微妙になる「MapReduce」との関係
「Hadoop」はビッグデータ処理の中心に居続けることができるのか?
英Apacheソフトウェア財団の「Hadoop」に関するうわさは夏の間その影を潜めていた。その一因は旧友である米Googleのプログラミングモデル「MapReduce」にある。
英Apacheソフトウェア財団の「Hadoop」は高い評価を得ている。だが、2014年の夏の間、そのうわさは影を潜めていた。新しいテクノロジーにはある程度の失望が付き物だ。だが、Hadoopに対する失望は厄介なタイミングで訪れた。その一因は長きにわたって苦楽を共にしてきた米Googleのプログラミングモデル「MapReduce」にある。
ベンダーとユーザーはどちらもHadoopに多額の投資を行ってきた。ただし、金融アプリケーションとWebマーケティングアプリケーションの範囲を超えると、Hadoopの存在感は薄くなるように思える。また、概念実証の段階で行き詰まるように見えることも少なくない。企業の運用環境に導入されているHadoopは舞台のそでで出番を待っているような状態になっているようだ。
この状況は以前にもあった。Hadoopが一般的になるにつれて、その長所は当たり前のものとなり、短所が注目を集めるようになった。この現象はHadoopに限ったことではなく、他の主要テクノロジーでも見られるものだ。だが、実のところ、Hadoopにとって大きなネックになっているのはHadoopのファイルシステムやAPIではない。HadoopオリジナルのMapReduceコンポーネントだ。Hadoopフレームワークのバージョン2.0ではMapReduceの代替プログラミングモデルに門戸が開かれている。だが、この問題を引き起こしているのはMapReduceだ。
不安定なMapReduce
Googleで考案されたバッチ処理ベースのMapReduceはWeb検索に最適なプログラミングアプローチだ。だが同意を得られるのは、ここまでだろう。プログラミングは困難で、多くの分析アプリケーションには適していない。また、リアルタイムの処理を実現することは不可能など問題が山積みしている。ある意味、MapReduceはHadoopという巨大なフレームワークの不安要素だといえるだろう。
選択の余地がないとき、MapReduceの欠点はそれほど目立たなかった。Hadoopが2014年夏に低迷期を迎えた裏には、データ処理に関する興味深い新しい代替プログラミングモデルの存在がある。
2014年の6月と7月には「Spark Summit」および「Google I/O」というカンファレンスが開催された。これらのカンファレンスは、大げさに騒ぎ立てられているHadoopの宣伝について考え直す機会を与えた。
Spark Summitではデータ処理システム「Apache Spark」が注目を集めた。必然的な結果として、Hadoopがスポットライトを浴びることはなかった。
Apache Sparkは、米カリフォルニア大学バークレー校で開発されているソフトウェアだ。ここ数年間で浸透しているが、その勢いが増したのは最近だ。その非バッチ処理と高水準なプログラミングインタフェースがMapReduceの代替プログラミングモデルを探している人を魅了している。Apache SparkはHadoopで実行できる。だが「Apache Cassandra」や米Amazonの「Amazon S3」などのシステムでも直接実行可能だ。
Apache Sparkについては、あるうわさが飛び交っている。データ業界のアナリスト、カート・モナッシュ氏は次のように語る。「次世代の並列パラダイムの最有力候補はSparkで採用されているものだという見方が強まっている。Sparkにはデータストリーミングについて特別な将来性がある。これは動的なデータ(高速データ)の操作や機械学習の操作を特徴とする多くの次世代のビッグデータアプリケーションが取り組んでいる分野だ」
2014年6月末に開催されたGoogle I/Oカンファレンスでは、MapReduceの面目がつぶれる事態が発生した。広義ではHadoopの面目も含まれる。MapReduceの生みの親であるGoogleが、現在は自社でMapReduceを使用していないと発言したのだ。それと同時に、MapReduceの競合となる「Google Cloud Dataflow」アプリケーションフレームワークを紹介した。
Cloud Dataflowの製品管理のリーダーを務めるトム・カーショー氏によると、Cloud Dataflowはデータを迅速に移行し、同氏が望むMapReduceの処理能力を向上するという。
「MapReduceは過度に単純化されている。MapReduceのジョブはアセンブルが難しい単位で実行される。一方、Cloud Dataflowでは、論理的にまとめることが可能なコンポーネントを作成する」と同氏はいう。これはHadoop 2.0のリソースマネジャー「Yarn」に関するうわさと大差ないように思える。だが、開発者はGoogleが発信する情報には聞く耳を持つ。
どん底にあるHadoop
皮肉にも、GoogleがMapReduceベースのHadoopの競合Cloud Dataflowを展開するのと時期を同じくして、Googleは同フレームワークの利用者にHadoop/MapReduceプラットフォームのサポートを提供する。だが、Hadoop/MapReduceプラットフォームの最盛期は過ぎているように思える。
2014年9月上旬に開催された「TDWI BI Summit」では、コンサルティングと執筆活動を行っているデイビット・リンシカム氏が、GoogleによるMapReduceの回避について次のように言及している。「多くの人がHadoopについて考え直している。これが2014年の夏に見られた見解の総括になるだろう」
これが公平なのかといわれれば、公平ではないだろう。Hadoopでは、MapReduceへの依存から脱却する新しいアーキテクチャが採用されている。2013年に見られたHadoop 2.0に関する騒動の背後にあるのはMapReduceに多くの制限が存在する事実に対する承認だった。
Yarnが導入されたのも、このためだ。Hadoopには歴史がある。そのため「設置基盤」というレガシーの問題を抱えている。既存の全てのMapReduceアプリが一晩でリアルタイムの処理に対応したアプリに書き直されるのかは疑問に思うところだ。だが、恐らくそのようなことはないだろう。
Hadoopはリアルタイムの動作に対応するように拡張しながら、設置基盤を維持するという古典的な問題を抱えることになる。より多くのHadoop 2.0アプリケーションが作成および公開されるにつれて、Hadoopはどん底から這い上がり、一息付けるようになるだろう。だが、ある程度の時間が必要になるのは必至だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[NTTPCコミュニケーションズ株式会社] 「回線速度不足」だけが原因ではない? Web会議の遅延を解決する方法とは -
製品資料
[東京エレクトロン デバイス株式会社] 工場の可用性向上に重要な「7つの領域」と対策 OTセキュリティ強化の基礎知識 -
製品資料
[リコージャパン株式会社] 問い合わせ対応で本来の業務が進まない、総務や情シスの負担をどう減らす? -
製品資料
[リコージャパン株式会社] 自社データから高精度な回答を生成、簡単に生成AIチャットボットを構築する方法 -
技術文書・技術解説
[アトラシアン株式会社] IT運用や従業員サポートは生成AIでどう変わる? 使い方や導入の流れは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
全社標準Copilotに絶望? MS Copilotで問い合わせ6割減できた企業は何が違った
-
2
生成AIで開発工数を圧縮 「工数150分の1」を叩き出した実例
-
3
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
4
高額GPUが遊んでいるのはなぜ? AIインフラを襲う根深い「データ待ち」問題
-
5
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
-
6
無課金から要課金まで AIの基本や応用がマスターできる“学習コース”9選
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
1日200件の電話対応から解放 ベルクが電話代行ではなくIVRを選んだ3つの理由
-
9
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
10
OpenAIが叫ぶ法規制の裏で 情シスが今すぐ固めるべきAI防衛策
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
2
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
3
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
4
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
5
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
「スクラム」と「カンバン」の違いとは? アジャイル型開発手法を徹底比較
-
8
AI時代に成功するための「ナレッジマネジメント」ベストプラクティス
-
9
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー