中小企業が知っておきたい運用管理/資産管理ツールの選定ポイント【第2回】
ジョブ管理ツールとハードウェア同梱ツールでできる賢いサーバ管理術
本連載では中小企業における運用管理/資産管理ツール選定ポイントについて解説している。第2回となる今回はサーバを対象とする運用管理/資産管理ツールについて見ていこう。
これまでの連載
サーバを対象とするツールにも「監視」と「設定」の2つの役割がある
最初に第1回で整理した運用管理/資産管理ツールの守備範囲をもう一度確認しておこう。運用管理/資産管理ツールには「監視する」「設定する」「統合する」の3つの役割がある。そして、そうした役割を担う「対象」については「PC」「サーバ」「ネットワーク」という目に見えるIT資産を基準に区分けをした。
「統合」については、統合運用管理/資産管理ツールでまとめて取り上げるとして、ここではサーバを対象とした監視と設定(図中の[1-2]と[2-2])について考えていく。
「設定」の代表例はジョブ管理ツール
運用管理/資産管理ツールにおける「設定」とは、IT資産の動作を規定する役割を指す。では、サーバにおける「設定」の役割とは、具体的にどのようなものだろうか? まず思い付くのは、定期的に行うバックアップ処理だろう。「毎週土曜日の午前中にいったんサーバを停止し、各種のデータをバックアップした後、日曜日の夜に再起動する」などが考えられる。
つまり、サーバにおける「設定」の役割とは何らかの処理の「自動化」と言い換えられる。簡単な自動化であれば、「Windows Server」が標準で備える「Power Shell」などを利用すれば、専用ツールを導入するまでもない。では、サーバにおける自動化で専用のツールが必要となる場面とは何だろうか?
それは「業務プロセス」の自動化である。以下のような例を考えてみよう。ある小売業者A社はeコマースサイトと実店舗でスポーツウェアを販売している。毎日、eコマースサイトと実店舗からの売り上げデータを集計してグラフを生成し、その結果を社内グループウェアに掲示する必要があるとしよう。この時、集計処理はeコマースサイトと実店舗の双方からデータが送られるのを待たなければならない。しかも実店舗には休みもある。店舗の稼働スケジュールも考慮しながら、「データが送られるのを待つ」という処理を行う必要がある。また、グループウェアへのグラフデータ送信がもし失敗した場合にはもう一度送り直すという「再試行」の仕組みも必要だ。こうした処理を「Power Shell」で手作りするのは容易ではない。
このような「業務プロセス」の自動化を主な役割とする運用管理/資産管理ツールが「ジョブ管理ツール」である。運用管理/資産管理ツールというと、業務と直接関係ないIT管理/運用のみに用いられると思いがちだ。だが、サーバを対象とした「設定」の役割において「ジョブ管理ツール」は主役ともいえる存在感を示している。
その中でも、多くの企業で導入されているのが日立製作所の「JP1」である。JP1は全体として統合運用管理/資産管理ツールとしての役割を担うのだが、その構成要素の1つである「JP1/AJS(Automatic Job Management System)」がジョブ管理ツールに相当する。JP1というと大企業向け製品というイメージが強いが、実際には年商50億円未満の中小企業にも導入例は少なくない。その中には、ジョブ管理ツールを主な用途としているケースも多くみられる。「複数の処理連携を確実かつ柔軟に自動化したい」というニーズがある場合には、ジョブ管理ツールの導入を検討することも有効な解決策の1つだ。
「監視」ではサーバハードウェア同梱ツールに着目すべし
次に「監視」の役割について見ていこう。「サーバはきちんと稼働しているか?」「ログに異常なメッセージはないか?」などをチェックし、必要に応じてリポートや警告を送るといった役割を担う機能だ。一般的には「サーバ監視ツール」と呼ばれ、無償、有償を問わず多種多様なツールが存在する。だが、第1回で見た「導入済みの最も主要な運用管理/資産管理の製品/サービス」の中には、サーバ監視に特化したツールは登場していない。しかし、これはサーバ監視に対するニーズが低いことを示すわけではない。最近では、サーバのハードウェアに標準で同梱されるツールが高度化してきており、それを利用するケースも増えているのだ。
以下のグラフは、年商5億円以上~50億円未満の中小企業に対し、「サーバ同梱ツールに関して、ニーズがあって既に実現できていること」を最大3つまで尋ねた結果のうち、比較的多く挙げられている項目をまとめたものである。
ハードウェアやOSを対象とした稼働状況の把握および障害発生時の通知はサーバ監視における基本的なニーズといえる。グラフを見ると、こうしたニーズもサーバ同梱ツールで少なからずカバーされている状況が伺える。
さらに注目すべきなのは、上位に挙げられた3つの項目だ。
1つ目の「社内のサーバとデータセンター内のサーバをまとめて管理/監視できる」は、いわゆるリモート監視を実現するものである。eコマースやCRMなど一般消費者を対象とした業務システムは、キャンペーンなどによってアクセス数が急増しやすい。そのため負荷変動に対応できるようにデータセンター業者を利用するケースも少なくない。その時には社内とデータセンターにサーバが分散するため、それらをまとめて管理できるツールが必要となる。
2つ目の「平常時から自動でログを蓄積し、障害発生の原因究明に役立てられる」は、ユーザー企業自身が利用するよりは、サーバベンダーの技術サポートを受ける際に利用するものだ。熱暴走など環境要因も絡むサーバ異常の場合、異常が発生した時点の情報だけでは原因を特定できないことがある。そこで、航空機のフライトレコーダーのように平常時からサーバ内の状況を記録しておき、異常が発生した時にはその記録データをサーバベンダーの技術サポートに送ることによって、迅速な原因特定を実現するわけだ。
3つ目の「障害の発生原因や対処方法などのアドバイスを表示/通知してくれる」は単にログを表示するだけでなく、「何をどうすれば良いのか?」を示してくれるものだ。中小企業でIT管理/運用を担う方々とお話をすると「ログを見ても何が書いてあるか分からない」という意見をよく耳にする。その結果、サーバ異常を示す兆候が見過ごされてしまい、重大なトラブルにつながりやすくなる。そうならないように詳しい技術知識がなくても、「何をすれば良いか?」のアドバイスを表示してくれるわけだ。
例えば、日本HPのPCサーバ「HP ProLiant Gen8」が備えるマネジメントエンジン「iLO4」には、ユーザーがサーバ状態をインターネット越しに確認できる「HP Insight Online」やサーバ状態を記録する「アクティブヘルスシステム」といった機能が備わっている。それぞれ、上記に述べた1つ目と2つ目のニーズに対応する機能だ。
また、NECのPCサーバ「Express5800」が備えるマネジメントエンジン「EXPRESSSCOPE」は故障辞書という情報を持つ。出力されたログと故障辞書を照合して、ログの持つ意味や起きている事象を分かりやすい日本語で表示してくれる。これは上記に述べた3つ目のニーズに対応するといえる。
このように、サーバ同梱ツールが持つ機能は日々向上している。上記以外のサーバベンダーも同様のサーバ同梱ツールを提供している。新たにツールを導入/購入するわけではないので、自社に導入済みのサーバがどのような監視ツールを持っているかを確かめてみるとよいだろう。
今回はサーバを対象とした運用管理/資産管理ツールについて取り上げた。次回の第3回はPCを対象とした運用管理/資産管理ツールについて考えていく。
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