クラウド運用管理ツール製品紹介:SCSK
OSSも提供、ハイブリッドクラウド管理の先駆者「PrimeCloud Controller」
クラウド管理ツールとしては比較的長い歴史を持つ、SCSKの「PrimeCloud Controller」を紹介する。2014年3月にはOSS版を提供開始した。5つの特徴に加え「RightScale」との違いにも注目だ。
日本のクラウド市場は本格的な普及期を迎えている。初期の先行ユーザーが導入する段階を終え、企業が評価を行った上で、クラウドの業務利用を始めようとしている。
調査会社であるIDC JapanのITサービス リサーチ マネージャーの松本 聡氏は2013年のクラウド市場をこう分析する。「2013年は、企業ユーザーがクラウドを本格的に利用する環境が整った年となった」(参考:ユーザー企業のクラウド利用は「リビルド」から「リホスト」へ)。
こうした市場の変化を受け、クラウドを利用するための管理ツールのニーズが日本でも増加している。この連載では、主要なクラウド管理ツールを紹介するとともに、クラウド市場でユーザーからどんなニーズが上がってきているのかを紹介する。
第1回は、リリースが2010年とクラウド管理ツールとしては長い歴史を持つ、SCSKの「PrimeCloud Controller」を紹介する。
百数十社の声を聞いて開発
PrimeCloud Controllerが誕生したのは2010年。開発に着手したのはその前年、2009年にさかのぼる。当時、日本のクラウド市場はまさに黎明期にあった。
「当時、IT事業者としてクラウドに関するサービスを提供していくに当たり、どのような機能が必要かニーズを調査した結果、誕生したのがプライベートクラウドやパブリッククラウドといった複数のクラウドを統合的に管理できるシステム、PrimeCloud Controllerでした」(SCSK 瀧澤与一氏)
日本のクラウド黎明期に誕生した製品ではあるが、PrimeCloud Controllerの基本機能、コンセプトは誕生したときから変わっていない。当時は複数クラウドを管理するといったニーズはなかった時期である。その時期にこの製品を開発することができたのはなぜなのか。
「開発するに当たりハイブリッドクラウドの可能性について考えるべく、競合となる会社も含めて百数十社を訪問しました。クラウドビジネスに関わる人に、ハイブリッドクラウドの可能性をどう考えるのか、ハイブリッドクラウドを管理するとしたらどんな機能が必要になると思うのかを聞きました。『まだ必要ではないが、ハイブリッドクラウドを使うようになればこんなことがしたい』という声を集めてPrimeCloud Controllerの機能に盛り込んでいきました」
開発が進む中で、当時のCSK(現SCSK)が「クラウドEXPO 2010」に出展することが決定した。その会場でPrimeCloud Controllerを紹介すると、早々にユーザー企業第1号としてコンテンツ提供事業者が名乗りを上げるなど、順調な立ち上がりとなった。
「当時、比較されることが多かったのは『RightScale』でした。大きな違いは、RightScaleはツール自体がクラウドサービスとして提供されている点です。日本のお客さまの場合、外部のサービスに自社のシステムを覗かれることに抵抗を感じるようです。PrimeCloud Controllerはオンプレミス環境に構築でき、お客さまが自社のツールとして利用できます。外部から自社のシステムに直接アクセスしてほしくないという企業には適しています」
利用形態がクラウド経由ではなく、オンプレミスでの利用が基本となっているのは、まさにこの「外部サービスではなくシステムを管理するツールの1つとして使用する」ためだ。
自動化でミスと作業負荷軽減を実現
製品の主な機能および特徴は、
- ハイブリッドクラウド対応
- ミドルウェア(Web/アプリケーション/データベース《DB》サーバ)の自動設定
- さまざまなクラウドに対し統一的な操作を実現
- 「Zabbix」による一元管理
- OpenVPNを使用したVPN接続
である。
1つ目は、GUI操作でプライベートクラウドおよびパブリッククラウドを統一的に制御することが可能という点だ。対応しているクラウドは、「Amazon Web Services(AWS)」「ニフティクラウド」「VMware vCenter Server」「CloudStack」「IDCフロンティアクラウドサービス」「Cloudn」「SCSK USiZE」「Microsoft Azure 」と幅広い。
2つ目は、サーバ起動/停止だけでなく、アプリケーションを含むミドルウェアのインストールや設定、動作確認、監視など、システム全体の自動化を実現する。仮想化によるサーバ統合だけでなく、運用の効率化につながることは大きな導入メリットとなる。SCSKの計測では、PrimeCloud Controllerを活用した場合、ミドルウェアの設定、動作確認、クラウド間のVPN接続、操作ログの記録、監視サーバへのノード追加を自動で行い、約20分で作業が完了する。
「コモディティ化され自動化できるタスクはできるだけ自動化し、エンジニア自身が手作業をなるべく減らすことで、操作上のミスを防ぐことができます」
3点目は、さまざまなクラウドを1つのインタフェースで管理できることだ。最近では情報システム部門ではなく、業務部門でAWSを活用することがある。そういった場合、AWSのコマンドを覚えることなく操作できるという強みもある。
4点目の監視の一元化では、クラウドごとに手動でエージェントを仕込むことなく、Zabbixを用いて監視ノードや監視対象サービスを自動追加/削除することで、複数のクラウドを一元管理する。
また、全てのログを取っているため、業務部門がどんな使い方をしているのかを情報システム側で記録することもできる。管理ツールではあるが、作業を制限するといった厳しい管理機能ではなく、記録を取って管理するというスタンスだ。クラウド事業者から提供されたログではなく、PrimeCloud Controllerという第三者が取得している分、ログとして信頼性が高い。
このログから料金明細を出すことはできないものの、いつ、誰が、どのクラウドを利用したのかをログによって出力することができるため、「そうしたデータから算出して課金額を導くことは可能」だという。PrimeCloud Controllerの最大の利用者はSCSKの開発部門だ。SCSKでは年間数千プロジェクトが稼働し、社内にあるデータセンターに加え、AWSのようなパブリッククラウドを利用することもある。その際、ログを取得してプロジェクトごとに課金することにも活用されている。
5点目のVPN接続では、クラウドサービス間でのアクセスにVPN接続が利用可能だ。例えばAWSに関しては、Amazon VPCとOpenVPNの両方に対応する。これによって、複数のクラウドで構成されるシステムを容易に構築することができる。
オープンソース化で今後はサービスビジネスに注力
2014年3月31日に、PrimeCloud Controllerのオープンソース版を提供開始した。新たに「OpenStack」に対応し、さらに幅広いクラウドへの対応を実現する。
「オープンソースの世界では既に管理ツールが存在しているので、それらと競合になるのか? という声もありますが、われわれの特性を生かすことで、競合というよりは共存する関係を築けるのではないか考えています」
導入ケースとしては、
- 情報システム部門がクラウドサービスのログを取得することで内部統制を強化する
- コンテンツ配信事業者が、プライベートクラウドを持ちながら、アクセス増加に合わせてパブリッククラウドを併用することを想定して導入する
- 大学や研究機関が複数クラウドを管理する目的で導入する
ということなどを想定している。
オープンソース版は当然無償での提供になる。「これまで試したかったができなかったというお客さまの利用が増えるのではないか」と期待する。
さらにSCSKは、この製品をきっかけとしたサービスビジネスを増加させていくことも狙っている。サポートに限らず、クラウドをからめたサービスビジネスを必要とするユーザーの掘り起こしにつながっていくことを期待している。
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