実は個人でも買える
ノートPCなら量販店モデルより「企業向け」を買うべき“魅力的な理由”
ビジネスユース向けに設計、開発された企業用ノートPCは少々高価だが、個人用モデルにはないさまざまな魅力がある。では、具体的に個人用とどこが違うのか。詳しく見ていく。
大企業のIT部門は数千台の単位でコンピュータを購入する。購入したコンピュータは、サポート期間が終了するまで2~4年にわたって故障なく運用できることが期待される。その間、不注意な従業員が粗末に扱うこともあるだろう。ぶつける。落下させる。液体をこぼす――。考えられる被害は枚挙にいとまがない。
本稿では、ビジネスノートPCとコンシューマー向けノートPCでは機能や工学的な特質がどのように異なっているかを解説する。
ビジネスノートPCの特徴1:高い構造品質
構造の品質は「素材」と「構造」の2つの要素から成り立っている。
構造素材
高価格帯のビジネスノートPCでも、外装にプラスチックを使用することはある。つや消しが施されたアルミニウムは高価な上に、一般的なビジネス要件である耐久性や強度を確保するために必要なものではない。
ビジネスノートPCで採用されている高強度のABS樹脂は、コンシューマー向けノートPCよりも厚みがある場合が多い。これは耐久性を高めるための仕様だ。表面だけでなく全体が着色されているため、色が徐々にすり減ることもない。
コンシューマー向けノートPCでは一般的に、見た目をよくするためだけに、つや消し加工のアルミニウムが使用されている。単にプラスチックの上に載せている状態だ。一方、ビジネスノートPCでアルミニウムが使用されるのは非常に高価なモデルだけである。強度を高めることを目的としているので、単にアルミ板をかぶせてあるわけではなく、実際にアルミニウムが素材として使われている。
構造/強度
構造品質の2つ目の要素は「構造」だ。通常、コンシューマー向けノートPCは外部構造が内部構造を支える仕組みになっている。外部の部品とそれらを組み合わせたものが支持構造を形作っている。ビジネスノートPCはその逆で、内部構造が外部構造を支える仕組みになっている。
米IBMは2000年代にビジネスノートPC「ThinkPad」と「ロールケージ」でこの構造を有名にした。ロールケージとは、ノートPCの内部を保護する金属製の筺体だ。どのメーカーも、高級モデルには何らかの形式でこの構造を採用している。
支持構造物がしっかりしていれば、シャーシが曲がることはない。そのため、マザーボードやその他の内部回路が曲がることもない。回路基板はそもそも曲がるようにはできていない。曲げると、折れたり破損したりしてコンピュータは全く機能しなくなる。見過ごされがちだが、これはノートPCが故障する原因となる。
現在入手可能な高品質ノートPCの代表格は、米Hewlett-Packard(以下、HP)のモバイルワークステーション「ZBook」だろう。シャーシの強度は非常に高い。耐久性についてはテスト済みで、米国防総省が制定した軍事規格「MIL-STD-810G」に準拠している。
さらに高い耐久性が必要な場合は、パナソニックの「タフブック」をお勧めする。タフブックは、非常に厳しい状況にも耐えられる頑丈なノートPCだ。
Lenovoの「ThinkPad T」シリーズは、優れた品質と手ごろな価格を実現しているビジネスノートPCである。米TechTargetは数年前からレビューで高評価を付けている。最近レビューしたのは「ThinkPad T440s」だ。また、HPの「EliteBook 850」シリーズも品質がよく、価格もリーズナブルなのでお勧めできる。
ビジネスノートPCの特徴2:アンチグレア加工の画面
ほぼ全ての企業のオフィスに共通しているのは天井の照明だ。照明は蛍光灯であることが多い。この種の照明の下では、コンシューマー向けノートPCに搭載されている鏡のような画面は非常に見づらくなる。光が反射して気が散り、イライラさせられる。
ビジネスノートPCの画面の表面には、反射を最小限に抑えるためにアンチグレア/つや消しコーティングが施されている。この仕様により、オフィスのみならず屋外などその他ほとんどの環境で画面が見やすくなる。
ビジネスノートPCの特徴3:ファンクションキーのあるキーボード
このセクションでは「キー配列」と「耐久性/押し下げ感」の2つに分けて解説する。
キー配列
コンピュータは主にキー入力とマウスで操作する。これは米Appleの「Apple II」の誕生以来変わっていない。真のビジネスノートPCには標準のキー配列が採用されている。6列あるキーのうちの1列は必ずファンクションキー(F1~F12)が占めている。
ファンクションキー列について言及したのには理由がある。最近のコンシューマー向けノートPCでは、ファンクションキー列が除外されているか、二次的な機能になっているケースが見られる。業務用のソフトウェアではファンクションキーが必要になることが多い。そのため、このような仕様はビジネスノートPCでは許容できない。またソフトウェアマニュアルでは、重要なキーが除外された非標準のキー配列は考慮されていない。
TechTargetがLenovoの「ThinkPad X1 Carbon」(2014エディション)とHPの「HP EliteBook Folio 1040 G1」という2つの競合するビジネス用Ultrabookをレビューした結果、最終的な評価に直接影響したのはキーボードだった。ThinkPad X1 Carbonのキーボードは生産性を削ぐ非標準の配列になっている。一方、HP EliteBook Folio 1040 G1にはデスクトップPCと類似した使いやすい配列のキーボードが備わっている。そのため、長時間使用しても全く支障がなかった。
耐久性/押し下げ感
ビジネスノートPCのキーボードは、本体の他の部分と同様、衝撃に耐えられるように設計されている。携帯性が高いモデルのキーボードトレイは、水やコーヒーなどの液体をこぼした場合に耐久性がある。幾つかの穴が設けられており、液体は内部回路から隔離されキーボードトレイ下部に流れるようになっている。また、キーボードトレイは非常に強固だ。そのため、キーボードトレイが内部回路と接触することはない。さらにキーを押し下げたときの反応が良くなるという二次的なメリットもある。
ビジネスノートPCの特徴4:ドッキングステーションのサポート
ドッキングステーションが利用できるかどうかは、モバイルワーカーにとって重要だ。ノートPCは優れたツールである。ただし、特に画面が15インチ未満の小型のノートPCを長時間使用するのは厳しいだろう。ノートPCにドッキングステーションを装着すれば、ノートPCをデスクトップPCのように使用できるようになる。
