(HW)、バックアップソフトライセンス、バックアップストレージ |
| バックアップアプライアンス | バックアップアプライアンス ※1 |
| VMware・ストレージ連携ソフト | ソフトライセンス、ストレージ筐体内・別筐体へのコピーを行う場合はその費用 |
※1 バックアップサーバ(HW)、バックアップソフトライセンス、バックアップストレージを含むオールインワンパッケージ
バックアップ製品のトータルコストの考え方は下記の通りである。
・Symantec BackupExec:バックアップソフト:
バックアップソフトのライセンスに加え、ハードウェア(物理サーバ、バックアップストレージ)の費用が発生する。
・Symantec NetBackup:バックアップソフト:
バックアップソフトウェアのライセンスに加え、ハードウェア(物理サーバ、バックアップストレージ)の費用が発生する。また、重複排除機能のライセンスはバックアップ対象の重複排除前の容量で決まる。ライセンスの考え方は、使用する機能ごとのライセンスを積み上げるパターンと、バックアップ対象の容量ベースで見積もるパターンの2パターンがある。
・EMC Avamar:バックアップアプライアンス:
重複排除機能を標準で含むバックアップアプライアンスのため、ハードウェア、バックアップソフトを含めた費用になる。また、バックアップ格納先のサイズで、ハードウェアとライセンスが決まるので、実質はバックアップデータの重複排除後の容量で費用が決まる。
・NetApp VSC Backup and Recovery:VMware・ストレージ連携ソフト:
ストレージのモデルでライセンス費用が決まる。ストレージ筐体内複製を行う場合は、その容量も別途必要になる。ストレージ筐体間で複製を行う場合は、別途追加のストレージとそのソフトライセンスも必要となる。
重複排除機能がある製品の見積もりを行う際に、重複排除後の容量を求める必要がある。ただ、概算でよいのであれば、バックアップ対象容量と同容量のバックアップストレージ容量を見積もればよい。初回のフルバックアップが約半分のサイズになり、その後の2回目以降のフルバックアップ、差分バックアップを数世代分積み上げていくと、重複排除後の容量はバックアップ対象の容量とおよそ同容量になるという考え方である。
ただし、正式な見積もり作成時には、メーカーが提供するサイジングツールなどを使用すること。重複排除機能のライセンスが、重複排除前の容量に依存する製品と、重複排除後の容量に依存する製品があるが、どちらが良いかは一概には言えない。実際に見積もりを取得し、比較してほしい。
【1-1】小規模(BackupExec)
| 見積もり対象 | 参考価格 |
|---|---|
| バックアップサーバ(HW)……1台 バックアップストレージ(10Tバイト)……1台 バックアップソフトライセンス |
約330万円 ※2 |
【2-1】中規模(NetBackup)
| 見積もり対象 | 参考価格 |
|---|---|
| バックアップサーバ(HW)…… 1台 バックアップストレージ(10Tバイト)……1台 バックアップソフトライセンス(重複排除含む) |
約850万円 ※2 |
【2-2】中規模(Avamar)
| 見積もり対象 | 参考価格 |
|---|---|
| バックアップアプライアンス(7.8Tバイト)……1台 | 約670万円 ※2 |
【3-1】大規模(NetBackup)
| 見積もり対象 | 参考価格 |
|---|---|
| バックアップサーバ(HW)……1台 バックアップストレージ(20Tバイト)……1台 バックアップソフトライセンス(重複排除含む) |
約1500万円 ※2 |
【3-2】大規模(Avamar)
| 見積もり対象 | 参考価格 |
|---|---|
| バックアップアプライアンス(20Tバイト)……1台 | 約3100万円 ※2 |
【3-3】大規模(VSC Backup and Recovery+NetBackup)
※3 バックアップ対象のファイル/DBは10Tバイトと仮定する
| 見積もり対象 | 参考価格 |
|---|---|
| バックアップサーバ(HW)……1台 バックアップストレージ(10Tバイト)……1台 バックアップソフトライセンス(重複排除含む) プライマリストレージの筐体内複製領域(20Tバイト) VMware-ストレージ連携ソフトライセンス |
約1200万円 ※2 |
【4-1】大規模&災害対策あり(NetBackup)
| 見積もり対象 | 参考価格 |
|---|---|
| バックアップサーバ(HW)……2台 バックアップストレージ(20Tバイト)……2台 バックアップソフトライセンス(重複排除含む) |
約1800万円 ※2 |
【4-2】大規模&災害対策あり(Avamar)
| 見積もり対象 | 参考価格 |
|---|---|
| バックアップアプライアンス(20Tバイト)……2台 | 約4400万円 ※2 |
【4-3】大規模&災害対策あり(VSC Backup and Recovery+NetBackup)
※3 バックアップ対象のファイル/DBは10Tバイトと仮定する
| 見積もり対象 | 参考価格 |
|---|---|
| バックアップサーバ(HW)……2台 バックアップストレージ(10Tバイト)……2台 バックアップソフトライセンス(重複排除含む) プライマリストレージの筐体内複製領域(20Tバイト) プライマリストレージの筐体間複製先のストレージ(20Tバイト) VMware・ストレージ連携ソフトライセンス |
約1700万円 ※2 |
規模別、製品別にバックアップシステムのコストをまとめると以下のようになる。
| 規模 | 構成No. | バックアップ製品 | 参考価格 |
|---|---|---|---|
| 小規模 | 1-1 | BackupExec | 330万円 |
| 中規模 | 2-1 | NetBackup | 850万円 |
| 2-2 | Avamar | 670万円 | |
| 大規模 | 3-1 | NetBackup | 1500万円 |
| 3-2 | Avamar | 3100万円 | |
| 3-3 | NetBackup NetApp VSC Backup and Recovery(筐体内複製を含む) |
1200万円 | |
| 大規模+災害対策 | 4-1 | NetBackup | 1800万円 |
| 4-2 | Avamar | 4400万円 | |
| 4-3 | NetBackup NetApp VSC Backup and Recovery(筐体間複製を含む) |
1700万円 |
※2 上記は参考価格であり、構成やその他の条件によって大きく変動する可能性がある。実際に検討する際は必ず、提供元に案件情報を添えて正式な見積もりを取得してほしい。
バックアップ製品によってライセンス費用の考え方が異なるので、複数製品のコストを比較した場合、構成によってはコストが逆転することもある。また、今回のコストはあくまでも概算であり、構成やその他の条件によって大きく変動する可能性がある。実際に検討する際は必ず、提供元に案件情報を添えて正式な見積もりを取得してほしい。
バックアップはご覧の通り、決して安いものではない。特に中大規模の仮想環境を効率良くバックアップするためには、ある程度のコストが掛かる。物理環境に比べて仮想環境の方が複雑に見えるが、仮想化することでバックアップがしやすくなると言っても過言ではない。物理環境のときは、バックアップされていたかどうか分からないシステム、リストアテストが行われていないシステムなどが点在していたと思われるが、仮想化が進んでいく中で、バックアップについても整理/統合されていくと考えられる。また、バックアップが統合されることで、災害対策も実施しやすくなる。仮想化をデータ保護全体を見直す良い機会と前向きにとらえていただけるとありがたい。
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仮想環境のバックアップ製品 選定ポイント
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