情報共有で在宅医療の質の向上に取り組む「睦町クリニック」医療機関のIT導入事例:クラウド型情報共有ツール「サイボウズLive」

在宅医療サービスの質の向上には、スタッフ間の円滑な情報共有が不可欠である。睦町クリニックはサイボウズのグループウェア「サイボウズLive」を利用し、その実現に取り組んでいる。

2012年02月14日 09時00分 公開
[岡崎勝己]

 脳卒中や認知症などで通院が難しかったり、自宅でがんの緩和ケアなどを求める患者を対象とする「在宅医療」のニーズが高まっている。在宅医療には、医師や看護師の往診、作業・理学療法士の訪問リハビリテーション、歯科医師の訪問歯科診療など、さまざまな種類がある。また高齢患者の場合、訪問看護ステーションや居宅支援事業所など介護サービスを提供する施設と連携を取りながら、自宅療養を支援することも多い。

 多職種、多事業所の連携が必要になる在宅医療だが、患者情報を共有する際の難しさが指摘されている。その理由は、それぞれの業務の独立性が極めて高い点にある。例えば、医師は診断や治療に専念し、その補佐役である看護師は医師の指示の下に患者を手当てする。また、在宅介護の司令塔となるケアマネジャーは介護プランを作成する役割を担い、訪問介護事業所のヘルパーはそのプランに従い訪問入浴などの各種サービスを提供する。1人の患者を包括的にサポートするものの、スタッフ間での情報共有は難しい。

 そうした中、神奈川県横浜市の「医療法人 鴻鵠会 睦町クリニック」(以下、睦町クリニック)は2010年4月、サイボウズのグループウェア「サイボウズLive」を導入し、在宅医療・介護に従事するスタッフ間の情報共有に取り組んでいる。同クリニックがグループウェアを導入した目的は、スタッフ間でより密な連絡を取り、患者情報をより深く共有する場を提供することで、在宅医療サービスの質を高めることにあるという。

情報共有の困難さがサービス向上の壁に

photo 睦町クリニックの朝比奈院長

 睦町クリニック院長 朝比奈 完氏は「在宅医療では、スタッフが役割ごとに独立して動いている。この点が組織的に連携する病院医療と大きく違う。そのため、病院以上に情報共有が必要であるにもかかわらず、その体制づくりが難しい」と説明する。

 これまで睦町クリニックでは、診断や処置の内容を患者宅の連絡ノートを記入し、それをスタッフ間の情報伝達に利用してきた。しかし、患者宅を訪問して連絡ノートを確認する必要があり、スタッフごとに情報を把握するまでの時間に差が生じていた。また、患者宅への訪問予定は患者の状況によって変更することが多く、その場合は電話やFAXを利用して各事業所に連絡していた。しかし、該当スタッフが外出していたり、業務中は携帯電話に応答することも難しく、その情報を最も必要とするスタッフに対するタイムリーな連絡が難しかった。

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