【事例】ITで在宅医療のコミュニケーションを促進する「おひさまネットワーク」FileMaker Proベースの情報共有サービスを利用

今後ニーズが高まると予想される「在宅医療」。在宅医療診療所向け支援サービス「おひさまネットワーク」では、さまざまな職種のスタッフ間におけるコミュニケーションの促進にITを利用している。

2012年12月07日 08時00分 公開
[翁長 潤,TechTargetジャパン]

在宅医療・介護の連携がより重要に

 厚生労働省によると、1970年代は70万人だった年間死亡者数は増加し続けており、ピークを迎える2040年には166万人になり、その8割を75歳以上の高齢者が占めるという。また政府の「社会保障・税一体改革」では、2025年までに病床数を現在よりも7万床削減する方針を掲げており、今後は病院ではなく在宅や介護施設で人生の最期を迎える人が増える時代になる(関連記事:2012年は「地域包括ケア元年」 医療・介護連携の今後)。

 兵庫県神戸市で在宅医療に取り組んでいる、医療法人おひさま会 理事長 山口高秀氏(やまぐちクリニック院長)は「これからは未曽有の多死時代。人間は“生まれてから自立するまで”と“歳を取ってから亡くなるまで”の間、周りの人間に支えられて生きている。特に高齢者のケアに関しては、在宅医療・介護における多職種のスタッフ間の連携が重要になる」と説明する。

photo おひさま会の山口氏(「FileMaker カンファレンス 2012」の講演より)

 おひさま会のグループ企業であるグローバルメディックは、在宅医療診療所向け支援サービス「おひさまネットワーク」を運営。おひさまネットワークは、医療機関や介護施設、保険調剤薬局、訪問看護ステーションなどが連携し、高齢者の生活を包括的にサポートするサービスだ。グローバルメディックから派遣されたスタッフが、派遣先の医師と共に日々の健康管理から在宅療養、点滴や褥瘡処置、カテーテル、人工呼吸器の管理などのサービスを提供し、緩和医療やターミナルケアにも対応する。2012年12月現在、兵庫県の東西地域や神奈川県(横浜、小田原)、千葉県浦安市などでサービスを提供している。

 在宅療養支援診療所の要件として、緊急入院の受け入れや24時間往診・訪問看護の提供が可能な体制の確保、介護サービスとの連携、在宅看取数の報告などが掲げられている。山口氏は「ITの仕組みがなければ、全ての要件を満たしながら運営することは不可能」と語る。おひさまネットワークでは、情報共有の基盤として「おひさまシステム」を利用している。

FileMakerをベースにした情報共有サービス「おひさまシステム」

 おひさまシステムは、在宅医療を支える関係職種のユーザーを対象に「診療記録」や「介護サービスの利用状況」「スタッフ間の意見交換」といった患者に関するさまざまな情報を共有するWebサービス。データベース管理ソフト「FileMaker Pro12」をベースにしており、おひさまネットワークの参加ユーザーであればインターネット経由で場所を問わず利用可能。現在、13企業50ユーザーが導入・利用している。

 おひさまシステムは、グローバルメディックが立ち上げた在宅医療の問題解決に向けたプロジェクトを契機に、やまぐちクリニックでの試験導入やフィードバックを踏まえてバルーンヘルプがシステム開発に着手して2011年に運用を開始した。

photo おひさまシステムの画面《クリックで拡大》
photo バルーンヘルプの片岡氏

 おひさまシステムは、大きく分けて「患者情報」「活動記録」の2つの情報を管理している。活動記録は、診療記録や患者家族の電話による問い合わせなど、患者に関する全ての医療行為や対応業務が含まれる。現在、職種に合わせて34種類の情報が登録されている。おひさまネットワークでは現在、1000人以上の患者の情報をおひさまシステムで管理している。システムの設計から携わり、開発やサポートなどを担当するバルーンヘルプ システム開発部 主任 片岡達博氏は「活動記録のカテゴリは、システムに参加する連携職種に合わせて随時追加する予定」と語る。

活動記録の主なカテゴリ例

診療記録、検査、他院受診記録、投薬指示、問い合わせ、

薬学的管理指導計画書、訪問薬剤管理指導、診療情報提供書、

物品配達、書類作成依頼


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