【連載コラム】医療ITの現場から
診療報酬改定から見えてきた、診療所IT化の方向性
2014年度診療報酬の改定率が決定した。消費税の引き上げを考慮すると“実質マイナス改定”となった今回の改定が、診療所のIT化に与える影響を考察する。
「電子カルテを導入して診療報酬点数が付くなら、すぐに導入するのに……」というのは、電子カルテの導入を迷っている診療所のドクターからよく聞く話です。また、実際には誤報ではありましたが「電子カルテ義務化」という記事がある新聞に載ったときに、メディプラザの来場者が急に増加したことがあります。
制度の変化のウオッチが重要な戦略
政府が打ち出す「診療報酬での評価」「義務化」「補助金」といった各施策は、医療機関の経営に直接影響します。そのため、「医療は制度ビジネス」といわれることもあります。制度の変化を常にウオッチすることは、医療機関における重要な戦略の1つといえるでしょう。もちろん、その中には医療機関のIT化投資も含まれます。かつては、「大規模病院向けの電子カルテ導入に対する補助金」や「レセプト電子化の義務化」などで大きくIT化が進んだ経緯があります。
実質マイナス改定で、診療所のIT化はどうなる?
2014年は2年に一度の診療報酬改定の年であり、多くの医療機関はその動向を見守っています。今回の改定では、消費税が5%から8%へ引き上げられることもあり、その注目度は例年以上に高いように感じます。そのような中で、2013年12月20日に診療報酬の改定率が決定しました。
今回、診療報酬・薬価の全体の改定率を0.1%引き上げ、消費税率の引き上げ相当分を診療報酬、薬価・医療材料に上乗せしています。診療報酬本体が0.73%引き上げ(うち、消費税引き上げ分として0.63ポイントをプラス)、薬価・医療材料は0.63%引き下げ(うち、消費税引き上げ分として0.73ポイントをプラス)となります。表面上はプラス改定で決着しましたが、消費税の引き上げ分を除けば、実質は「マイナス改定」という状況です。
一方、今回の消費税の引き上げによる増収分(5兆円程度)は、全て社会保障の充実・安定化に向けるとされています。「医療・介護の充実」に対しても予算化が盛り込まれており、今後の補助金施策などの動向には注意が必要です。
「主治医機能の強化」から診療所の今後を占う
また今回の改定には、診療所や中小規模病院にとって重要な内容が盛り込まれています。それが「主治医機能の強化」です。「複数の慢性疾患を持つ患者に適切な医療を提供しつつ、外来医療の機能分化・連携を更に推進する」(「平成26年度診療報酬改定の基本方針」より)という方針の下、新たな外来の包括点数が検討されています。
この点数には、診療所や中小規模病院にとって、今後の方向性を考える際に重要な要素が多く盛り込まれています。今回の点数の算定条件の中には、以下の4項目が盛り込まれた案が示されています。
- 服薬管理
- 健康管理
- 介護保険との連携
- 在宅医療
これらは全て今後の診療所経営において重要な要素と言えます。そこで要素ごとにIT化の方向性を予測してみましょう。
(1)服薬管理
患者に処方した医薬品について、医療機関を超えて情報共有を図る試みとして、数年前から「お薬手帳」の活用の重要性が指摘されています。今回の改定を踏まえて、電子お薬手帳の利用、さらにはその先にある処方せんのデジタル化の準備が進むのではないでしょうか。
(2)健康管理
医療費の増大を抑制する施策として、予防医療の推進が進められており、健診情報の活用が重要となります。それを踏まえて、患者の健康管理データ活用(パーソナルヘルスケア)の分野の拡大が見込まれます。
(3)介護保険との連携
医療と介護の連携は、今回の改定でも重要なテーマとして多く盛り込まれています。現在、医療と介護の両面に取り組む医療機関も増えていますが、診療報酬と介護報酬を組み合わせて請求できる仕組みの構築はなかなか難しい部分もあります。多くの医療機関の要望を受けて、医療と介護が一体となった請求処理や情報連携の仕組みが進むと考えられます。
(4)在宅医療
2006年の在宅療養支援診療所の創設以来、改定ごとに在宅医療の重要性が増しています。今回の改定でも、在宅医療に対する手厚い点数設定は継続しますが、一方で診療報酬の算定に関する仕組みの強化が盛り込まれています。カルテ記載の充実や情報共有がさらに重要となり、スマートデバイス活用の動きが活発化するのではないでしょうか。
著者紹介
大西大輔(おおにし だいすけ) メディキャスト株式会社 メディプラザ統括マネージャー
2001年一橋大学大学院MBAコース卒業後、同年日本経営入社。2002年に医療機関の“選ぶ”を支援する展示場「メディプラザ」の1号店を東京(神田)に立ち上げ、その後2003年にメディプラザ大阪、2005年にメディプラザ福岡を順次開設。2007年より東京・大阪・福岡の3拠点を統括する統括マネージャーに就任。専門の医療IT分野については、医師会、保険医協会などの公的団体を中心にセミナー講師を多数実施。
【関連サイト】
ITを活用した経営改善・業務効率化が実現できるショールーム「メディプラザ」
医師の右腕を育成する「電子カルテ+クラーク養成講座」
医療機関のための製品導入事例紹介サイト「事例Plaza」
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