コールセンター業務でCRMシステムを活用してきた八王子クリニックは2011年5月、そのシステムをクラウド型CRMシステム「NetSuite」に刷新した。狙いは患者データの有効利用にある。
東京都八王子市の医療法人社団 斗南堂八王子クリニック(以下、八王子クリニック)は、高度な先進医療が受けられる「自費診療」のメリットを生かした医療サービスの提供に力を入れている。
八王子クリニックは「働く人を応援します」を基本理念として、土・日曜日も診療を行う夜間診療所として1990年に開院。その後、レーザーメスによる痔の日帰り手術を1995年に開始し、クリニックと直結した高齢者用住宅「シルバーヒルズ八王子」を2005年に開設するなど、時代のニーズに合わせた新しい医療サービスの提供を進めてきた。
特に、同クリニックが“予防医療”の観点から力を入れているのが人間ドックだ。CTによる心臓の冠動脈撮影を世界で初めて人間ドックに組み込んだ「マルチスライスドック」を2003年に開始した。また、MRIとマルチスライスCT、内視鏡による1泊2日の「全身ドック(脳・心臓・胃・胸腹部・大腸・脊椎)」サービスを2006年に開始。さらに最先端の技術をできる限り取り入れるため、大学病院と同等の検査環境を整備するなど施設面も充実させてきた(関連記事:電子カルテ導入で診療の質が向上した「まつばらクリニック」)。
とはいえ、医療に関する深い知識を持つ患者は多くない。高水準の人間ドックを多くの患者に利用してもらうためには、そのメリットを分かりやすく伝えるとともに、患者に最適なメニューを親身になって提案する取り組みが極めて重要となる。
そこで同クリニックが積極的に利用しているコミュニケーションツールが電話だ。専用の電話相談窓口を開設し、さらにCRM(顧客関係管理)システムを導入することでより質の高い電話対応を目指している。
八王子クリニックで事務長を務める井上敬介氏は「電話による人間ドックの予約では患者の不安や疑問を解消し、希望に沿った検診メニューを提案する必要がある。そのため、1件当たり15分程度の会話が発生する」と説明する。スタッフには検診を円滑に進められるよう、事前に既往症などの情報を聞き出すことが求められる。また、専門的な知識が求められ、1人当たりの確認項目も多い。井上氏は「CRMシステムはそうした業務における効率化の切り札になると考えた」とシステム導入の狙いを説明する。
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