在宅医療に取り組む祐ホームクリニックと共同で開発した、富士通の在宅医療/介護クラウドサービス「往診先生」。業務の効率化によって患者と向き合う時間が増え、提供サービスの質の向上などの効果があるという。
厚生労働省は2012年、高齢者の在宅医療提供体制を整備するための施策「在宅医療・介護あんしん2012」を掲げた。この施策では「住み慣れた生活の場において必要な医療/介護サービスが受けられ、安心して自分らしい生活を実現できる社会の実現」を目指している(関連記事:2012年は「地域包括ケア元年」 医療・介護連携の今後)。
しかし、現状では「高齢者の6割が自宅療養を希望しているが、実際には8割が病院で最期を迎えている」という。また、2025年には2人の現役世代が1人の高齢者を支える時代になるとの予測もある。さらに社会保障給付費における高齢者の医療費は年々増加しており、今後さらに負担が増すといわれている。
そんな中、富士通は「高齢者を皆で支えあう社会へ、ICTで貢献」をコンセプトにクラウドサービス「高齢者ケアクラウド」を発表した。このサービスでは「在宅医療・介護を起点とし、高齢者の健康と生活を包括的に支える社会プラットフォームの構築」を目指している。同社はその第1弾として、2013年1月に在宅医療/介護に特化したクラウドサービス「Fujitsu Intelligent Society Solution 往診先生」(以下、往診先生)の提供を開始した。
往診先生は、同社と医療法人社団鉄祐会 祐ホームクリニック(以下、祐ホームクリニック)が2010年から共同で取り組んだ実証実験の結果を反映しているという。両者は、深刻な高齢化が進む東京都の都市部と、東日本大震災の発生を機に超高齢社会の課題が浮き彫りになった被災地で実証を行った。本稿では、そのサービス概要や導入メリットなどを紹介する。
往診先生は、在宅診療所の医師や訪問看護師、介護士、調剤薬局、ケアマネジャーなどを対象にしたクラウドサービス。医師や関連スタッフの役割分担、情報連携を支援する「在宅医療支援SaaS」、患者やその家族からの問い合わせに24時間365日対応する「在宅医支援コンタクトサービス」などで構成される。
在宅医療支援SaaSは、在宅医療業務の効率化を図る機能によって、最適な業務プロセスの確立を支援する。訪問先ではタブレット端末やスマートフォンなどを活用できる。
「Dr.ナビゲーション」機能は、患者宅周辺の駐車場から玄関までの位置を案内表示。一度訪れた患者宅をデータ化し、モバイル端末を介して車のナビゲーションに転送することも可能。これにより、往診チームが患者宅に確実にたどり着くことをサポートする。
「スケジュール名人」機能は、これまでスタッフが患者の住所を地図で確認しながら、経験を基に組んでいた訪問スケジュールを効率的に設定できる機能だ。
訪問先を地図上に表示し、訪問ルートのシミュレーションなどによって訪問スケジュールを組むことができる。また、急患が発生した場合でも、最も近隣にいる医師に最適なルートを指示して向かわせることも可能。
「訪問シート」機能によって、患者宅を訪問した担当者は患者の生活状況などをモバイル端末に入力する。入力データはデータセンターで管理され、カルテ入力や連携先の書類作成、経営分析にも活用できる。
祐ホームクリニックの理事長 武藤真祐氏は「往診先生は“医療現場で最も使いやすいシステム”を目指し、富士通と2年間以上にわたって共同で開発した」と説明する。さらに「在宅医療に従事するスタッフの診療以外の業務を効率化して時間を縮小することで、患者と向き合う時間が増えた。また、患者宅で慌てなくなりミスが減って提供サービスの質が向上して、患者やその家族からとの信頼関係も深まった」と導入メリットを語る。
在宅医療支援SaaSは初期導入が30万円、月額利用料は7万円から。患者の個人情報の取り扱いについては、在宅医療機関が個人情報の同意を代表で取得する。各事業所と守秘義務契約を締結して、サポートに関わるメンバーのみが情報を共有する。
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