「Chromebook」からの転用も可能
“究極の安全ノートPC”をつくるには? 「モバイルシンクライアント」の勧め
外出先で利用するノートPCに、社内の重要情報を入れておくのは危険――。そう考える企業であれば、「モバイルシンクライアント」が有力な選択肢となる。
情報規制をしている企業では、外出の多い従業員が仮想デスクトップに安全にアクセスできるようにする手段として、「モバイルシンクライアント」を使用するという選択肢がある。
VDI(仮想デスクトップインフラストラクチャ)は、任意の場所からデスクトップへアクセスするテクノロジーである。ノートPCはどこへでも持ち運べるデバイスだ。この2つが合体してモバイルシンクライアントが誕生したのは驚くべきことではない。
モバイルシンクライアントを採用する理由
モバイルシンクライアントは、VDIアクセス専用のノートPCのようなデバイスだ。IT部門はモバイルシンクライアントを使用し、VDIの導入範囲を社外で作業する従業員にまで拡大している。
ただし、モバイルシンクライアントは、モバイルユーザーにVDIを提供する必須条件ではない。VDIは、ノートPCなど任意のデバイスから利用可能だ。実際、モバイルシンクライアントは特殊な製品なので、大抵のVDI導入ではモバイルシンクライアントを使用していない。セキュリティが確保されたデバイスを支給する必要がなければ、従業員にはノートPCを支給するか、各自にデバイスを選択させるのがよいだろう。
モバイルシンクライアントを採用するメリットは、デバイスの使用目的を仮想デスクトップへのアクセスに限定できることだ。厳しいセキュリティ/コンプライアンス要件が定められ、どこからでも安全にデスクトップにアクセスできる必要がある組織では、このような使用制限は重要である。
従業員が会社支給のデバイスを使用し、インターネット接続経由で仮想デスクトップにアクセス可能な環境を構築したい場合、モバイルシンクライアントが役に立つ。VDI導入では、厳しく制限・規制されているデータへ多数の従業員がアクセスする。モバイルシンクライアントは、大規模な外回りのチームがデスクトップへアクセスする場合にも導入されることが多い。例えば、営業チームや地域密着型の医療従事者などだ。
デスクトップPC型のシンクライアント(以下、デスクトップシンクライアント)と同様、モバイルシンクライアントでも、集中管理ツールから制御可能な、機能が限定されたOSを搭載する。モバイルシンクライアントのOSは、ローカルでアプリケーションを実行するのではなく、データセンターにあるデスクトップへアクセスする。ただし、ユーザーの場所は固定されていないので、モバイルシンクライアントには無線通信機能が必要になる。客先で作業する従業員には携帯電話回線へのアクセスが必要だし、自宅や空港などの場所で作業する従業員は無線LANアクセスが必要になるだろう。
モバイルシンクライアントの要件
ノートPCは、簡単にモバイルシンクライアントにすることができる。必要なのはHDDを小容量のSSDへ交換し、標準のWindowsを組み込みのWindowsやLinuxへ変更するだけだ。HDDをSSDに交換するとデバイスの耐久性が高まり、バッテリーの持続時間が延びる。OSを変更すると集中管理が可能になり、アプリケーションのローカルインストールを防ぐことができる。組み込みOSを使用するためSSDの容量は少なくて構わない。デバイスの集中管理は、デスクトップシンクライアントと同様に、モバイルシンクライアントでも重要だ。
モバイルシンクライアントでは、デスクトップシンクライアントでは必ずしも必要ではない、幾つかの機能が必要になる。1つはユーザーが無線LANへ接続する手段だ。デスクトップシンクライアントは、会社が所有している単一の無線LANへ接続できるように設定する。一方のモバイルシンクライアントは、どこでも無線LANを使用できなければならない。
また、ローカルにWebブラウザをインストールしていないと、喫茶店の公衆無線LANへのログインやその使用条件に同意することができない。さらに、VPNへ接続して自分のデスクトップへアクセスするには、モバイルシンクライアントにVPNをインストールして構成する必要もある。幸い、多くのVDI製品には、セキュリティが確保されたリモートアクセスツールが用意されている。
インターネット経由でモバイルシンクライアントを管理できるリモート管理製品も必要になるだろう。VPN接続ではリモートワイプを実行できないため、VPN経由で管理するのは適切ではない。モバイルシンクライアントにデータは保存されていない。だがネットワークやシステムへのアクセス方法に関する情報は保存されている。そのため、デバイスの紛失や盗難の際にはデバイスをリモートで無効にしてアクセス情報を消去しなければならない。
モバイルシンクライアントの設計
現在、モバイルシンクライアントのボディは、低価格ノートPCと同じものがベースになっている。HDDやDVDドライブのための空間がある大型のボディを持ち、財布に優しい価格だ。モバイルシンクライアントとして使用するため、DVDドライブは目隠し板、HDDはSSDに交換される。
「Ultrabook」や米Googleの小型の「Chromebook」がモバイルシンクライアントのボディのベースになっていたら、さらに便利かもしれない。Chromebookは安価で軽いので、モバイルシンクライアントとして優秀なデバイスだろう。従業員はChromebookを使用して複数のVDI環境へアクセスできる。Googleは、Chromebook用のエンタープライズ管理コンソールを用意している。そのため、Chromebookをモバイルシンクライアントとして導入した場合は、デバイスを集中管理して制御することが可能だ。
機能を絞り込んだシンクライアントである「ゼロクライアント」を使用している企業は、「モバイルゼロクライアント」が必要だと考えるかもしれない。モバイルクライアントには無線LANと携帯電話回線へのアクセスが必要不可欠だ。だが残念ながら、ゼロクライアントにはそのどちらも組み込まれていない。デスクトップゼロクライアントには、VPNアクセスを提供するための追加のLinuxコンピュータを内蔵しているものがある。そのため、モバイルゼロクライアントでも同様の対応が可能だろう。問題は、そのようなゼロクライアントの開発に、高額なカスタムハードウェアの設計が必要になることだ。一方、既存のモバイルシンクライアントでは、標準的なノートPCハードウェアを使用しており、コストが低く抑えられている。
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