ドッキングステーションには、外部モニター、キーボード、マウス、プリンタなどのデバイスが接続可能だ。ビジネスの観点からすると、ドッキングステーションはオフィスでの生産性を高めるのに役立つ。デスクトップPCを購入するよりも安く済むというメリットもある。
ノートPCメーカーにとって、ドッキングステーションのサポートをUltrabookに含めることは容易なことではなかった。だがノートPCメーカーは、それをやってのけた。中でも素晴らしい例は、米Dellの「Latitude E7440」だ。14インチのパッケージに詰まった非の打ち所のない機能は称賛に価する。
ビジネスノートPCの特徴5:エンドユーザーによる保守性
ノートPCベンダーにとって、コンピュータの保守は自分たちに任せてほしいと考えるのが普通だろう。だがこの考え方は、ビジネスの世界では通用しない。大企業のIT部門は、修理が必要な大量のコンピュータに対処するために修理専用の発送部門を用意しなければならなくなるからだ。
こうした状況を踏まえ、ビジネスノートPCはエンドユーザーの保守性を考えて作られている。そうすると、設計の複雑さは高まり、コストも高くつく。だがIT部門にとって、その代償を払うだけの価値はある。
バッテリーについても同じことがいえる。ノートPCのバッテリーは交換できないものが増えている。ただし、ビジネスノートPCのバッテリーは、基本的にどのメーカーのものでも交換可能だ。
ビジネスノートPCの特徴6:強化された保証と販売後のサポート
コンシューマー向けノートPCとビジネスノートPCの販売後のサポートは異なる。今後もこの状態は続くだろう。多くの場合、ビジネスノートPCのサポートは国内の経験豊富なオペレーターが担当する。サービスを優先的に受けることができるだけでなく、古いパーツを返送している間に新しいパーツを発送してもらうといった高度なサービスも利用できる。
オンサイトサポートも提供していることが一般的だ。オフィスがある地域にいる技術者が、保証時間内(通常24時間以内)に応対してくれる。
ビジネスノートPCの特徴7:コンシューマーでも購入できる
ビジネスノートPCは仕事で使うことを考慮して設計されているが、一般コンシューマーも購入可能だ。
ノートPCメーカーのビジネス用ラインアップのページを見れば、販売中のビジネスノートPCを確認できる。最初はモデル数の多さに戸惑うかもしれない。
まとめ
本稿ではビジネスノートPCについて詳しく解説し、コンシューマー向けノートPCとの違いやその理由を示した。まず取り上げたのが構造品質だ。ビジネスノートPCは衝撃に耐える設計になっている。オフィスビルで一般的に採用されている天井の照明で画面がぎらつくのを軽減するために、ビジネスノートPCの画面にはアンチグレア加工が施されていることも説明。標準のキー配列が採用されている理由も紹介した。
ビジネスノートPCの重要な構成要素の1つとして挙げたのが、ドッキングステーションのサポートだ。ドッキングステーションを使用すると各種デバイスをノートPCに容易に接続できるようになるので、オフィスでの生産性が向上する。最後に、保守性、保証、販売後のサポートについて言及し、企業の要求水準はコンシューマーのそれよりも高いことを示した。
ビジネスノートPCは仕事で使うことを考慮して設計されているが、コンシューマーでも購入できる。ビジネスノートPCは同等の性能を備えたコンシューマー向けノートPCよりも少し高価かもしれない。だが本稿で説明した理由から分かるように、それが賢い選択となる場合もあるはずだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[アトラシアン株式会社] IT運用や従業員サポートは生成AIでどう変わる? 使い方や導入の流れは? -
製品資料
[株式会社みらい翻訳] 音声翻訳活用の課題を解決、“本当に使える”ツールの特徴とは? -
製品レビュー
[Wrike Japan 株式会社] 400店舗を支えるWalmart Canada、散在する情報やアナログな管理をどう変えた? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 年間100件超のDXプロジェクトを統合管理、JERAはどのように実現した? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] グローバルなクリエイティブ業務を合理化、エスティーローダーに学ぶ実践のコツ
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
9割が頓挫する「AI内製化」 差がついたのはツールより設計力
-
2
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
3
技術力だけでは「上に行けない」 シヤチハタCDOが語る、情シスが次の役割をつかむ条件
-
4
JSONをやめてPythonで送る トークン消費を約7割抑えるAIの設計
-
5
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
6
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
-
7
7割が目標未達のERP導入 予算を狂わせる「10の隠れコスト」
-
8
APIキー奪取から3時間でクラウド掌握 Anthropicが暴いた「バイブハッキング」の現実的な防御策
-
9
「従来のRAG」は限界か Databricksが示す「適応型検索」の勝算
-
10
「企業におけるAI導入検討度とIT投資優先度」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
2
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
3
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
「スクラム」と「カンバン」の違いとは? アジャイル型開発手法を徹底比較
-
9
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
10
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー