実際、診療所のIT化はどのように進められているのだろうか? 限られた院内スペースを有効活用するためにIT化を進めている麻布医院の取り組みを紹介する。
ある調査によると「新規開設の診療所の7割が電子カルテを導入している」という。診療所向けの電子カルテ普及率自体はそれほど高くないが、電子カルテを中核としてレセプトコンピュータやPACS(医用画像管理システム)などの導入、各種検査機器の電子化によって、診療所のIT化の流れは変わることはないだろう(関連記事:診療所における電子カルテ導入促進の鍵は?)。では実際、どのようにIT化が進められているのか? 本稿では、2011年12月11日に開催された「クリニックITフォーラム2011」における講演内容を踏まえて、診療所のIT化の実例を紹介する。
クリニックITフォーラム2011では、「私のIT化」というテーマで3人の医師がIT化の取り組みを発表した。その中の1人である麻布医院 院長、高橋 弘氏は、「診療所のIT化では電子カルテの導入が重要だが、それだけではない。限られたスペースを有効活用するため、投資コストに見合ったITを利用しようと考えた」とその目的を語った(関連記事:電子カルテ導入で診療の質が向上した「まつばらクリニック」)。
2009年5月、東京都港区に開院された麻布医院。立地条件に恵まれているが、賃貸料が高くスペースが限られており、診療所を運営する上で幾つかの課題を抱えていた。特に「X線フィルムの保管」が問題になっていたという。そこで、高橋氏は以下の5つをポイントとするIT化を進めた。
X線フィルムの保管は物理的なスペースの確保だけでなく、法定期間内は保管する義務もあり、その管理が煩雑になっていた。そこでスペースの有効活用のため、麻布医院はまずスキャナを導入して「画像の電子化」を行い、電子化した画像を表示、保存・バックアップするシステムを構築。また、電子カルテやPACSなどに画像データを転送する院内LANの整備を進めた。
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